【収用損失】食品会社
乳製品製造工場の移転に当たっての課題
移転対象の乳製品製造企業は、牛乳を生産する酪農家から原乳(生乳)を仕入れ、この仕入れ乳を標準化、均質化および殺菌処理等の工程を経て乳製品の製造を行い、県内をはじめとする消費地へ出荷してきた。
工場の移転とともに乳製品の加工設備等を移転するとなれば、対象の企業が永年つくり上げてきた消費者に受け入れられる安定した均質の味は不安定になり、これまでと同じ味覚を再現することは難しいものとなる。
作り置きの出来ない商品乳製品に対して、バラツキのない安定した製品を工場移転後も継続するためには以下の課題を解決していく必要がある。
商品ロス発生とロス継続期間
乳製品製造設備の機器の新設あるいは移設にあたって、機器の試運転調整の空運転または水通し調整ではロスは発生しないものの実液(原乳)での調整試運転では商品として出荷はできずロスが発生する。
商品テストに伴う影響
商品の安全および味覚については、市場が認める味、品質と対象乳業企業が納得できる味、品質に完成するまでの商品テストが必要である。商品テストの期間が長くなれば、そのための休業および経費の負担さらには客離れの問題も発生するとともに様々な問題が発生する。
- 商品テストを実施するための労働力の確保
- 商品テストを実施する時間帯
- 原乳仕入れ酪農家との協力関係等
収益減の発生
原乳を商品テストに向けることによる商品ロスおよび休業期間の発生。
商品テストのための試運転調整を認定している補償先例
製パン工場(0.5ヵ月の調整試運転期間を認定した事例)
年度:1976年
執筆:全国用対事例研究会国道拡幅工事
規模:敷地2,110m²。建物鉄筋コンクリート造4階建2,680m²。機械216種。
調整試運転の理由:均一の製品ができなくバラツキが発生するため、一定期間試運転を行い商品の仕上がりを判断してから本操業を行う。
ソース工場(期間の明記はないが補償を認定している(商品ロスを含む))
年度:1988年
執筆:日本道路公団大阪建設局
規模:ソース業界に占めるシェア1.5~1.8%。建物鉄骨造3階建工場。
調整試運転の理由:均一の製品が出来なくバラツキの出る状態での操業は不可能。試運転調整期間の補償とテスト商品の廃棄。
製麺工場(30日の補償(完熟期間))
年度:1999年
執筆:岩手県
規模:敷地596m²。建物鉄骨造2階建641.69m²。
商品テストに伴う調整試運転補償
対象企業の移転に伴う商品テストおよび味覚再現のための調整試運転に関する基本的な考え方として、
- 原乳生産者の酪農家からは工場の移転期間中も移転完成後も従前と同等な原乳仕入れの確保が必要
- 乳製品の味は乳業企業独自の味を完成しており、その味は市場に認知されている
を前提に調整試運転・味覚調整について考慮検討する必要がある。
特に味覚調整に関しては市場が認める味と乳業企業が納得する味にも違いがある。
そのため、これら調整のための期間認定については機械的に明確に判断できるものではなく対象企業の意見、設備備メーカーの意見、並びに移転先例(補償先例を含む)等から適正な判断が必要である。