【事業損失】養鰻場の被害額算定
概要
建設工事に伴い発生する騒音や振動等により、養鰻経営者が育成する鰻に与える影響を調査し、その因果関係を分析するとともに、被害額を算定したものである。
当該工事のうち、対象の養鰻場に影響を及ぼす恐れのある作業としては、
- 締切鋼矢板打設作業(ジェット併用バイブロ打設)
- 進入路建設のための土工作業(砂石の盛土およびブル等重機の敷均し)
- ダンプおよび重機等の走行作業
があげられる。
被害の予測
予測される事業損失は、工事の工期等から考慮すると、
- 工事期間中、著しい騒音や振動によって発生する鰻への影響
- 養成中の鰻の育成不良の影響
- 通常の飼育サイクルである次期(2~4月)頃までに入荷するシラスへの影響
等が考えられる。
鰻の感覚の中で最も発達しているのは嗅覚である。この嗅覚は極めて敏感であるが、視覚は遠方を見るのには適さず、いわゆる近眼であるとされている。音を感ずる器官は、体側にある側線器官である。この器官も極めて敏感で、ゴム靴のカカトの音にも反応するといわれている。
したがって鰻が餌を摂る時は、まず嗅覚によって餌の方向を感知し、接近した後視覚で認知する。
鰻は、硬いもの同士の当たる衝撃音が特に嫌いで、給餌中であっても衝撃音の発生によって散逸してしまう事が観察されている。
育成期間中の鰻に対する影響
育成期間中の鰻に対して騒音等のストレスを与える事は、神経質でデリケートな生態特性を有する鰻にとって餌喰いの低下が原因で増肉が得られなくなる。呼吸数および酸素消費量の増大が原因で種々の病気の発生。そして大量のへい死を招く危険性を有する。
工事着工以降、餌喰の低下、へい死の発生がみられるが、工事による振動・騒音は今後激化していく事となるので、営業の継続は困難だと考えられる。
シラスに対する影響
通常の営業形態通りシラスを導入した場合、当該事業により発生する振動や騒音をシラスの時期およびビリから養中に成長する間、継続的に受ける事となる。
シラスの時期は、鰻の体質や性質を形勢する大切な時点であり、この時期にひ弱で軟弱な体質である事は、養鰻経営にとって多大な損失となる事は明らかである。
養鰻経営にとってシラスの導入および管理をする時期は、水や餌はもとよりその環境づくりに最も神経を使う期間である。育成期間中の鰻であっても、餌喰の低下、へい死の発生がみられる事から、通常通りシラスを導入していれば、振動や騒音のストレスはさらに受けやすく、シラスを飼育する事は困難だと考えられる。
育成期間中の鰻に対する補償
- 被害鰻の処分経費
- 売却損の補償(育成期間中の鰻の売却)
- 次年度の休業補償