第111号(2016年夏号)
地籍調査業務
マグニチュード7.9の東日本大震災発生から5年が経過し、ある意味では復興もまだこれからという評価と一段落という評価が混在しています。
こうしたなかで、平成28年4月16日には熊本にM7.3の大震災が発生し、熊本城をはじめ、建物や人命等に非常に大きな被害をもたらしました。
東日本大震災以降、平成26年11月には長野のM6.7や今年の7月には茨城にM5.0の地震も発生しています。
そして8月1日、千葉でM9.1のとてつもなく大きな地震発生の誤報に対しても真と信じたマスコミ等があったのも、いつ大型地震が発生しても不思議はない状況にあるからに他なりません。
中部地方の南海トラフ巨大地震では30年以内にM9以上の地震が70%以上の確立で発生の可能性があるとされています。
そして、この南海トラフ地震は東日本大震災に比較して、津波による浸水面積は約1.8倍、浸水域内の人口では約2.6倍の大きな被害が想定されています。
大型地震がいつ来ても不思議はない状況のなかで、国を挙げての地震に対する備えとして、また土地取引の円滑化、公共事業の効率化等の観点から地籍調査の重要性、必要性が叫ばれています。
しかしながら、現在の東海地方の進捗は全国平均進捗50%強のなかで、愛知13%、岐阜16%、三重に至っては9%、中部で最も進んでいる静岡でさえも24%の進捗状況に過ぎません。
このような中、弊社では土地調査部門の補償業務管理士はもとより、地理空間情報専門技術者、地籍工程管理士、地籍調査管理技術者、地籍主任調査員等の専門技術者を教育養成し業務受注に備えています。
今後、懸念される東南海トラフ地震及びそれに伴う津波等の震災復旧復興に資する都市部官民境界基本調査及び地籍調査業務に積極的に取り組んでいく覚悟でおります。チャンスをいただければ幸いに存じます。
補償コンサルタントとは?
私がこの会社に入社して1年が過ぎました。最初は「補償コンサルタント」とは何か?から始まりました。私は大学で建築を学んでいましたが、正直この会社の説明会に来るまでは「補償コンサルタント」という業務をまったく知りませんでした。ですが話を聞くうちに、様々な知識を必要とし、公共事業の重要な役割を担っている「補償コンサルタント」という仕事に魅力を感じました。
入社して、実際に経験してみると一つの業務の中で必要とする知識の多さ、業務の多様性には驚いています。当初はよく分からず、上司、先輩方の指示どおりにただ作業を進めるという状況でしたが、1年間の業務を通じて経験を重ね、少しずつではありますが「補償コンサルタント」の仕事の大変さ、やり甲斐を感じております。
補償業務では公共事業の支障となる建物の調査・算定を行わなければなりません。私は机上では大学の頃、図面をたくさん書いてきましたが、補償調査では基本的に現場で画板を持って方眼用紙に既存の建物をコンベックスで測りながら図面を書いていく必要があります。建築では図面を書いた後に建物が建ちますが補償はその逆です。既に建っている建物を図面に落とす作業となります。図面を書くことにはある程度の自信はありましたが、机の上で書く図面とは勝手が違い、自分が書いた図面は先輩方の図面と比べて明らかに汚く、読み取りづらいものでした。それに加え、先輩方はサラサラと書いていくのに対し、私は何度も書き直したり、取った寸法を忘れ、再度測り直したりとてんやわんやしていました。
また、補償調査は算定を前提としています。算定のルールがあるためそれに従う必要があり、円滑に業務を進めるには調査の段階で算定のことを念頭に置かなければならないのです。そうしないと調査漏れが発生し、再調査をしなければならなくなります。その結果、権利者にも自分自身にも大きな負担となりかねません。それゆえ、算定で何が必要で何が必要でないのかをしっかりと把握し、余分な作業を避けることが重要となります。しかしながら、算定は単純ではなく一度にはとても覚えきることのできない量です。そのため、私は調査・算定をしたことのあるものは確実に覚えるよう心がけています。しかし、まだまだ補償調査に対しては苦手意識があり、毎回の如く四苦八苦しています。
私はまだ「補償コンサルタント」という仕事のほんの一部を経験したばかりですが、「補償コンサルタント」とは建築だけではなく様々な分野に及ぶ仕事だと理解できました。それゆえ膨大な知識を必要とし、その都度その都度、業務に関することを勉強しながらやっていかなければならない仕事であることを身にしみて感じながら業務を行っています。「補償コンサルタント」という仕事は表舞台には決して出ることはありませんが、公共事業には無くてはならない存在です。私も社会に少しでも貢献できるようこれから地道に一歩、一歩、・・・また一歩と経験を重ね、様々な補償コンサルタント業務に携わっていきたいと思います。
成年後見制度
用地補償総合技術業務の中に権利者に対する公共用地交渉業務があります。この業務は権利者の大切な財産である土地を譲って頂くために、買収対象地が判る測量図、移転対象物件が判る図面、登記簿等の公共用地交渉用資料を使用し、補償金額が補償基準等により公平かつ適正に算定されたものであることを出来るだけ専門用語を使用せず分かり易い言葉で説明し理解を求める業務です。
契約調印に至るまでは①補償金額の説明だけでなく、②土地・物件調書の内容、③契約内容、④譲渡所得に対する税金の優遇制度及び特別控除を受ける際に生じる様々な影響等について説明し、全て了解を得なければなりません。権利者は様々で稀に個々の事情で成年後見制度を利用している方に対して説明する場合もあります。
この「成年後見制度」とは平成12年4月に禁治産・準禁治産制度に代わり、精神上の障害(認知症、知的障害、精神障害など)の理由で判断能力が十分でない方々が不利益を被らないように家庭裁判所に申し立て、その方を援助する制度です。
申し立てができる人は①本人、②配偶者、③四親等内の親族、④検察官などで、家庭裁判所が審理し、開始の審判・成年後見人等を選任し、審判が確定します。
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度があり、前者は判断能力の程度により「後見」、「保佐」、「補助」の3つに区分されています。各々に与えられる代理権の範囲が異なっていることから、判断能力の程度など本人の事情に応じて制度を利用できることになっています(後見が一番権限の範囲が広い)。ある統計によると、平成26年の1年間で法定後見制度では約4割程度の割合で本人の親族が後見人に選任されていますが、親族後見人を希望しても事情により司法書士などの専門家が成年後見人に選任されることもあります。(残念ではありますが成年後見人に選ばれた一部の人が本人の財産を着服するという事件が起こっています。)また、成年後見制度の利用者はここ数年毎年1万人以上のペースで増加しており日本が超高齢化社会に突入していることも分かります。
成年後見登記制度は、成年後見人等の権限や任意後見契約の内容などを登記し、登記官が登記事項証明書を発行し登記情報(登記事項の証明書・登記されていないことの証明書)を開示する制度です。
補償協議においては、高齢であっても元気な権利者の方もみえますが、大切な財産を手放す大事な話のため、家族の方が同席し一緒に説明を聞いて頂く場合もあります(仮に私自身、身内に移転の話があれば喜んで同席を希望します)。
私は、この総合業務に携わることがなければ、成年後見制度については何も知らずに過ごしていたと思います。一昨年に御主人を亡くし、いよいよ痴呆が加速してきた叔母の状態を聞いた時はいとこに「こんな制度があるけど知ってる?」とパンフレットを開いて紹介する自分がいました。
お盆で親戚が集まってくるご家庭も多いと思います。折角の機会ですのでほんの少しだけ成年後見制度について気にしてはいかがでしょうか。
河川海岸復興状況と用地取得状況
以前、第107号にて福島県でのCM業務について紹介させていただきました。今回は私が用地CMとして参加している福島県の建設事務所の河川海岸復興状況と用地取得状況についてお話いたします。
こちらの建設事務所の管轄エリアは浜通りと言われる県の太平洋側沿いで延長60㎞余りです。北端は宮城県との境になる相馬郡新地町から南端は第一原発が存する双葉町までです。その区間の15河川・18海岸の堤防復旧・復興事業を進めています。震災から5年が経ち事業も平成27年度までに完成したもの、今年度完成予定のもの、来年度以降完成予定のものがあります。完成したものは少なく、用地買収もかなり立ち遅れているのが現状です。
災害復旧ということで工事着手が先行しているものもあり、時間が少ない中でこれだけの事業を同時に進めているわけですから、業務が遅れ傾向にあるのは仕方が無いのかもしれません。
用地課では、前年度後半に用地交渉の外部委託を発注しました。いわゆる用地総合補償技術業務です。対象地権者数は400名程度、6事業を7社(補償コンサルタント)に発注しており、私達がその業務管理を行っています。
また、残地権者数の多数を占める共有地で相続が多数発生しているものは、認可地縁団体化を進めて法人格を取得させ、土地・建物等の資産を自治会(認可地縁団体)の名義とし、代表者と土地売買の契約を結ぶことにしています。
土地等所有者が不在者である場合は、家庭裁判所により選任された不在者財産管理人(親族、弁護士、司法書士)と契約を結ぶことを検討しています。ただし、不在者財産管理人の権限は管理と保全ですから、財産の売却処分などは家庭裁判所へ権限外行為許可の申し立てを行い許可を得なければなりません。土地収用法の適用を受けるためほとんどの事業の事業認定図書作成業務を発注しており、一部は本申請に持ち込むための地整(国交省)との協議も行っています。これについてもCMで徹底した管理を行い、本申請への手続きに滞りないよう業者への指示等を行っています。
事業が認可されたら、今度は必要な時期に必要な箇所の収用裁決・明け渡し申立ての手続きが待っています。これもCMとして、なんとしても用地取得に結びつけられるよう関わっていくことになります。
今年度は特に復旧・復興事業の成功に向けて大事な年となりそうです。私達も短期間に様々な形で用地取得に関わり、これらを経験できることは非常に貴重なことだと思います。正直言いますと大変厳しいと感じることもあります。しかし、通常の事業と違い復旧・復興事業ですから、少しでも役に立ちたいという思いで頑張っております。
新入社員の目線より
私は今年度より新日に入社した新入社員です。
名古屋市の本社に就職した私ですが、現在は岩手県釜石市の東北支店に居ります。異動の話が来たときはどうなることかと不安でしたが、こちらに来てみると気温が低く過ごしやすいです。良いのは気温だけではありません。釜石はリアス式で海の景色がとても綺麗です。釜石の中でも海に近い場所に住んでいるのですが、朝の通勤で車窓から見える景色が毎日の楽しみです。とりわけ早朝に一度、漁港に行って見た景色がとても印象に残っています。山の向こうに沈み行く月と海面から立ち上がる霧(やませ?)と遠くを走る漁船が一体となって景色を作っており、絵画のようでした。
海に縁があるのでしょうか、私は今、東前町・新浜町という海沿いの長細い漁村のエリアを用地買収の補助という形で回っております。漁村というと狭いエリアをイメージするかもしれませんし事実その通りなのですが買収対象地が全体で80筆を超える、存外にボリュームのあるエリアです。狭い分、事業調整に手が掛かり、事業計画も今まではっきりとは決まっていなかったため、これまで買収作業には手が付け難かったようです。現在になり土地をどのような事業に使うのかが明確になってきました。そこで用地買収の方も動けるようになり人手が欲しいということで、この度、私が補助者として関わることとなりました。
どういった事業になるのかといいますと、この細長いエリアの人間を安全に高台へと非難させるために2つの避難路を作る事業(防災機能強化事業)、水産加工等の事業者等を誘致するための場所を整備する事業(漁港機能強化事業)です。特に漁港機能強化事業は釜石市民の雇用を確保する目的もあるため重要な位置付けです。
このような事業に携わるには本来ベテラン職員が必要ですが、私は市職員の補助者の立場で毎日勉強させていただいている状況です。それでも今年度に入ってから本格的に始まった買収が、既に全体筆数の35%を超えています。これには二つの理由があります。
一つ目は市の担当者と支店の方々の存在です。市の担当者は震災復興のために釜石に来られた方で用地買収の経験が豊富です。昨年までは別の事業に携わっていたそうですが、このエリアに移ってからも次々と契約を進めており、今年度中には事業対象地の全ての土地を買収することを目標としています。また、支店の職員は3年前から釜石に従事し、部門を超えて知識があり質問すれば大抵のことはすぐに答えが返ってきます。
二つ目に震災後の住民の状況変化です。いわゆる震災復興住宅の入居が増えるなど、震災後の生活再建に変化が現れたことです。例えば今まで仮設に入っていた人も復興住宅に入ることで生活が安定し、精神的に落ち着いたことで事業へ協力的になるというケースがあるようです。また、別のケースでは事業が全く進まないことについて焦りを感じている方も居り、そのような方のところへ買収の話に伺うと、いつ来るのかずっと待っていたと聞かされることもあります。
しかし、その一方で難しいのが企業など、経営が絡むケースです。5年という期間の間に経営の再建をしている方も多いためです。また、逆に市の計画が定まらない間に行った相談が、今の段階になって支障となる場合もあります。土地を買収するために訪問したところ、企業側からすれば以前市から(こちらが買収するつもりだった土地に残ることを前提に)隣接地を買ってくれという相談を受けたことがあり、今回はその話だと思っていたと言われたこともありました。金銭的体力のある企業ならではの問題だと思います。
これからも様々な問題が出てくると思います。周囲の方々の力を借りて精一杯頑張ります。
復興、まだ道半ば
東北地方も梅雨明けすると同時に暑くなってきました。7月でも長袖で大丈夫だったのですが、ようやく半袖を着用するようになってきました。
私は釜石市へ来て3年目を迎えます。3年目を迎えますと生活のリズムが決まってきて、お昼休憩では決まって喫茶「あいどる」で昼食をとります。5月までは先輩社員と一緒に行っていましたが、先輩社員が本社へ異動となったため、今では一人で毎日足しげく通っております。
日常の業務状況ですが弊社では東部地区の津波復興拠点整備事業と嬉石松原地区の区画整理事業を担当しています。入社間もなく釜石へ赴任してきた私は、右も左もわからない状態でした。
1年目は東部地区、嬉石松原地区の両地区の設計業務を行いました。事業面積が東部地区は約30ha、嬉石松原地区は約13haと広く、全体の詳細設計を行ってからの工事発注では工事着手まで相当な期間が空いてしまいます。そのため、設計・施工をほぼ同時並行で行うよう、工種や地区毎での工事発注となりました。
嬉石松原地区では先行して、構造物の撤去工事や盛土工事を行うこととなり、津波で流された家屋の基礎や道路の側溝の位置や寸法などの調査、宅地の造成高や盛土量などの検討を行い、設計を行いました。
東部地区では漁港施設機能強化事業として水産加工場のための造成計画や旧市民会館跡地の造成工事などを行いました。
2年目からは主に東部地区を担当しました。東部地区は国道45号を挟んで西側と東側で大きく性質が異なります。
西側は市街地での道路整備が主な業務です。住宅や商業施設が多く残っているため、既存住宅などへの影響を極力少なくなるよう検討を行っていきました。
また、市街地は平地で高低差が少ないため、雨などを排水するための側溝の計画など難しい問題がありました。
東側は一体的に用地買収を行い、最大で7m近くの高盛土を行い、宅地と道路を一体的に整備していきます。
東側、西側を大きく分けて4つの工区に分けての工事発注でした。そのため、隣接する工区との調整などにより、工事発注後に変更や修正などの作業が発生しました。
さて、この春より3年目です。3年目は前年度までの既発注工事は見切り発車での工事着手も多かったため、修正設計などを行っています。また新たに新浜町地区の設計も本格化してきました。毎年、市役所の県外から応援で来ている職員の入れ替わりなどもあり、計画や問題点の認識などの確認が多く、なかなか上手く業務が進まない事もあります。
工事の施工も昨年あたりより本格化してきています。また、復興公営住宅も着々と完成してきています。釜石市では復興公営住宅や新たに建設する市民ホールなどを有名な建築家の方が設計を行っています。そのため建築学科出身の私としてはこういった建築物の完成が楽しみでもあります。これからも釜石の復興のために頑張ります。
編集後記
今年は7月になってやっと台風1号が発生しました。’51年に気象台がデータを取り始めてから’73年と’98年を含め一番遅いケースとなっています。しかし、年間発生件数を見るとこの年もほぼ平均数になっているため、今後に集中して発生するということになります。ゲリラ豪雨が多く発生していますので、十分な警戒が必要と考えられます。
今年も暑い夏ですが、現場での熱中症対策は行われているでしょうか?当社では現場作業には必ずお茶やスポーツ飲料、塩飴等を携行させています。これにより作業をよりスムーズに行い、素早くより良い成果を作成するよう努めています。
皆様も熱中症対策を怠らず、この暑い夏を乗り切りましょう。