建物アセットマネジメント(建物維持保全業務)
背景
現在の我が国でのマンション戸数は450万戸で、国民の約1割(約1,100万人)が生活する都市の居住形態として広く普及してきました。一方で、老朽化や陳腐化したマンションも増えており、今後その数はさらに急速に増える事が懸念されます。
こうしたマンションの居住環境、資産価値を良好な状態で維持又は改善していくには、大規模改修や修繕、建替えなど再生に取組む事が必要となってきます。
維持保全の仕組み
マンションを適正に維持し、快適な住居と有効な資産価値を維持する事は、マンション管理の大きな目的のひとつです。マンションを可能な限り長く維持していくためには、定期的な保守点検や計画的な修繕を実施する事が重要になります。
保守点検
保守点検とは、建物の機能を維持するために、建物各部の不具合や設備機器等に異常がないかどうかを定期的に検査し、消耗品の交換や作動調整などを行う事です。定期的な保守点検には、法律上義務付けられている法定点検と、自主的に行う任意点検があります。
法定点検
特殊建築物の定期調査(一般事項、敷地関係、構造関係、防火関係、非難関係、衛生関係他)
建築基準法…6ヵ月~3年の間に1回(都道府県等が指定)
特殊建築物の建築設備の定期調査
建築基準法…6ヵ月~1年の間に1回(都道府県等が指定)
昇降機の定期検査
建築基準法…6ヵ月~1年の間に1回(都道府県等が指定)
消防用設備などの点検・報告
消防法…外観機能検査:6ヵ月に1回 総合点検:年1回
水道施設の検査
水道法…1年以内に1回
水槽の清掃
水道法…1年以内に1回
電気工作物の定期自主点検
電気事業法…月次点検・年次点検・臨時点検
ガス消費機器の調査
ガス事業法…毎年1回以上
任意点検
管理組合・管理会社による共用部分の点検
毎年1回程度又は計画修繕工事の実施前
実態調査(専用部分と共用部分の状況等)
毎年1回程度又は計画修繕工事の実施前
計画的な修繕
建物各部の劣化や性能・機能の低下が進んだ場合には、修繕を行う必要があります。修繕とは、部材や設備の劣化部の修理や取替えを行い、劣化した建物又はその部分の性能・機能を実用上支障のない状態まで回復させる行為を言います。一般的には、建物の建設当初の水準まで回復させる事が目的です。
計画修繕を確実に実施するためには、長期修繕計画を定める必要があります。長期修繕計画とは、マンション毎に構成する部材や設備の耐久性に合わせて設定される長期の修繕計画であり、通常20年から30年程度の長期展望にたち、マンション共用部分等の各部分の修繕周期と概算費用を提示します。修繕計画を定める事で、所有者は「いつ、どのような修繕を行う必要があるか。」「どの程度の費用を要するか。」を事前に知る事が出来ます。
実際の工事を行う上では、建物各部の痛み具合に対応した有効な修繕を実施するために調査や診断を行い、それに基づいた修繕設計により工事部位や工事内容を確定します。計画修繕では、効率的な工事実施のため、複数の工事をまとめて実施する事が多く、修繕積立金を充当して行う計画的な修繕等を大規模修繕と呼び、通常は10年以上の周期で実施されます。
計画修繕・長期修繕計画・修繕積立金からなる維持管理運営は、最初に作っておいても自動的に働くものではありません。長い期間に渡りマンションを適正に管理していくためには、点検・検査・診断により、建物の経年による劣化状況等の不具合や問題的を明らかにしながら、修繕実績に基き長期修繕計画を適宜見直していく必要があります。また、長期修繕計画の見直しに合わせて、修繕積立金の徴収額も見直していく必要があります。
維持管理運営フロー
改修の重要性
マンションに求められる性能・機能は、住まい方の変化や設備機器の進歩等により年々高まっており、近頃の新築マンションの性能や居住性は著しく向上しています。これに伴い、高経年マンションでは、性能・機能面での陳腐化が進行し、資産価値が低下する事にもなりかねません。こうした事から、高経年マンションの質および価値を長持ちさせていくためには、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようにマンションの性能をグレードアップし、住み良いマンションにしていく事が重要になります。
【改良工事】
性能・機能をグレードアップさせる工事
【改修工事】
修繕および改良により建物全体の性能を改善させる工事
改修工事を適切に実施する事は、マンションの物理的な老朽化の防止に加え、陳腐化を防止する事にもなります。このため、建築後一定の年数を経過したマンションの場合は、単なる修繕工事ではなく、修繕と改良を含めた改修工事を実施する方がマンションを住み良いものにし、その質および価値を長持ちさせていく上での需要なポイントになります。特に、マンションで一般化している大規模改修工事は、修繕と呼ばれていますが、改良の割合を大きくした改修工事として実施する必要があります。
計画修繕と改修の重要性フロー
業務フロー
【調査診断】
竣工図書、修繕記録等によるチェック
現地観察、調査、詳細診断等の実施
経年劣化、施工の不備の判定
緊急対処の必要性の判定
【報告会の実施】
居住者の抱えている問題点
改善ニーズの把握
【改修基本計画】
改修工事の目的、必要性の確認
工事の優先順位の決定
【改修設計】
設計図書の作成
工期、工程、仮設計画の確認
【施工会社の選定】
工事費見積を依頼する会社の選定
【資金計画】
事業収支計画書作成
融資制度の確認
【合意形成集会による決議】
修繕積立金の増減の有無
一度金の徴収の有無
【工事実施】
工事監理業務