【事業損失】桟橋
概要
港湾事業の実施にあたり、当該企業の桟橋の使用が困難となった。この桟橋が、港湾事業に直接支障をきたすわけではないが、企業にとって港湾事業期間中に使用不能となる事は、陸上と海上を結ぶ輸送路施設として多大な影響を受ける事となったものである。
そのため補償方法については、事業計画時点から事業損失と位置付けし、
- 営業休止の検討
- 代替輸送の検討
- 代替桟橋の検討
等について物理的、経済的、法制的観点から総合的判断がなされたものであるが、許認可の関係から代替桟橋を建設する事は困難であった。また代替桟橋を建設するためには、港湾法上、港湾計画変更申請を直ちに実施したとしても、関係機関との協議等が長期化する事は明らかであった。
したがって、港湾計画変更申請の手順を経て代替桟橋を建設する事にしても、港湾事業に著しい影響を及ぼす事になるため、事業スケジュールの厳守および工事期間中の機能確保という観点から、臨時応急対策として事業者が仮設桟橋を建設する事によって対策を講じたものである。
その結果、事業が完成した後には応急措置としての費用負担の経緯の下、
- 事業損失補償の決着
- 仮桟橋施設の権利帰属の整理
- 施設の権利帰属に伴う施設の評価
等が必要であり、上記事項の確定を本業務の目的としたものである。
臨時応急対策としての桟橋
臨時応急対策としての桟橋は、元来桟橋の使用出来ない期間だけ使用出来ればよいので、元来桟橋ほどの耐用年数は必要ないので、杭被覆、電気防食等の防錆処理を行わない場合が多い。(仮想桟橋)
しかし今回の場合は、作業効率や利用状況を理由に、企業の要望によって自己の資金を投入し、杭被覆、電気防食等の処理を行い、大規模な施設となった。(港湾法等の関連から事業者による仮設桟橋が認められたため)
事業完成後の元来桟橋と仮設桟橋の状態
港湾事業の完成とともに、桟橋の一部が撤去されたため従前の機能を果たさなくなった企業所有の元来桟橋と、港湾工事期間中に使用してきた仮設桟橋について権利の帰属と費用の整理、精算が必要となった。
企業所有の元来桟橋
大型船と小型船の2隻の接岸機能は、港湾の保安上一部が撤去されたため従前の機能回復は困難となった。ただし小型船専用の接岸としての利用価値は残っている。
仮設桟橋
仮設桟橋という位置付けから、工事期間中の使用に耐えられればよかった。防錆処理等の処理については、事業者で負担はしていないものの、企業の負担で実施している。
企業サイドからすれば、元来桟橋は機能が低下しており、従前の機能回復とはならない。また仮設桟橋については、自らが一部費用負担はしているものの事業者所有の仮設施設である。仮設といっても、元来桟橋と仮設桟橋の両施設が所有出来れば経済的メリットは大きい。
一方事業者サイドからすれば、企業所有の元来桟橋の機能回復させるための費用や仮設桟橋の撤去費用が必要となる。そのため仮設桟橋を現況のまま企業に所有権を移転させれば、事業者にも企業にもメリットがある事になる。
そこで、企業側の観点から企業が両施設を所有する事によって受ける経済メリットを分析評価し、さらには事業者が本来ならば支出すべき費用も考慮して、仮設桟橋を事業者から企業へ所有権を移転する事としたものである。