トピックス

ミニコミ 2018.12.04

第120号(2018年秋号)

所有者不明土地問題

少子高齢化と人口減少は、就業者確保や社会保険財源問題等の原因となっていますが、同時に社会問題ともなっている空き家や所有者不明土地問題等も引き起こしています。

特に過疎化地域では、従来は所有していることに価値があるとされていた時代から土地保有に対する意識は大きく変化しています。

土地等所有への執着が薄れ、相続が発生してもそのまま管理されずに放置され、土地等所有者が不明化していく時代となってきています。

そのため所有者不明土地問題等は税収のみならず、大規模地震等発生時の復興や公共事業実施にあたっての隘路となる可能性も増加しています。

今年の6月には「所有者不明土地の利用の円滑化に関する特別措置法」が制定されました。

それは所有者不明土地に対して①不明土地を円滑に利用する。②不明土地所有者の探索。③不明土地を適切に管理する。等が主な目的となっています。

この目的達成には、法務省、国土交通省の相互連携が必要であり、所有者不明土地の調査等に関しては法務省、不明土地の利用等に関しては国土交通省が中心的役割を果たすのではと考えられます。

この問題に関して、関連ある民間業界としては補償コンサルタントを始め不動産鑑定士、土地家屋調査士、司法書士、行政書士、弁護士等が関係してきます。

現時点、各業界の役割分担は明確ではありませんが、官民の事業を問わず公園、文化施設等公益のために必要な所有者不明の用地確保について、これまでは収用手続きが必要でした。この手続きには長期の時間と大きな手間が必要でした。この特別措置法によれば収用等手続きに代わって都道府県知事の合理的判断に基づいて所有者不明の用地を利用することが出来ることになっています。 そこで、この手続き業務を補佐することが補償コンサルタントの業務役割となるのではと思います。

「所有者不明土地連絡協議会(仮称)」の設置等具体的な動きが始まるとともに補償コンサルタント等の業界に対して措置法の解説等の講習会が計画されています。

何れにせよ先行き不透明な時代にあって、補償コンサルタントでは、次なる新規業務拡大へのチャンスと受け止める必要があると考えます。

平成30年から次なる新たな年号では、我々の業界にとって「所有者不明土地問題」が新たなキーワードになることを期待しています。

建物移転に関わる廃材量について

建物移転料を積算するにあたって、廃材の取り扱いについて悩むことがあります。建物については、標準的な平屋専用住家の廃材量に規模補正、用途補正をもって廃材量を求めるため、建物本体の廃材量、付随する設備等の廃材量は網羅されていると考えます。

しかし建物が補償対象とならず、建物に付随する工作物のみが補償対象となる場合、本来建物設備として計上する屋外給排水管、排水桝等を工作物算定表で算定します。この場合、新設費と解体費は建物単価を準用するため、廃材量が計上されないこととなります。そのため工作物で積算する場合、建物設備の単位当廃材量を新たに作るべきではないかと考えます。

また、工作物についてどこまで正確な廃材量を求めるべきなのか疑問に感じます。土間コンクリートを例にあげると、単価表には無筋の土間コンクリート、有筋の土間コンクリートがあります。しかし解体により発生する廃材量はともにガレキ類のみであり、有筋の土間コンクリートであっても金属くずは計上されません。コンクリート量に対し金属類は無視できるほど微々たる量ですが、広大な敷地の場合、無視することはできないのではないかと感じます。

発生した廃材量を運搬する費用、処分する費用について、各廃材の項目別でトラックが必要であると考え、算定を行っています。しかし実情を考えると、処分先が同じであれば、微々たる廃材については乗り合わせで運ばれるものであり、それぞれの廃材項目にわけ運搬費を算定することは過補償になるのではないかと考えます。

全体の補償金からすると廃材関連に支払われる金額は決して多くはありませんが、全国的に補償方法を統一しようと動いている中で、あいまいな項目をどのように算定するかを検討する必要があると感じています。

キュービクル式受変電設備

「キュービクル式受変電設備」(以下、キュービクル)は、電力会社の変電所から供給される高電圧(6,600ボルト)の電気を工場、商業施設、オフィスビルや住宅で使用できる電圧に変圧する設備であり、各種の保護装置や計測装置、配電装置を内蔵している受変電設備のひとつです。

受変電設備は「区分開閉器、断路器、遮断器、変圧器、保護継電器、制御装置、計測機器、低圧配電設備」で構成されていますが、これら全てを鉄製の箱に一括して収容したものです。

キュービクルとは、もともと立方体を意味する『Cube』から派生した言葉で、小屋や小室、箱のことを言います。

「キュービクル式受変電設備」のメリットとしては、

●予め工場にて組み立ててから出荷され設置されるため、品質が安定する。

●工場で組み立てたものを設置するため現場での工事期間が短くて済む。

●金属製の箱に収められるため天候や気温による故障や感電のリスクが低くなる。

●コンパクトで場所を取らない。

等がありますが、デメリットとして

●工場で組み立てる必要があるため交換や増設をする際には手間がかかる。

等が挙げられます。

前置きが長くなりましたがキュービクルは、「建物移転料算定要領」第2条(建物の区部)の注意書きでは建築設備から除くと記述され、また「機械設備調査算定要領」第1条(適用範囲)の第2項では建築設備以外の動力設備、ガス設備、給・排水設備等の配管、配線及び機器類と共に機械設備に区分されています。

補償する場合は、これらの要領に基づき調査算定を行うことになりますが、工場等に設置されているキュービクルとオフィスビルや店舗等の商業施設に設置されているキュービクルを同じ機械設備として扱うことに疑問を感じています。

工場等のキュービクルは、主に機械設備を稼働させるために必要な電力を供給する(一部は工場建物の照明、空調等の電源)目的で設置されたものであり、機械設備の一部であるといえますが、オフィスビルや店舗等の商業施設のキュービクルは建物を機能させるための照明、空調、エレベーター等の建築設備に電力を供給する目的で設置されたものであることから機械設備ではなく建築設備ではないかと思われるのですが…。

しかし「機械設備調査算定要領」ではキュービクル式変電設備には「建築設備以外の」の文言が係っていませんから、機械設備として扱うのか。

皆さんはどう思われますか?

★かまいしだより№21

技術者を取り巻く環境

私が東北支店へ転勤し早くも5年が過ぎようとしています。

東北支店では主に釜石市における復興整備事業に従事してきました。この事業の特徴は、早期復興を実現するために測量調査設計業務と建設工事を提案体JVで一体的に行っているところです。釜石市では、被災者の一日も早い生活再建を進めるため、用地買収や許認可手続きが整った区域から順次工事に着手することを求められています。測量調査設計業務と建設工事を一体的に同時進行することで、こうした変則的な事業の進め方が可能となっています。

また提案体JVでは、各部門の技術者が意見を出し合い、何をいつまでに幾らで実施するといった基本計画の立案や様々なリスクを想定し解決策を検討するリスク管理等を行い、事業推進の円滑化を図っています。私も測量業務の担当者としてこうした会議に参加しています。基本計画の立案やリスク管理は、通常、発注者側で処理済みの場合が多く携わる機会が少ないので、とても貴重な経験をさせて頂いています。今後も積極的に取り組み、企画力や課題を発見し解決する能力を高めたいと考えています。

近年の我々技術者を取り巻く環境としては、人工知能(AI)やビッグデータ等の先端技術の急速な進展により、これまで人間にしかできないとされていた仕事がコンピュータに代替えされようとしています。イギリスの大学がまとめた「雇用の未来」というレポートでは様々な職種について、今後10年でコンピュータに代替えされる確率を試算しています。その結果によると、代替えされる確率の高い職種の中に測量技術者が含まれているのです。

先端技術の進展は測量や地図作成の効率化・自動化に寄与することが期待されていますが、その一方で測量技術者の仕事を奪う恐れもあります。この相反する課題をどう捉えれば良いのでしょうか。

このレポートではコンピュータが代替えできない仕事として、①芸術等の創造力を要する仕事、②セラピスト等の人の心に働きかける仕事、③新技術を創造するエンジニア、④新技術を紹介するセールスエンジニアを挙げています。つまり優れたコンピュータでも「新たなものを創造する」、「人とのコミュニケーションや交渉」、「状況を瞬時に判断して行動に移す」といったことはできないのです。

このことから私たちが生き残るには、コンピュータが持っていない創造力や交渉力、判断力といったコンサル力を備えた技術者に成長することが必要だと言えます。そして顧客のニーズに基づき先端技術を有効活用することで、徹底した効率化を図ることが重要となります。そうすることで私たちは、企画や提案、交渉といった仕事に専念できるようになり、その結果、かゆいところに手が届く、より良いサービスの提供が可能になると推察します。

私たち技術者が成長し先端技術を取り入れ有効活用することが、サービスのクオリティを高め、会社の発展に繋がっていくと考えます。

相続登記未了の用地について

福島県で道路CMの用地担当として復興業務に携わり一年半が経ちました。業務個所は昨年度に全工区の物件調査を終え、工区の終点側でも用地補償説明会を開催し本格的な用地交渉に入っています。

事業の進捗に伴い、用地補償総合技術業務では成果品の照合を終えて積極的に用地交渉に動いてもらっている段階です。私も今年度は業務委託の管理や買収困難箇所の解決に向けた検討に加え、買収状況や予算の管理などの業務に携わっています。職員の方々と共に業務をすることで、予算の計画から登記の申請、支払い手続きまでの用地事務の一連の流れを見ることができ、良い経験となっています。

私が関わる路線では復興事業ということもあり事業に協力したいという権利者が多数ではありますが、課題もあります。

その中でも今回は相続の問題について書きたいと思います。

業務個所には多数相続が発生した土地がいくつかあり取得に向け動いていますが、やはり相続関係人が数十人となる土地であれば取り纏めるにしても持分契約を行うにしても相当な時間を要します。

また、土地の権利者だけではなく、買収地に設定されている抵当権や所有権仮登記等を設定した人が既に亡くなっている場合も、登記の抹消の手続きを進めるために相続関係の確認が必要です。

相続の手法については何通りかありますが、起業者側としては誰か一人を代表として取り纏める遺産分割協議により行いたいというのが第一です。遺産は、相続人が複数の場合、全員の共同相続財産となります。その共同で相続した相続財産を具体的に誰にどのように分けるかを話し合うのが遺産分割協議です。実際にはその旨を記載した遺産分割協議書への署名押印をもって了解としています。

しかしそれは相続人全員の意思が揃わねばなりません。一人でも合意できないと取り纏めはできませんので、法定持分での契約を考えます。

相続人の範囲や法定相続分は民法で定められています。配偶者と子供が相続人となる場合の相続分の割合は配偶者1/2、子(全員で)1/2となるのは現行の民法(昭和55年改正)で、それ以前の民法では配偶者の相続分は子より少ないものでした。戦後の民法改正では配偶者1/3、子(全員で)2/3と定められており、更に遡ると戦前の民法では家督相続制度になり、嫡男が家督相続人として家の財産をすべて受け継ぐとされています。

現在においても、すべての相続において法定持分を現行の民法を適用するのではなく、被相続人が亡くなった時期で相続分は異なります。

被相続人がいつ死亡したか、その時期により適用法令が異なり、相続人も相続分も現行の民法の考え方と変わります。昭和初期以前のような昔に亡くなっている人で、相続手続きを行っていない場合には、その人が亡くなった時点の民法が適用されます。明治31年7月16日~昭和22年5月2日以前に死亡の場合、旧民法(家督相続制度)となります。

相続登記未了の用地で先祖から受け継いだ土地として管理をしている方が居たので、この方を代表として相続を取り纏めようと計画していたところ、相続関係を精査すると旧民法の適用となり相続人には当たらなかったというケースがありました。現行民法で考えると直系の相続人に当たる方でしたが、家督相続の流れで相続人から外れてしまったという事例でした。

家庭の事情や財産などプライバシーに深く関わることにもなる相続問題です。業務全般に言えることですが、配慮を尽くした業務を遂行するためにも、誤りを招かないよう知識を身につけることが必要だと改めて感じました。

相続についてはまだ勉強を始めたばかりです。早く業務に活かせるよう学んでいきたいと思っています。

釜石秋の風物詩

朝夕は空気が冷たく肌寒く感じる季節となりました。

この季節の釜石の風物詩といえば、「釜石まつり」です。

釜石まつりは古くから伝わる尾崎神社祭典と山神社祭典(釜石製鐵所の守護神社の祭り)が昭和42年から合同で開催されるようになり釜石まつりとなりました。毎年10月第3金曜日~日曜日の3日間に渡って開催され、土曜は尾崎半島にある尾崎神社本宮から船で市内にある里宮にご神体を奉遷する「曳き船まつり」が行われ、お召船を中心に虎舞や神楽を乗せた十数隻の船が大漁旗をなびかせて釜石港内をパレードします。日曜は尾崎神社と山神社の両神社の神輿を中心に虎舞、神楽、山車はもとより、手踊りや樽みこしなどの大行列が市内目抜き通りをパレードします。

当社は、釜石市復興整備事業中央ブロック提案体の一員として、2014年から参加しているので今年で5回目の参加となり、私個人としても5回目の参加となりました。

市内にある里宮から曳き船まつりが行われる会場までの道のりや神輿を担いでパレードをする市内は、我々中央ブロック提案体復興事業の復興現場です。神輿を担いで進む街並みには復興公営住宅、新築の戸建住宅、商業施設、新しく建設された市民文化会館等が見られるようになり、改めて初参加の2014年からの4年間での復興の進展と復興の兆しを感じることができました。また街並みや景観など以外にも2014年の初参加時点に比べ、神輿の担ぎ手の増加、曳き船の数の増加、沿道の観客の増加など祭り参加者が増えているところにも復興を感じることができました。

神輿の担ぎ手が増えたことにより、神輿を担ぐ回数が減り体力的に楽になった筈ですが、4年の歳月により私の体力の低下の方が著しかったためか、5回参加の中で一番体力的に辛い祭りとなりました。

釜石まつりに参加すると、1回参加したらあと2回参加しないとご利益がないと祭の関係者からよく言われます。来年参加すれば6回参加ととなり2回目のご利益が得られます。2回目のご利益を得るために体を鍛えて来年も参加できればと思っています。

編集後記

街路樹は色づき、朝晩が寒く暖房器具が恋しい季節となりました。今年は一時的とはいえ9月頃にインフルエンザが蔓延しましたが、空気が乾燥してきたこれからがインフルエンザの本番の季節です。外出から戻りましたらうがい、手洗いを確実に実施するとともに、予防注射等、早目のインフルエンザ対策でこれからの繁忙期を乗り切りましょう。

今年も、メッセナゴヤ2018に出展し、伊勢市駅前再開発を中心に建設コンサルタントという仕事を紹介しました。当社では多方面での業務にかかわることで技術的な向上を図り、日々の努力の積み重ねで皆様のお役に立てるよう頑張ってまいります。

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