トピックス

ミニコミ 2017.11.27

第116号(2017年秋号)

補償業務管理士CPD制度

建設系CPDとは建設業に関係する技術者に対し、技術の維持・向上を図ることを目的に継続的な教育の実施(CPD制度)を建設関係の資格登録認定団体が実施しているものです。

このCPDに関して、補償業務管理士でも平成28年度から制度がスタートしました。

登録更新してから次の登録更新までの5年間に80ポイントを確保する必要があります。この80ポイントが確保できなければ補償業務管理士として登録更新が出来ないという技術者にとってはかなり厳しいシステムとなっています。

その為、資格者は計画的な講習会や社内研修の参加等によってCPDポイントを取得しなければなりません。その上、補償業務管理士の多くは、測量士や建築士の資格も併せて有しており、これ等の資格維持のためにも他部門の研修に参加する必要もあり、技術者にとって複数の資格維持のためには大きな負担となっています。

弊社にあっても平成28年度には4人の、平成29年度には3人の補償業務管理士が登録更新時期を迎えました。

彼等もまた、次の5年後の更新時期には80ポイントを確保しておく必要があります。(年当りの平準的かつ計画的な確保が必要)

これは、技術者本人とともに企業としても多くの複数技術者を各種研修に計画的に参加させなければなりません。

これまでも研修参加や社内勉強会は実施していますが、ポイント確保のためのCPD事務局へのポイント登録の申請等には総務職員にも結構大きな負担となります。

スタートして2年目、始まったばかりの制度です。受注者とともに発注者側にも未だ浸透していない面もありますが、制度がスタートした以上、技術者にとっては有用な制度とするための各自、各社の自覚と努力が重要と考えています。

起業者、業務発注者のお立場としても、この制度に対して、ご意見をお聞かせ頂ければ幸いに存じます。

補償業務の半年を振り返って

今年の3月に建築学科を卒業し、補償業務に携わることになりました。補償業務を志してみたいと思ったきっかけは、建築物のことだけを考えるのでなく、街全体が発展するにあたってどのような業務が行われているのかということに興味を持ったからです。半年間というまだ短い期間ですが打合せ、現場調査、調書作成、納品と一連の仕事を経験させていただき、補償業務の責任の重さ、重要性を学ぶことができました。

現場を通して地権者の方のお話を聞くと、公共事業に対して大きな不安があると感じる場面がありました。公共事業を行う為に用地買収を行うのですが、地権者の方々から「土地が取られる」、「新たな場所に引っ越さなければならない」といった気持ちが伝わってきました。適正な補償金を算定する為には確かな知識と経験が必要であり、効率的に調査を行わなければならないと強く感じました。地権者の方々が感じる不安を取り除くためには、きめ細かな調査も我々の業務に含まれると感じました。自分が住む街で業務に携わると、なぜこのような事業が行われるのか、正当性はあるのかと一市民として考えることがあります。自分が住む街だからではなく、全ての業務にもこのような気持ちを持って地権者の方と接し、事業全体のことを考える必要があります。

補償業務は、人々が住みやすい街をつくっていく事業と、より良い街をつくるという人々の気持ちによって支えられていると考えます。技術者と呼ばれますが、補償業務は多くの人々と関わる仕事です。ただ与えられた業務を正確に効率的に行うだけでなく、そこで暮らす人々のこと、事業が行われている最中、事業が完了した後のことをその立場に立って業務にあたることが必要であると感じています。

先輩からは今後、新たなインフラ整備が減少し物件業務等も減っていくという話を聞きますが、人々が暮らしていく上で補償業務は無くならないものであると考えています。しかし、新たな枠組みで補償業務に及ぼす影響は必ずあります。日々変化していく世の中の動きを感じ取り、初心を忘れず真摯な気持ちで補償業務に携わりたいと半年の節目で強く感じています。

所有者等の確認(その3)

前回(第110号)にて借家人(借間人)等の所有者確認を述べました。今回は、借家人(借間人)が取り付けた設備・工作物・造作など《以下 借家人工作物等》について一般的な確認方法を記述したいと思います。

調査に行く前には、土地の所有者および建物所有者《以下 建物所有者等》の了解を得て、借家人(借間人)《以下 借家人等》の立入りのお願いを行います。建物所有者等より事前に借家人等に了解を得られれば良いのですが、移転時期など建物所有者等が説明できないこともありますので起業者の協力が不可欠です。

調査の内容として、借家人等が入居後に土地、建物に設置した借家人工作物等の確認を行っていきます。確認作業は、借家人等および建物所有者等の双方にする必要があります。

調査の例として、エアコン・湯沸器・アンテナなどの設備、目隠しなどの工作物、棚などの造作などが考えられます。

注意点としては、取り外して移転出来る借家人工作物等だけではありません。「建物の一部を改造した。土間コンクリートを打った。庭木を植えた。」など土地および建物に属することが普通に行われています。

借地借家法33条では、「建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した造作がある場合、賃借人は建物の賃貸人に対して、その造作を買い取るべきことを請求することができる。」とあります。俗に言う買取請求権が借家人等にあります。

借家人等が契約満了の時には、入居時点の復旧義務または建物所有者等への買取請求権がありますが、公共事業の移転の場合には、契約の途中であることが普通であり、補償対象とすることが一般的です。

補償では、個別払いの原則によって、所有者ごとに補償金を支払う必要があります。しかし、借家人等が、建物所有者等の了解を得て設置した借家人工作物等のうち、建物に附属する造作等は、建物等所有者の所有となります。建物に附帯する畳・襖などは建物の一部として取り扱われ、畳の表替え、襖の張替えを行っても所有は変わりません。

補償金は、建物等所有者に支払い、借家人等が買取請求権を建物所有者等に行うものです。

現実的には、後々の紛争を避けるため、建物所有者等の了解を得て、借家人等の所有物とする場合がありますので、起業者と十分協議を行うことが必要です。

現地の調査では、建物等所有者、借家人等の双方の確認が十分出来ない事も多く、聞き取り確認は、後日となることがあります。所有の確認は、双方の確認が取れるまで続きます。

長年、補償調査業務に携わっていますが、補償物件の正確な把握は最も基本的なことです。今後も正確な物件の所有者等(借家人等)の確認には最大限の配慮を尽くしてまいります。

★かまいしだより№17

福島県等における業務

当社は、岩手県釜石市の東北支店を中心に、宮城県仙台市に仙台支店、福島県福島市に福島支店及び南相馬市に南相馬営業所を開設しています。

私が福島県の業務に携わるようになったのが、平成27年6月からで、平成27年9月から浜通りの相馬市に住み、現在は福島市に住んでいます。

平成25年10月から岩手県釜石市での勤務が始まりましたので、東北勤務は現在で丸4年が経過しました。宮城県や岩手県の沿岸部の復旧・復興はそれなりに進んではきましたが、福島県においては津波被害に加え福島第一原発の影響により、なかなか復旧・復興が目に見えるような形で進んでいないのが現状です。現在、当社では福島県に5名のスタッフが常駐し、CM業務の用地担当技術者として県内3事務所の復旧・復興事業に携わっています。また、今年度からは宮城県沿岸部の事務所においてもCM業務の用地担当技術者として復旧・復興事業に携わっています。また、日本補償コンサルタント復興支援協会の福島事務所に1名が常駐し環境省が進める中間貯蔵施設の用地買収にも携わっています。

当社は、中部地区を中心に業務を進めてきましたが、東日本大震災を契機に東北地方にも進出しています。宮城県及び岩手県からの受注はあるものの福島県からの受注はまだありません。現在のCM業務で知り合った福島県内の補償コンサル業者や県職員の方々と一緒に仕事ができるように、今後は委託業務の受注をしていければと考えています。

今月で東日本大震災からすでに6年半が経過し福島県浜通りの市町村においては順次避難指示が解除され、今まで通行許可証がなければ通行できなかった道路も許可証なしで通行できるようになりました。JR東日本の常磐線も、現時点での不通区間は富岡~浪江間(延長約20㎞でこの区間も2019年度末開通予定)のみとなりました。また除染作業も福島第一原発に近い双葉町や大熊町以外は、山林を除き概ね終わってはきました。しかし、私が週1回で通行する飯舘村では今年の3月31日に一部地域を除き避難指示解除準備区域及び居住制限区域が解除されました。しかし、店舗はコンビニが2件あるだけで、震災前には5店舗あった郵便局も1店舗しか開業されていませんので未だに歩いている住民になかなかすれ違うことはありません。

沿岸部では、まだまだ津波の爪痕が色濃く残っています。海岸堤防や河川堤防及び道路の復旧はこれからではありますが2020年の東京オリンピックに向けて双葉町に建設予定の復興記念公園を聖火ランナーが駆け抜ける映像を全世界に届けるべく、官民一体となって整備を進めているところです。

遠く離れた中部地方では東日本大震災の記憶は薄れてきてはいるとは思いますが、復興のためにもぜひ東北地方へ旅行に行っていただければと思います。

測量技術の進歩

10月13~15日、東北支店のある釜石市では、三陸海岸の秋を彩る釜石まつりが今年も盛大に催され、東北支店の社員も神輿の担ぎ手として参加させていただきました。私は赴任の年から4度目の参加となります。

神輿は12人1組で交代しながら担ぐのですが、初参加の年は、担ぎ手が少なかったこともあり、何度も順番が回ってきて大変だったことを思い出します。東日本大震災から6年経過し復興の進捗とともに担ぎ手が年々増加しましたので、今年は担ぐ回数がかなり少なくなりました。

また、沿道に詰めかけた大勢の観客、再建されつつある地元商店街を目の当たりして震災から着実に復興する釜石市民の底力を感じました。そんな釜石復興の一助となれるよう微力ながら誠心誠意、業務に取り組んでいるところであります。

私は東北支店で測量業務を担当していますが、ここ数年の測量技術の進歩には目を見張るものがあります。

特に3次元レーザースキャナーによる計測システムは非常に優れた計測方法で、直接対象物に触れることなくレーザーと内蔵カメラにより地物等の正確な3次元点群データと写真データを取得する新技術です。この3次元レーザースキャナーをGPSと併せて航空機、UAV(ドローン)、計測車両に搭載することで災害現場や高速道路、重要文化財等これまでの測量技術では困難であった計測領域を正確且つ安全に効率良く計測することが可能となります。

この技術で取得した3次元点群データは、災害復旧、道路、橋梁、トンネル等のインフラ管理、工事管理(i-Construction:アイ・コンストラクション)、3次元地形図、文化財保全等に活用されます。国土交通省が推進するi-Constructionは、3次元モデルを活用することで、測量、設計、施工、検査といった建設生産システム全体の効率化を図り生産性を向上する取組であることが示されています。

さらには自動運転に必要となる高精度3次元地図基盤へ活用される等、3次元点群データに世間の注目が集まり、活躍の場は大きな広がりを見せています。

測量の新技術は、この他にもBLEビーコンによる屋内測位システムなど多くのものが開発されています。測量技術者としては顧客のニーズに応じて最適な計測方法を提案できる「コンサル力」を身に着けることが重要であり、技術の進歩に対応できるよう日々、継続した研鑽に努めたいと考えています。

復興と業務の繋がり

私が釜石市の東北支店に来てから2ヶ月が経ちました。

私は補償調査部に所属しており、仕事内容は用地買収補助、工損調査、物件調査等と多岐にわたります。一つにまとめるとすれば、復興支援に係る仕事です。

何かの縁でしょうか、私は釜石に来る前から福島県における中間貯蔵施設を作る用地確保のため行われた総合支援業務に関わっておりました。考えてみれば、新日に入ってから復興業務にずっと関わっている事になります。

しかし、福島県の現地には調査に入っておらず現場調査後の算定業務に携わっていたので復興支援に関わっているという感覚があまり有りませんでした。私が釜石に来た時も、造成工事が進んでいることもあり、何とかしなくてはという気持ちは薄く、「復興」へと繋がらなかったのです。

どんな業務もそうですが、現場が有るものは実際に見て知り、その業務完了後に得られる貢献度を信じて進めることが、モチベーションに繋がります。私は転職者で、以前は一般住宅の施工管理と営業を併せて行っていました。前職では建築主やご家族の為、喜んでいただける家づくりを目指し邁進しておりました。それが無ければ、淡々と業務をこなすことしか出来ないと思います。

補償の業務自体は多岐にわたりますがイメージは掴みやすかったと感じています。物件調査や工損調査及び説明は、施工管理やアフターメンテナンスと住宅営業。用地買収は、区画整理地に住宅を建てるためには…。算定業務は、住宅の見積り作成。

どれも実際に行ってきた業務に繋げることでイメージがとても掴み易く感じました。もちろん、ただのイメージだけで仕事が出来る訳は無く、勉強の毎日では有りますが…。しかし業務だけを見るとそういうものです。造成の図面を見れば、どの様な計画で進み、完成形はどうなるのかイメージとして掴めるからこそ工事を進めていけるのです。だからこそ「復興」と「業務」が繋がりませんでした。

もちろん、現在携わっている業務が完成すれば復興業務は完遂されるのでしょう。しかし、それは業務だけの話でモチベーションには繋がりません。例えば、名古屋で中央新幹線(リニア)に関わる事が出来れば、誇らしいでしょう。目に見えて社会に貢献する大きな業務です。その貢献がイメージしやすいもので有るため繋がりやすいのです。

ありえない話ですが、だれも使わない見向きもしない、貢献もないものを作ったとすれば自己満足すら得られるか疑問なのです。だからこそ用地買収にて伺った地権者や工損調査の説明等で震災に遭われた方々のお話を聞き、ようやく「業務」と「復興」が繋がってきました。

辛いことから始まった事柄ですので、良い話はほとんど無かったと思います。それでも、釜石に住むことが出来るようになる事が「復興」の第一歩です。

それを感じる事がモチベーションになって来た頃でした。10月13~15日に行われた復興祈願「釜石まつり」に中央ブロック共同提案体として参加し神輿を担ぐ機会をいただきました。

その時に、現地の方々から町への熱い気持ちが「復興」を望む強い気持ちに繋がって感じられました。祭りを行える喜びとそれを称える喜び。それを感じていなければ、あんなに真剣に祭りを行い、神輿に手を合わせる様な人々は現れないと思います。その町で生活する事が出来るという事が素晴らしい事なのだと素直に感じられました。とても良い刺激になり、頑張ろうと思えた瞬間でした。

どこまで行ったら「復興」が完成なのか分かりませんが、現地の声が聞こえて良かったと思います。その気持ちを知ればどこにいても「復興」に関わるモチベーションが持てます。

編集後記

立冬も過ぎ、朝夕寒くなり始めてきました。インフルエンザの蔓延する時期が例年より早いにも関わらず、今年のワクチンの生産量は少ないようです。これから繁忙期を迎えますので、ワクチンが無くなる前の早めの接種による対処を含め、体調管理には十分お気を付けください。

当社は、ISO9001の認証を取得して早や16年経ち、今年2015年版への移行審査も無事終わりました。これを機に気持ちを引き締め、ますます精進していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い致します。

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