トピックス

ミニコミ 2020.08.21

第127号(2020年夏号)『コロナ禍のなか上を向いて』ほか

コロナ禍のなか上を向いて

第2波コロナウィルス感染が叫ばれ同時に熱中症に対する注意喚起が叫ばれる状況で、何処へ行ってもマスク着用が当たり前となり、最近では暑い中でのマスク姿に違和感もなくなりました。

最近の飛沫飛散防止のマスクは、一昔前に多くの人が着用していたガーゼマスクより大きく、顔の半分以上を覆い隠すのが一般的です。

そのため、一度や二度、または久しぶりに会う人に対しては特徴のある人でない限りなかなか記憶に残りません。特に女性は化粧に加え、よく似た髪型、体形の人では旧知の知り合いですら判断できず混乱することもしばしばです。

顔を覆い隠すマスクは、顔の外面のみならず心の内面までをも隠すことにもなるのか、人間関係まで希薄になり、最近では他人に対する優しさや思いやり、更には信頼関係までもが崩壊しつつあるように思います。

マスクで顔を隠し極力対話を避ける風潮は、対人関係を拒絶するものでもあり、これから先の夢や希望の喪失にも繋がるように感じます。

新型コロナウィルス感染問題以前には、互いの体温を感じながらの談笑、あるいは会食や一献酌み交わすこと等で良好な人間関係を構築し、将来の夢や希望を共有してきたことが今では別の世界のように思えます。

それでも、こんな不安な世の中がいつまでも続くはずはありません。治療薬とワクチンが完成し邪魔なマスクなしで顔を突き合わせ、談笑しながら食事ができる日がそんなに先ではなく必ずや復活すると信じています。

我々コンサルタント業にあっても企業倒産等、社会経済の混乱、税収減とそれらに伴う受注減等、業績復活までにはリーマンショック時以上の時間と苦難が必要かもしれません。

コロナ禍のなか、このこれまでに経験したことのない厳しい時こそ前を向き「優しさ、思いやりのある信頼関係」の構築、「将来に対する夢と希望」を抱き業務に従事継続していく覚悟が必要です。

もちろん、新型コロナウィルス感染予防対策ガイドラインに沿った感染予防体制をこれまでと同様に維持していくことに変わりはありません。

我々業界関係者のみならず起業者の皆様方にとっても、今はこれまで経験したことのない不安な時代だと思います。こんな時こそ夢と希望をもって上を向いて進まなければなりません。

起業者を始め皆様方のご指導を改めてよろしくお願い致します。

移転工法検討の「機能的検討」について

補償業務に携わり早三年がたちました。サラリーマン生活にもやっと慣れてきた今日この頃です。毎日乗る電車の風景から、調査算定を行った物件がなくなっている様子や新しい道路が出来上がった姿を見ることができ、三年間という月日の流れを感じます。

私が住む街では、鉄道の高架事業をはじめ駅前の再開発、区画整理事業が行われています。駅前でラーメンを食べていると店主とお客さんが「駅前はどんな風に変わるんだろうか」と興味津々な様子です。補償業務を通じ、自分が住む街の開発に携わることはとてもうれしく思う反面、「あの建物は僕が調査・算定をしたんだ」と大きな声で自慢できないのは補償業務の少し寂しいところです。

さて、この三年間は主に建物の調査・算定を行ってきました。補償基準に則り、有形的・機能的・法制的・経済的といった観点から建物の移転工法を検討し、算定を行うのですが、この四つの検討項目の内、「機能的検討」という項目の難しさに改めて直面しています。

一般住宅の場合、建物を構内に再配置することができるときは、構外再築工法、構内再築工法、曳家工法の経済性の比較となり、多くの場合、構内移転工法が採用されます。用地取得により確実に敷地面積は減少しているため、庭を小さくし、玄関からのアプローチを短くしているにも関わらず、従前同様の利用環境が確保できていると判断し、構内移転工法を採用してきました。しかしながら、どの程度の減少であれば、従前同様の利用状況が再現できているかという指標はなく、各コンサルの判断となっているのが現状です。補償金額の大半を占める建物が移転工法検討の主軸となっていますが、人が住むという住宅においては、庭や日当たりという要素も十分に検討する必要があると感じています。

様々な物件の調査に入らせていただきましたが、一つとして全く同じ配置、利用状況ということはありません。一般住宅だけでなく、店舗や工場、神社や仏閣の移転工法の検討は補償コンサルタントの腕の見せどころです。

目まぐるしく状況が変わる令和の時代ですが、今後ともご指導、ご鞭撻をよろしくお願いします。

太陽光発電設備

毎年のように全国各地で自然災害が起き、大きな被害が発生しています。そのなかでも近年は台風や豪雨での太陽光発電設備の倒壊や飛散事故が問題になっているとニュースで見かけるようになりました。

十年前ではこうした社会問題が起こるとは考えられなかったことですが、太陽光発電の普及が本格化したのは平成24年の『再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)』創設以降となり、この制度により事業用太陽光への参入も急拡大しました。

太陽光発電設備の普及に伴い、平成29年に事業損失、収用損失の両面で補償の基準化が行われました。その一部を紹介したいと思います。

 

収用損失については

①支障となった太陽光発電設備は建物等として移転補償額を算定

地上設置式

- メガソーラー等 … 生産設備(耐用年数20年)

建物設置式

- 屋根設置型   … 生産設備(耐用年数20年)

- 屋根建材型   … 建築設備(建物の耐用年数)

②太陽光発電設備の移転によって生じた減収等については、必要に応じてその他通常生じる損失補償として算定

 

①については、平成29年「太陽光発電設備の移転料等の算定について(通知)」の区分に適合させるため令和2年度より算定要領の区分も改正されました。

 

【旧】

・一般的な住宅等の屋根置き型、屋根材または外壁材一体型で、建物と一体として組み込まれており、かつ、容易に取り外しができない太陽光パネル

→建築設備

・土地に自立して設置されるメガソーラーのような売電や大規模施設への給電等を目的に大規模に設置されている太陽光パネル

→設置又は稼働状況等により機械設備、若しくは附帯工作物

 

【新】

・住宅等の屋根材または外壁材等として機能を有し、建物と一体として組み込まれており、かつ容易に取り外しができない太陽光発電設備(建材型)

→建築設備

・屋根設置型等の容易に取り外しができ、個別の効用を有する資産となる太陽光発電設備

→生産設備

・土地に自立して設置されるメガソーラーのような売電や大規模施設への給電等を目的に大規模に設置されている太陽光発電設備(地上設置式)

→生産設備

 

改正により建物屋根設置型が建築設備から生産設備となりましたが、何かを生産するための電力供給ではなく生活に必要な電力を補助的に供給する小規模な太陽光発電設備に関しては、従前と同様に建築設備とする方が良いのではと思いますが…。

補償・保証・保障

補償コンサル業務を生業とする私達からすれば「ほしょう」と言えば「補償」の漢字が無意識にでも頭に浮かびます。

しかし世間一般の人々からすれば、そもそも自宅の建物等が公共事業に支障となり移転を余儀なくするといった経験のある人はそんなに多くはないはずです。

そのため「ほしょう」といった場合に、公共用地の取得等に係わる「補償」の漢字が浮かぶ人は稀であり少数派ではないかと思います。

そこで「補償」・「保証」・「保障」のそれぞれ単語の違いと意味を改めて考えてみることとしました。

先ずは「保証」ですが、これは品質保証、身元保証など、約束した条件を責任もって大丈夫、間違いなく請け負い果たすという意味があり、債務保証、連帯保証等でこの漢字が使われます。

また「保障」では、地位や権利、状態などに害がないように守る、保護することに重点がおかれ、社会保障、安全保障、人権保障等でこの漢字が使われています。

そして私たちに最も馴染みのある「補償」ですが、これは業務等によって生じた障害や天災等によって被った財産上の損害を補い償うことを意味しており、償うことに重点が置かれ損害補償、災害補償等でこの漢字が使われています。

世間一般では比較的馴染みの薄い「補償」ですが、これまでの公共事業に伴う用地補償業務以外に、平成23年の東日本大震災以後も熊本地震や北海道胆振東部大地震と毎年のようにたびたび発生する想定外の地震や西日本豪雨、さらにはそれ以降の大型台風等でも大規模災害が継続して発生しています。

そして、これら大災害に対する復旧復興のための災害廃棄物等解体撤去業務、あるいは災害復興事業に伴う用地補償業務等によって「補償コンサル」や「補償」の単語を目にするようになったとも近年になって感じています。

また、今年の令和2年3月以降の新型コロナウィルスの感染拡大に、政府や自治体が繁華街等の飲食店事業主に対し感染防止のため一定の範囲で休業を要請し、休業に応じた事業主や従業員に対しては賃金や休業手当を支払う「休業補償」を実施することになりました。

こうした世の風潮から「補償」なる単語も市民権を得たと言えなくもありませんが、公共用地取得に直接係わるコンサルの一員としては「補償」「保証」「保障」の意味を再確認したいと思います。

また、合わせて不法行為に基づく損害の補填を意味する「賠償」、および適法行為に基づく補填、天災その他の事故によって生じた損害の補填を意味する「補償」。

これらについても再確認する機会でもあると思います。

WEB会議の浸透

最近では新規に受注した業務でも初回の打ち合わせ時からWEB会議形式の打ち合わせの実施が可能であるかとの問い合わせがあります。もちろん可能ですと返答しています。

少なくとも事務所から事務所への移動時間の省略も出来、作業計画書等の初回提出物についても予めメール等で送信しておけば、受注者としても困ることはそんなに多くありません。

しかし、コロナ禍とはいえ昭和の時代に育った私自身からすれば、名刺交換と対面での挨拶なしでいきなりリモート形式での初回打ち合わせの実施はなんとなく味気なく、割り切れない思いが残ります。

補償に関する仕事では用地調査から始まって、補償説明、用地交渉等、あらゆる段階場面で人と関わることが中心の業務といっても過言ではありません。

そんな仕事にも拘らず一方では、WEBやリモートという時代の武器を最大限に駆使して活用していくことも必要な時代となりました。

現在、WEB会議システムは費用面ではそれ程負担になるものではありませんが、Zoom,Skype,GoogleMeet,BizMee,MicrosoftTeams,Whereby 等々、非常に沢山のWEB会議ソフトが有り、混乱が生じているのが現状です。

これらソフトの内、弊社ではZoomによって各支店、部署間において各自ノート型パソコンまたはタブレットを活用して社内会議、社内勉強会を実施しています。

弊社ではZoomでのWEB会議方式を取り入れる以前から支店間ではテレビ会議ができる環境は整っていました。それでもWEB会議採用の初期段階ではパソコンの環境や各自能力の差等によって、つながらなかったり、ノイズの発生等、様々な障害があり、準備する時間ばかりを要して肝心の会議が機能しない等の経験を繰り返しながらWEB会議、研修を実施していました。

そのため現在では、他ソフトのシステムであっても多数社員が充分対応可能な状況にまで経験を積んできました。

また、補償コンサルタント協会中部支部でもCPDポイント取得対象の研修会や勉強会等の中止や延期が多発しており、このような状況のなかでもオンライン勉強会をなんとか試行しつつあります。そして、その研修ではCPDポイントを取得できるような形式を採用しています。

そのため、弊社の補償業務管理士の有資格者も試行的研修とは言えCPDポイント取得が可能であるため、また愛知県から遥か遠方の県外に出向している有資格者についても、これら研修に参加しCPDポイント取得に努力しています。むしろWEBやリモートであるからこそ、これら研修に参加でき大変有難く思っています。

不便不都合をむしろ有効に利用することがこんな時期には重要なのかもしれません。

土地評価業務

補償業務管理士の資格は平成3年度に創設され、当時の「建設白書」でも公共用地取得にあたっては補償業務管理士制度の積極的活用を図っていくと記載されていました。

とはいえ資格制定以前から公共用地取得のための調査等は民間委託されており、用地調査業務では測量士や土地家屋調査士、物件調査業務では建築士、営業補償調査業務では税理士、そして土地評価業務には不動産鑑定士が業務に就く資格者要件として求められていた時代もありました。

確かに用地調査では登記簿等の調査や境界確定等、測量士や土地家屋調査士業務に共通した部分が多く、また物件調査では調査の中心的対象物に建物が多く含まれていることから建築士が業務に携わるための資格者要件となっていたように記憶しています。同様に営業補償調査では対象企業の帳簿等税務関係や従業員の給与関係にも関係している税理士を、さらに土地評価では土地の価格に携わる不動産鑑定士が資格要件を満たす者となっていたと思います。

その後、平成3年に補償業務管理士制度が創設され、用地調査、物件調査業務を中心に用地業務に従事していた測量士、建築士等が各部門の管理士資格を取得し用地に関する業務の民間委託が各部門とも大きく伸びていきました。

その恩恵を受け我々民間のコンサルも受注業務として魅力ある分野として目指すことの出来る業務分野になりました。

そうしたなかで土地評価の業務については、民間業務としてなかなか浸透しきれない面を有していました。

土地評価業務は不動産鑑定士が公共用地取得のために実施する不動産鑑定評価業務とは別の作業です。そのため補償業務管理士の土地評価部門の有資格者、あるいは不動産評価の専門家としての不動産鑑定士、さらには官庁職員担当者自らが土地評価業務を実施する等、業務の住み分けが充分に機能していないように感じています。

中部地方では、この業務分野においても住み分け等が整理され民間委託が進んでいます。実質的には補償業務管理士(土地評価部門)かつ不動産鑑定士の有資格者による業務の従事が浸透し、両資格の特徴を上手く取り入れ機能しています。

しかし中部地方以外での土地評価業務については、①補償コンサルタント業務の範疇として補償専属業務として発注、あるいは②不動産鑑定専属業務として発注、更には③民間委託には馴染まないとし業務発注しない等、地方によってまちまちの状況にあり混乱しているのが実態です。

そもそも土地評価は補償の分野ではありますが、補償業務では較差の比準等によって忠実に算定することを旨とし、極力判断要素を排除する性格の仕事です。資格者としての専門的判断を旨とする不動産鑑定士業務とは相容れない面も有しています。

さらに不動産取引事例の収集取り扱いという問題になると官庁職員担当者自らのみならず、補償業務管理士にあっても取引事例の収集取り扱いに関しては課題も多く、非常に難しく困難な面を有しているのが土地評価業務の特徴であります。

そのため魅力ある業務であるにもかかわらず中部地方以外ではなかなか民間委託に馴染まないのが実態ではないかと痛感しています。

編集後記

例年より少し長引いた梅雨も終わり夏本番となりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

例年なら気持ちも晴れ晴れとなるところですが、豪雨による災害に加え、相変わらず新型コロナウィルス感染症の拡大が続いていることで、精神的なストレスが溜まってきていると思います。

これを機に新しい社会活動様式を取り入れるだけでなく、これを継続することで、今後同じような状況が発生しても対処できる社会となるよう努力していきましょう。

当社でも密にならないようWEB会議や在宅ワークを取り入れるだけでなく、社員のスキル維持のための勉強会もWEBにより実施しています。

変化していく社会活動に対応するための努力を続けることで、今後とも皆様のお役に立てる新日を維持していきますので、よろしくお願い致します。

CONTACT US

お問合わせ

建設、補償調査、土地区画整理、
市街地再開発、建築設計、測量、鑑定など
街づくりに関わることは
お気軽にお問い合わせください。