トピックス

ミニコミ 2017.08.22

第115号(2017年夏号)

災害大国日本~災害に備える

我が国は、1年を通じて火山活動、地震津波、風水害、更には雪害等、様々な自然災害の脅威にさらされています。東日本や九州熊本の震災は特異な大災害であったとしても、平成29年以降、記憶に新しい災害だけでも3月には栃木県の山間地で短期間の大積雪とスキー場での雪崩が発生し、登山中の高校生らが巻込まれて死者8名(男性教員1名、男子生徒7名)を出しています。

また、地震では6月25日に長野県南部(王滝村や木曽町等)で震度5強の地震で人的被害と建物22棟の物的被害が発生、さらに7月11日には鹿児島でも震度5強が発生しています。

雨の被害では、九州北部地方で6月30日からの24時間降雨量が500㎜を超える大雨にみまわれ、福岡県朝倉市、大分県日田市など30名を超える死者と500棟を超える倒壊等の被害が発生しました。

また、7月22日から23日にかけて、東北地方の秋田県(秋田市、横手市)では300㎜を、北陸地方の富山県、新潟県では200㎜を超え、床上床下浸水を含め1800戸を超える住宅被害をもたらしました。

これ等の自然災害と人的物的被害は平成29年に限ったことではありません。毎年、日本のどこかで繰り返し発生しています。

とは言いながら、マスコミによる被災当事者へのインタビューでは、必ず「これまでに経験した事のない異常な天災」の答えが返ってきます。

言い換えれば、当地、当事者にとっては、これまでに経験した事のない事象だからこそ大きな被害につながるといっていいのかもしれません。

経験した事が無い大規模災害が毎年、日本のどこかで発生しているのが自然災害ともいえます。

だとするならば、明日は我が町、我が身と備える事が重要です。

我々の業務は災害を待つ性格のものではありませんが、備える事は重要です。

災害に遭遇しない事を願うと共に、一方で災害に備える心構えと準備が重要であることは言うまでもありません。

除却工法の認定

損失補償基準(用対連基準)第28条では…通常妥当と認められる移転工法により移転する費用を補償するとあります。その代表的な移転工法は再築工法で、まれに曳家工法、改造工法、復元工法が挙げられますが、実務上、中々お目にかかれない除却工法についてお話しします。

同基準細則第15の1の2では、①取得に係る土地に存する建物の一部が当該建物に比較して僅かであるとともに重要な部分でないため、除却しても従前機能に殆ど影響を与えないと認められる場合または②建物を再現する必要がないと認められる場合には…除却工法と認定するとあります。

具体的に①においては建物の庇のみが支障する場合が挙げられます。しかし、その出は屋根と同じ若しくは屋根以下であることが多く、また屋根の支障範囲だけでなく基礎のフーチング部分にも注意が必要です。屋根の形状が切妻等単純なものであれば除却工法も可能と思いますが、入母屋でしたら意匠的観点からその一部を切り取ることはできません。物理的観点の検討のみで「切り取って補修する」とするならば地権者の理解を得ることは困難なものとなります。

②においては現地調査を行い、どう見ても長年使用されず荒れ果てている建物であっても所有者が使用していると主張すれば除却工法の認定は難しいと思われます。

物件移転における補償積算業務を数多く手掛けている弊社でも除却工法を認定した事例は少ないのが実態です。これまで除却工法を採用しようとする場合でも、現地調査の結果に基づき条件を整理し、移転工法についての検討を行い「建物はその価値分だけでよい、再現する必要がない。」との前提のもとで除却工法を認定することはレアなケースと言えます。

我々補償コンサルタントは公共用地取得に伴い適切な補償を行うための基礎資料を作成することの先には、被補償者の大切な土地を公共事業用地として補償内容に納得のもとで提供されていることを肝に銘じ、特に補償金額に直結する通常妥当な移転工法の認定については十分注意して業務を進めていく必要があります。

異なる業種についても学べる仕事

この記文を書く半年くらい前になりますが、私は生命保険に加入しました。その時に当然ですが自分の個人情報を記入する際に業種も尋ねられ、私は「建設コンサルにいます」と答えました。すると、当然のように「建設関係のお仕事というと設計ですか?」と相手方に訊かれ、「図面は描くけど設計じゃないです」という事実を述べると、相手方の頭の上には疑問符がいっぱい浮かんでいました。

保険に入る際にこれ以上、訊いてもさしたる影響はないのでこの話はこのまま流れていきましたが、実際に補償業務を一言でまとめるのは非常に難しく感じます。私はまだ補償業務に携わって、そして社会人としても1年という短い年月しか経っておらず、毎日が未知の仕事との出会いです。この仕事に関わるまで、今ある建物を調べて壁がどんな素材か、屋根がどんな形状か、そういった物の現状を調べるだけなのかと考えていましたが実際はそれだけではなかったのです。

昨年度の冬、畜産業に関する業務に携わりました。今飼育中の家畜が側で行われている道路工事によるストレス等で品質等に影響があるかどうか確かめて欲しいというものです。そこで過去に販売された家畜のデータをいただき、それらを纏めて表やグラフを作成し品質や値段等、様々な比較を行いました。しかし、品質は工事する前と比べてもほとんどそのまま、値段に関しては横ばいのグラフが出来たどころかここ数年で販売した家畜の値段の上り幅に伴い当該畜産農家も右肩上がりに推移していたのです。

発注者との話し合いの結果、その工事での影響はまだ見当たらないという判断になりました。まだ、と言うのは工事が現在進行形で行われているからです。家畜の仔を仕入れてから競りに出すまでには何十ヶ月も要します。確かに現時点では市場との差は明確にありませんし、過去のものと比べても質は落ちていません。しかし、影響がはっきりと出るのは何ヶ月か先のこれからかもしれない。幼い頃にストレスを感じたら悪い品質のものが出来てしまうかもしれない。これらの要素を確認し、結論を出すにはまだ早いということになったのです。

「結果が出ない」という結果であったことと、実際に補償金の算定をするという作業ではなかったこととありますが、私にとってこの業務は非常に勉強になりました。単純に、自分が食しているものの過程を知り、異業種についての知識が身に付きました。また、自分が作成した資料を一切触れてない人へ伝えるのは簡単なことでは無いことを改めて痛感しました。そして、補償の考え方は単純に建物だけではなく多種多様であるということを知りました。

私は補償の仕事を知らない誰かに伝えられる自信はまだありません。社内で座っているだけでも様々な業務の話が耳に入り、驚く毎日なのですから。その中から一つでも多くの物事を吸収して精進していきたいと思います。

★かまいしだより№16

墳墓調査を通じて

全国的に梅雨も明け、これからは花火大会や夏祭り、肝試し…といった行事が真っ盛りとなる時期になってきました。現在所属している部署に配属され間もなく2年という月日が経ちますが、今年私は初めて墳墓の調査・算定に携わりました。内容としては盛土工事に支障となる墳墓を工事期間中、構外へ仮置きし、工事完了後に再設置するための補償金を算定するというものでした。初めて行う内容の業務ということもあり、多少不安はありましたが、事前に調査要領を調べていたため業務はスムーズに進むと思っていました。しかし現実は甘くはなく、業務を進めていくたびに多くの問題が発生しました。

まず1つ目の問題は、墓石に刻まれている戒名の解読です。今回調査した墓石の数は7基あり、その中で加工石で造られた、近代的な造りの墓石は2基しかありませんでした。他の5基については比較的古いもので、刻まれている戒名も旧字が多く使われていたり、墓石自体が欠損し、文字が読解できないこともありました。改葬料を算定するためには寺院で過去帳の調査をする必要があることから、より正確な内容を住職に伝えるべく旧字の検索を繰り返しました。

2つ目の問題は、現場調査時には草に覆われて発見できなかった墓石があったことです。墓地使用者への聞き取り調査を進めていく中で、先方から「無縁と思われる墓石が近辺にあるが、工事に支障はないのか」との申し出を受け、すぐに現地を確認しに行きました。結論から言いますと、その後の調査で申し出を受けた方と縁のある墓石であることが発覚し、補償金額を追加算定することで解決しました。もし、この墓石が盛土工事中に発見されていたら、調査・算定の間、工事を停止させてしまうことになります。無縁墳墓だった場合は、墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第三条により無縁墳墓等に関する権利を有する者に対し1年以内に申し出るべき旨を、官報に掲載し、かつ、無縁墳墓等の見やすい場所に設置された立札を1年間掲示し公告する必要があるため、さらなる工事遅延を招いていたことでしょう。現場調査へは広い視野で臨む必要があると実感した出来事でした。

この他にも、改葬に必要な書類や手続きがあること、墓地使用者・工事業者・寺院・石材店・発注者との調整など、実家にまだ仏様が無い私にとっては分からない事ばかりでしたが、とても貴重な経験ができました。盛土工事完了後、無事に元の場所へ設置された墓石の姿を見ることが待ち遠しいです。

今年のお盆の墓参りでは納骨されている方と自分との関係性にも気を付けながら参拝しようと思います。

福島県CM業務

私は今年度より福島県中通り地区の建設事務所で、道路CMの用地担当として業務に携わっています。以前は岩手県の東北支店で業務を行っていた経験もあり、本社から離れ東北での生活は初めてではないのですが、同じ東北とは言え岩手県沿岸と福島県内陸では気候の違いを感じます。福島の夏は予想していたよりも暑く、名古屋圏で生活していた例年と同様に夏バテしているところですが、発注者の方から「福島で1年生活ができるのならば日本のどの地域でも生活ができる」と聞いたように、当然冬も厳しいようです。新たな土地での生活と同じく、初めて携わるCM業務も戸惑うことが多いのですが、復興事業のために少しでも役に立てるようにと日々業務に取り組んでいます。

東日本大震災から6年が経過し、福島県でも沿岸部の被災地を中心にインフラ整備が目に見える形になってきました。しかし、避難解除等区域の産業の復興、避難住民の早期帰還を加速させるためには県全域、沿岸から内陸への広域的なネットワークの強化が必要とされます。避難指示区域等と周辺の主要都市等を結ぶ主要路線は交通量が増加するなど、震災以降その役割の重要性が高まっています。そこで福島県ではそれらの主要路線を「ふくしま復興再生道路(8路線、29工区)」とし、平成30年前半までの完成を目指し重点的に整備を進めています。

福島県道路CM業務は復興・創生期間内(昨年度より5年間)で復興事業を効率的に進めるための、執行体制強化のひとつにあたります。CM業務以外にも、発注者支援業務委託や用地補償総合技術業務委託など外部委託等を有効活用することで施行体制の強化を図るようになっています。

私が関わっているのは3路線7工区、区間の合計25㎞ほどになります。CM業務の用地担当技術者は用地買収困難箇所の課題解決や買収状況のマネジメントを行うとされていますが、現在は主に物件調査等の設計書作成や用地補償総合技術業務に含まれる照合業務の管理をしています。今までは民間の業者として、補償の方法・対象など検討が必要な際、最終的な判断は起業者に求めて指示に従う立場でしたが、今は起業者の側に立ち協議を行う中で判断するということの難しさを感じています。

また、用地買収箇所の課題とは別に、職員の方からは補償に関する相談を受けることも多く、補償の専門としての知識を試される良い機会を頂いています。返答が難しい事案に直面する場合もあり、本社・東北支店に協力を求め、助けて貰うことで何とか対応していますが自分の知識・経験不足を痛感します。もっと勉強しなければいけません。

用地補償総合技術業務は現在5工区で発注されていますが、道路計画の見直しや共有地の多数相続などの諸問題により用地買収が進まない状況にあります。

工区は山間部を通過するため移転先の土地が限られ、また地域によっては「がけ条例」の建築制限を受ける土地があります。「がけ」は空地造成規制法施行令で「地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地」とされています。福島県建築基準法施行条例では「高さ2mを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の2倍以内の場所に建築物を建築し、または建築物の敷地を造成する場合は、構造耐力上安全な擁壁を設けなければならない。」とされ、範囲内に建物を建てない、または建てる場合は擁壁が必要になります。残地内を移転先として検討するなかで「がけ条例」が障害となる物件もありました。その他にも地域特有の問題があり、厳しい状況ではありますが、早急に事業を進めることが求められるなかで用地取得に繋がる働きができるよう頑張りたいと思っています。

釜石の夏

私が釜石市の支店に来てから5回目の夏を迎えました。例年この時期には『やませ』(東北地方で春から夏に吹く冷たく湿った風のこと。)が吹くのですが、今年はほとんど吹いていません。やませが吹くと気温が4度~6度下がるのでエアコンはもちろん扇風機さえ必要としない夏を過ごしてきましたが、今年はこの5年間で1番暑い夏です。

復興事業の進行に伴い業務内容も現状を把握する為の『現地調査』から現在は設計に沿った工事を行う為の『工事用の木杭設置』、工事完成後住宅建築を行う為の『境界標設置』と進行してきています。

区画整理地区については、3分の2程度の工事が完了しコンビニの開店・復興住宅への入居・住宅建築が進んでいます。東部地区についても、造成工事・道路工事が確実に進み飲食店街の復興・市民ホールの建築・復興住宅への入居が始まり住人が戻ってきています。まだまだ仮設住宅にお住まいの方もいらっしゃる状況の中、徐々にではありますが4年間の成果が見えるようです。

普段の業務では調査段階から工事完了まで一連で受注する事は無く、この様な形で業務に携わることはほとんどありません(測量の場合ですが)。本社勤務では経験することのない貴重な業務形態であり、普段なら行う事のない資料作成や別業者が行う工程も一連の流れの中で作業することになり、今まで経験したことのない状況に戸惑うことも多々ありますが、長年の経験と周りのフォローで遅延なく進められています。

このように色々な経験や新しい発見など、その場に居なければわからないことがあるので、時には別の環境で業務を行うことをお勧めします。

現時点の工程では、区画整理地区については平成29年度末、東部地区については2年後の平成31年6月には工事完了の予定です。

釜石市に赴任してからの4年間の間に、測量も新しい技術が取り入れられつつあります。現在、二次元の平面図・縦横断図を使用していますが、新しい測量技術として地上レーザスキャン・UAV(ドローン)等を用い三次元でデータを取得します。現在の仕様書に沿った二次元の図面による成果を出力していますが、近い将来には図面が不要となり、光波・GPSの使用が当り前になった様に、三次元CADも当り前に使用することになるかと思うと10年先はおろか工事完了予定の2年後すら想像出来ません。

復興事業の長期化・新技術への対応等により弊社の役割もますます重要になっています。引き続き頑張って参りますのでよろしくお願いします。

編集後記

8月に入ってやっと全国的に梅雨明けしました。今年の梅雨は全国いたるところでゲリラ豪雨に見舞われ、被害も多く発生しました。暦では8月7日が立秋となりますが、これからもまだまだ暑い日々が続きますので、業務においても暑さ対策は万全にし、暑さによる災害が起こらないよう十分な注意をお願いします。

9月1日は防災の日です。当社ではいざという時、安全に避難できるように社員一人一人に折り畳み式のヘルメットを配布しました。先日早速それを使って避難訓練を実施しました。避難訓練終了後には消火栓や消火器の話をし、有意義な避難訓練となりました。当社では、このように常日頃から災害に備えるとともに、被災時にはいち早く事業復帰をし、皆様のお役にたてるよう努力しています。

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