技術レポート

補償調査

公共用地取得とアスベスト調査

アスベストとは

アスベスト(石綿)とは、天然の蛇紋岩や角閃石から取り出した直径0.02μから0.2μほどの極細繊維状の鉱物で、吸音性・断熱性・耐腐食性・耐薬品性に富み、しかも経済的に安価である事から、多くは建築建材の原材料に使用されている。その他ボイラーや暖房パイプの被覆、自動車のブレーキやクラッチ板、石油ストーブの芯などにも使用されている。製品 使用部位 性能

アスベストによる被害

アスベストは極細繊維状であるため、人が吸い込み、肺に突き刺さる事で人体に重大な影響(じん肺、中皮種、肺がん等)を与える事が解り、主に欧米で大きな社会問題となり、日本では1987年に学校や公営住宅など、各地で吹き付けアスベストが問題になった。

例えば中皮種は、初めてアスベストに曝露してから発病するまでの潜伏期間が40年から50年といわれ、日本でのアスベスト使用量のピークが1976年だった事から、潜伏期間を経た2016年辺りから被害の拡大する可能性がある。関係諸官庁も、アスベストの取扱いについて細かく規定した法律を施行し、それを取り扱う者はその危険性を熟知し、関係法律を良く理解し、その規定にしたがって行わなければならないとしている。

関連法令

大気汚染防止法
(目的)
建築物の解体等に伴う粉じん排出等を規制し、有害大気汚染物質対策の実施を推進する事により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全する事。

特定工事の注文者は、当該特定工事を施工するものに対し、施工方法、工期等について、作業基準の遵守を妨げる恐れのある条件を付さないように配慮しなければならない。

労働安全衛生法
(目的)
労働基準法(昭和22年法律第49号)と相まって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化および自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進する事により職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する事。

特定化学物質等障害予防規則
(目的)
石綿製品の切断作業や、建築物の解体等における石綿の除去作業等、労働者が高密度の石綿にさらされる恐れのある作業について、労働者の曝露防止をはかる事。
石綿が吹き付けられている建築物の解体・改修等の作業を行う場合はその場所を隔離しなければならない。
石綿が吹き付けられている建築物の解体・改修等の作業を行う場合はあらかじめ、石綿の除去作業に関する計画を所轄の労働基準局に届け出なければならない。

公害防止条例他
各地方自治体で特別に独自に定める条例。

アスベスト除去方法

事前調査

  • アスベスト使用の有無使用されている建築物、建材の種類
  • アスベスト使用箇所、使用量の確認
  • アスベストの状態の確認
  • 届出要件の確認

以上を調査した上で、法に定められた解体、改修作業の場合には工事施工者が、工事開始の14日前までに保健所等の諸官庁に指定の様式により計画の届出を行う。

 

施工計画の作成
事前調査の状態に基づき処理工法を選定し施工計画書を作成する。
施工計画書は工事開始の14日前迄にアスベスト処理に関する計画の届出をしなければならない。
処理工法の選定1次または2次診断の結果、飛散防止の処理を行う場合、その飛散防止処理工法を選定する。

■除去工法(リムーバル工法)
既存の吹付けアスベスト層を下地から取り除く工法
■封じ込め工法(エンカプスレーション法)
既存の吹付けアスベスト層はそのままに残し、アスベスト層へ薬剤の含浸もしくは造膜材の散布等を施す事により、アスベスト吹付け層の表層部分又は全層を完全に被覆または固着・固定化して、粉塵が使用空間内へ飛散しないようにする工法。
■囲い込み工法(カバーリング工法)
既存の吹付けアスベスト層はそのままに残し、アスベスト吹付け層が使用空間に露出しないよう、板状材料等で完全に覆う事によって粉塵の飛散防止、損傷防止等を図る工法。各工法の長所と短所

作業基準

施工区画の隔離
・前室(セキュリティーゾーン設置)

集塵、排気装置の設置
・作業場を負圧に保つ高性能エアフィルター

アスベストの湿潤化
・作業前、薬液にて飛散防止

アスベストの処理
・作業後、薬液にて飛散防止

施工区画内の清掃
・廃棄物は湿潤後二重袋詰

隔離シートの撤去
・湿潤化し特管廃棄物処分

廃棄物処分
・特別管理作業廃棄物管理

作業環境測定
・労安衛法、特化則等

大気汚染防止法、労働安全衛生法、特定化学物質等障害予防規則、厚生省指針、廃棄物の処理および清掃に関する法律等に準じて作成する。

処理工事の実地

調査・確認

維持保全計画の策定

移転補償費の算定方法

木造建物・非木造建物を問わず、算定標準書の解体費には以上のような特殊な工事費用、処分費用、行政への手続費用等が含まれているとは判断し難く、アスベストを含む建物等の解体費は移転に際し通常必要な費用と考えられ、別途加算した方が妥当である。

アスベスト解体費 = 事前調査費用+実地工事費用+廃棄費用+行政書類作成および届出費用+諸経費+消費税

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