第121号(2019年冬号)
発注者支援業務について
発注者支援業務とは、官公庁の組織のなかで一般に発注者職員に代わって民間業者が行う補助的業務を言います。
特に、東日本大震災以降は、大震災の復興、インフラの老朽化のなかにあって、公務員数は削減傾向、そして公共事業の減少とは裏腹に官庁各職員の業務量と負担は増加の一途を辿っているのが実情です。
そのため、官庁職員が行う様々な業務を補い、かつ『民間で出来る業務は民間に』という発想のもと発注者支援業務が生まれています。
そして現在、その業務受注に興味を示し多くの業者が検討しているところでもあります。
国交省整備局の説明資料によれば「発注者支援業務等」とは、
◎発注者支援業務(積算技術、工事監督支援、技術審査)
◎公物管理補助業務(道路許認可審査適正化指導、河川巡視支援、河川許認可審査支援…)
◎用地補償総合技術業務(用地補償総合技術)
と定められています。
用地補償関係では、資料によれば用地補償総合技術業務だけが支援業務として定められていますが、総合技術業務に限らず補償説明、土地評価、裁決申請図書、事業認定業務等についても同様に発注者支援的な業務と認識しています。
それは、これ等業務が少し前迄は業者に発注されることなく官公庁職員自らが実施していた業務だからです。ある意味これ等業務も発注者支援と言えなくもありません。
現在、中部管内では、これ等業務も若干発注されつつありますが中部以外では職員自らが作業に従事している状況にあります。
そのため、発注者職員の減少、高齢化とともに業者側にも実績と経験が少ないのが実情ではないかと思います。
発注者支援業務、言葉の意味からして本来ならば発注者が担当すべき業務かもしれませんが、長期的には公共建設事業が減少の時代にあって、業者からすれば決して否定すべきものではありません。
こうした業務についても私自身はチャンスと捉え積極的に対応していきたいと思います。
今後とも発注者皆様の御指導を宜しくお願いします。
動産の算定
現場調査に出たばかりの頃、最初に任されたのは動産を測る事でした。屋内・屋外にあり固有名称ではなく通称とされた名を頭の中で探し、寸法及び梱包が必要か否か、測った動産の位置を野帳に素早く記録する事で精一杯でした。そのうち慣れてくると自分の身長等の高さを目安に素早く測る事も出来るようになったように思います。
この動産の移転料は、平成30年度に全国統一の運用を図るため変更されました。
「屋内動産」、「一般動産」の区分とし、家族人員と住居面積で「住居面積別標準台数表」から引越しに必要な台数を認定する事になった台数には、住居面積内の屋内動産だけでなく、その世帯が所有する全ての動産を含むことになりました。別棟の倉庫や物置内や別途個別の調査は原則として不要となるのです。
住居面積とは、専用住宅であれば延床面積となり、店舗・事務所・併用住宅においては居住面積を指します。住居面積以外に存するものは以前と同様に個別調査が必要です。従って公共用地の取得に伴う損失補償基準細則第16に規定されている屋内動産・一般動産の定義を理解し対象動産を区分して調査をする事が重要であると思われます。
再算定も注意が必要です。常時居住面積で算定していた面積を住居面積とし、一般動産の屋内、屋外、要梱包、非梱包としていたものについては平成30年度単価では「屋内動産」とされました。木材、薪炭、石炭、砂利などは「一般動産」と記載されましたので、算定に住宅がある場合には動産調査票に木材等の計上がある場合、住居面積に含まれるのか判断が必要です。そして住居面積の標準台数表では実情に合わないと考えた場合、一般動産と同様に実測数量とすると記載があるため別途集計をする必要があるのか判断に迷います。 直近で行った再算定では、専用住宅のある動産においては、引越しを行う際に世帯が引越業者に委託される場合、一緒に運んでもらえるか否かを基準に考え、屋外に木材の記載がありましたが住居面積に含まれるとし再算定を行いました。附帯工作物のみの場合に屋外動産として出てくる数量に関しては「屋内動産」として実測数量を計上しました。
このように、単に再算定とは言っても各別の判断を伴うため最終的にはいずれも、発注者の方と協議の上決定しました。
基準の改正により、どのように考えて算定をしているのか問い合わせもあり、改めて細則、改正点、注意事項などを読み砕き、改めて自分なりの解釈をもって業務に望む重要性を感じた次第でした。
地域によって異なる建物事情
平成31年となりましたが、あと数か月で平成も終わってしまうということで、今回号が平成最後の号になるのではないかと思います。ある意味記念すべき号なのかも…。
新元号については、これまでの元号との紛らわしさを避けるのであれば頭文字は「A」が本命ではなかろうかと勝手に予想したり、「P」で始まる元号だったら、そうとうファンキーな時代の幕明けになるのではなどとしょうもないことを楽しみにしております。
さて、自分はもともと名古屋の本社勤務でしたが、約5年間の岩手県釜石市の東北支店勤務を経て、昨年2月また本社勤務に復帰致しました。とは言っても、復帰直後に病院のお世話になり、さらに2か月ほど全く使い物になりませんでした。以前から「突然死のリスクを減らしたかったら手術を」とお医者さんから言われておりましたが、本社復帰を機にバイパス手術を行いました。
道路のバイパス工事であれば、これまでの業務で何度も関わってきました。道路が完成すれば目に見えてそれまでの渋滞が緩和するものですが、血管のバイパス工事となると正直、流れがよくなったのかどうか自分では実感がありません。さらに、他にも体にだいぶガタが来ているようで、歳は取りたくなかったのですが、なるべく皆様にご迷惑をおかけすることがないよう努めていきたいと思います。
というわけで、実質的に本社業務に復帰したのが平成30年度の頭頃となります。
本社所属の中部地区と東北地区とを行き来して感じたのは、両地区での積算基準の運用の違い、そして建物や設備そのものに各地区の特色が見られることでした。
積算基準については、各地区で微妙な解釈の違いがみられることがあります。それは調書の様式や要求図面の違いとして現れることになります。
また、東北地区では住宅には寒冷地特有の対策が施されています。屋根には雪の滑り止めが取り付けられ、サッシも断熱のためペアガラスが多く使われている上に、内側に障子を設けて二重建具にしている家がほとんどです。給水配管には電熱線を使用した凍結防止ヒーターが取り付けられ、水抜栓が必ず設置されています。水道メーターも60㎝以上の深さに設置されていました。さらに、私が勤務していた釜石市では過去に何度か津波被害を受けていたこともあり、建物の基礎の補強や居室部の床高確保のため一階部分を非木造にし、その上に木造住宅を建てるという建築方法の建物が多く見られました。中部地区では珍しい構造や設備です。
補償業務に係わり物件調査において、一番楽しいことは、企業やお店などの内側を見ることができることです。タダで工場見学をさせてもらえるようなものです。
普通の一般住宅でも地域による特色や新しい建材、珍しい設備などを見ることができます。
いざ、これらを積算しなければならないとなると、どう手を着けたらいいのかと、気が滅入ることも多いですが、これらが何をするためのものなのか、どういう構造なのかと考え、それが分かった時は一人で悦に入っております。
社会的には元号の改号や東京オリンピックの準備、大阪万博の誘致などで湧き上がっておりますが、弊社においても創業50周年の節目を迎える年でございます。弊社も記念行事の計画などで何かとザワついております。皆様には釜石市の東北支店を含め、今後ともご指導、ご鞭撻をよろしくお願い致します。
★かまいしだより№22
釜石市復興業務における相続登記未了の土地
平成23年3月11日に発生した東日本大震災から8年の月日が流れようとしています。
当社は翌年7月より復興計画策定協力のため技術社員2名を派遣。その後、平成25年8月に釜石市復興整備事業設計施工等業務として釜石市の12地区を3ブロック(北・中央・南)に分け、プロポーザルにより公募された業務に4社の共同提案体の一員として中央ブロックに応募。9月に最優秀提案者に特定されてから約5年6ヶ月復興業務に取り組んでまいりました。当社の業務範囲は測量業務、設計業務、補償調査業務、用地買収補助業務、工事監理業務となっており、現時点では測量業務、設計業務、工事監理業務を実施している状況です。
釜石市中央ブロックは釜石市中心市街地の2地区を復興整備するもので嬉石松原地区の約13haを被災市街地復興土地区画整理事業、東部地区の約27haを津波復興拠点整備事業、漁港施設機能強化事業にて復興事業を推進しています。
嬉石松原地区については、平成30年1月にて工事は竣工しており、現在は平成31年4月の換地処分の公告に向け業務を推進しています。
換地処分に伴い業務の支障になっているのが相続登記未了の土地です。区画整理事業の性質上、換地処分時に清算金が生じます。予定地積より処分地積が多い地権者からは金銭を徴収し、処分地積が少ない地権者には金銭を交付します。非相続人からは徴収・交付ができないため法定相続人に徴収・交付を行います。そのため一昨年の8月より法定相続人の追跡調査を進めて来ましたが、現時点においても残り数件の調査を実施している状態です。当初の登記簿地権者は約300人とされていましたが、内100人が被相続人と判明し相続人追跡調査の結果、現時点において相続人は約400人まで増えており権利者は約600人となっています。換地処分の公告後は区画整理登記を行い清算金の徴収交付事務に入りますが、相続人の中には釜石に相続対象の土地があることすら知らなかった人も多いため、換地処分後の清算事務にも支障をきたすことが予想されます。
東部地区については、予定より若干の遅れがあるものの平成31年3月の概成に向け工事が進んでいる状況です。当社の業務は残すところ、街区及び画地の確定業務となっており、工事が完了した場所から宅地の確定作業を行い業務完了の予定です。
東部地区は津波復興拠点整備事業及び漁港施設機能強化事業にて整備を進めて来ました。この事業は区画整理事業と違い事業者が権利を取得して整備後に分譲する必要があります。当社は用地買収補助業務として用地取得を進めて来ましたが、こちらの業務でも支障となったのが相続登記未了の土地です。基本的には用地取得した場所から工事を進めて行くわけですが、東部地区は最大6mの高盛土による造成となるため、部分的に工事を進めることが困難であり用地取得の遅れが工事遅延に直結しかねない状況にありました。
東部地区の取得筆数約400筆の内、約70筆が被相続人と判明し相続人追跡調査を実施した結果、追跡調査数は約600人となりました。相続人からの用地取得には、相続関係説明図を用いて遺産分割協議書の作成、または法定相続持分による契約等の処理方法を説明しながら用地取得を進めて来ました。しかし、相続人の中には所在が不明、成年被後見人、相続人間のトラブルなどで処理できない場合もありました。その際は不在者財産管理人制度、成年後見制度、遺産分割調停などで対応し全筆を取得しています。このような対応が必要な場合は、時間を要するため起工承諾を取りながら工事遅延に繋がらないようにもしました。
他の復興事業においても相続登記未了の土地であるため、公共事業に伴う用地取得に支障をきたしている所有者不明土地問題が取り上げられています。また法務省の調査によると最後の登記から50年以上経過している土地は大都市圏で7%、中小都市・中山間地では27%との報告もあります。この問題は報道でも取り上げられており社会的に関心を集めています。もし、このような案件でお困りの際は、当社へご相談頂ければ幸いです。
福島県への赴任
私は東北地方太平洋沖地震及びこれに伴う津波により被災した地域の復旧・復興に係るCM業務のため、福島県の建設事務所に赴任し、間もなく1年となります。業務は主に用地取得のマネジメントで、今までの立ち位置とは異なることから、不慣れな部分は他のCM担当者に相談しながら進めています。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は平成7年に発生した阪神淡路大震災とは異なり、地震に加え津波による被害が甚大でした。管轄する地域の崩壊した河川や海岸の整備は原発事故による放射線量の高い避難指示区域を除き、用地買収が完了した工区から随時工事を始めており、今では視覚的にその進捗が分かるようになってきました。今後、除染作業が進むにつれ工事に着工できる部分も広がりインフラが整備され、各地に避難された方々が故郷に戻って来ることができる環境が整うのではないでしょうか。震災から間もなく8年が経ち、特に今年は当時小学校を卒業した生徒が成人を迎えた年に当たり、とても長い時間が経過しています。帰還困難区域は未だに時間が止まっている状態ですが、早期の復旧・復興を大前提に掲げ、事業課・用地課・CMが一丸となってその目標に向かい、私もその一員として貴重な経験を積ませて頂いています。
私が住む南相馬市を少し紹介します。
【住】南相馬市は平成18年の市町村合併で原町市(はらまちし)と相馬郡小高町(おだかまち)及び鹿島町(かしままち)が合併したもので、「〇〇ちょう」と読む人はこの地方の出身者ではないことが分かります。震災前の人口は約7万人、現在は約80%程度まで回復しています。太平洋岸には全国規模の大会も開催される人気サーフスポットの北泉海岸があり、サーフボードを乗せた自動車をよく見かけます。夏には相馬野馬追という祭事(国重要無形民俗文化財)があり、地元の人だけでなく全国からの観光客で街全体が賑わいます。東北最大の都市、杜の都仙台へは原ノ町駅から常磐線で約80分で、中部地方に比べて運行本数が少なく多少不便を感じます。初めて電車を利用した時はドア開閉ボタンの仕組みが分からず困ったものでした。
【衣】南相馬市の気候は県内でも安定していて、夏は涼しく冬は比較的温暖です。風は一年を通して強く、冬は更に強く冷たく、その洗礼は秋頃から始まり寒冷地仕様の衣類が手離せません。
【食】米・野菜・魚介類の美味しさに驚き、昔ながらのソウルフードも抵抗なく受け入れることができました。ただ、名古屋で一般的に売られているチューブの味噌が手に入らず、こればかりは名古屋から持ち込む有様です。
UAV(ドローン)及び地上型レーザースキャナーを用いた三次元計測について
私の東北支店での勤務も6年が過ぎようとしています。去年11月にドローン及び地上型レーザースキャナーを導入することになり、事前にドローンを用いた三次元計測とその活用の講習に参加しました。講習の内容はノートパソコンやタブレットを用いて、撮影計画作成・飛行撮影・撮影データによる写真測量の基礎技術を学びました。
撮影計画はGSPROのソフトを使用して事前にミッションを作成し、飛行前にドローン自体にプログラムをアップロードさせミッション開始から完了時まで完全な飛行撮影を自動航行で行います。最近のドローンはGPS位置情報や高密度センサーによって簡単に飛ばせますが、その反面、電子機器のため無線電波を利用するのでGPS電波が途絶えるなどのトラブルがあった場合には機体を操る技術が必要になるのでフライトシミュレーターもしくは小型ドローンで練習が必要になります。また国土交通省の無人飛行機の安全な飛行のためのガイドラインなどで定める知識・技能を修得して飛行する必要があります。特に電磁波が出る施設としては電力会社の送電線や変電設備、携帯基地局、電波塔などある所は接触事故を防止する為、現場作業前に安全打合せ確認書(日程・作業方法等)を交わす必要があります。
建設業界でもi-Constructionによりドローン等や地上型レーザースキャナーを用いて起工測量や出来形確認測量を実施する方法が増えてきています。
もはや測量技術者ではなく地理空間情報をとりまく環境をとらえて対応していく「地理空間情報技術者」になりつつあります。
今年は弊社にとって震災復興の最後の年であり2019年ラグビーワールドカップが開催されますが業務完了まで気を引き締めて頑張っていきたいと思います。
編集後記
今年に入ってからほとんど雨が降っていないため、空気が乾燥して湿度が20%台まで下がっています。このため、今年はインフルエンザのA香港型が猛威を振るっています。もし感染したと思った場合は、早めに受診し治るまで外出は控え、ウィルスを拡散しないように気を付けましょう。また、乾燥のため、各地で火災が発生しています。火の元には十分注意しましょう。
まだまだ寒い日が続きますが、季節的には立春を過ぎ木々が芽生え始めています。皆様におかれましては、これから年度末の繁忙期を迎えますので体調には十分気を付けこの時期を乗り切っていただきたいと思います。
当社では、ISMS (ISO27001)の認証を取得して初めての定期審査があり、継続的改善を進め情報セキュリティに関しても一層管理の行き届いた会社となるよう努力をしています。今後ともよろしくお願い致します。