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ミニコミ 2023.08.21

第139号(2023年夏号)『各地で発生する大雨災害』ほか

各地で発生する大雨災害

この時期は、地球温暖化による影響なのか線状降水帯等による大雨被害が多く発生しています。

中部地方では、6月2日に大雨をもたらした令和5年梅雨前線豪雨等、東北地方では秋田県で7月12日及び14日の大雨により大きな被害が発生しました。被災された皆様には、心からお見舞い申し上げます。

 

6月2日の大雨による愛知県の被害状況は

・人的被害:死者1人、軽傷者2人

・住家被害:全壊3棟、半壊128棟、一部損壊7棟、床上浸水331棟、床下浸水711棟

・非住家被害:公共建物1棟、その他107棟

・農林水産被害:被害合計額約77億円

・その他の主な被害:破堤2河川、越水17河川、道路損壊49か所、土砂崩れ39か所

と発表されており、激甚災害に指定されました。

(出展:愛知県HP 6月2日大雨による被害情報について(第11報))

 

また、7月14日の大雨による秋田県の被害状況は、

・人的被害:死者1人、軽傷者4人

・住家被害:全壊2棟、半壊2棟、一部損壊4棟、床上浸水824棟、床下浸水477棟

・非住家被害:公共建物10棟、その他22棟

・農林水産被害:被害合計額約23億円

・その他の主な被害:河川氾濫16河川、道路冠水47箇所、土砂崩れほか41箇所

と発表されており、激甚災害の指定も検討されているようです。

(出展:秋田県HP 7月14日からの大雨による被害状況等について(第10報))

 

弊社の技術部、調査測量部も微力ながら愛知県内の復旧に向け、お手伝いをしています。

今後、東日本大震災の復旧復興事業での経験を活かし、用地総合事業部も含め、全社的に協力する所存でいます。

災害はいつどこで発生するかわかりません。ハード面の整備も大事ではありますが、昨今の自然災害は予想を超える甚大な被害をもたらすことから、ソフト面の整備がより重要になってきています。

以前、補償コンサルタント協会中部支部の研修会で講演頂いた東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの特任教授である片田敏孝氏は、岩手県釜石市の小中学生約3千人に対し防災教育・訓練を実施しました。その結果、「釜石の奇跡」で実証した住民による自主避難の意識が必要だと再認識したものです。

これからは行政頼りではなく、自分の身は自分で又は地域で守るという考えが全国に広まっていくことが必要だと改めて感じました。

土地の補償額における「正常な取引価格」とは

取得する土地に対しては、正常な取引価格をもって補償するもの(基準第8条)とされています。

「正常な取引価格」とは、「客観的交換価値」を基礎としたもので、不動産鑑定評価基準でいう「正常価格」、すなわち市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格と同義と認められます。

「現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場」とは、以下の条件を満たす市場をいいます。

 

(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。

ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。

①売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別の動機のないこと。

②対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。

③取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。

④対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。

⑤買主が通常の資金調達能力を有していること。

(2)取引形態が市場参加者を制約したり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。

(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。

 

以上のとおり定義されますが、私見ではありますが、現実の市場に鑑み、留意すべき点を以下述べたいと思います。

上記②(結果として④にも関連しますが)についてですが、現実には買主側が売主側と同程度の「知識や情報」を得ていることは稀であり、特に不動産業者と消費者が当事者となる場合、消費者が法令規制の細部等まで把握していることは通常はないなど、情報の非対称性が伴うことは否めず、価格が売主側主導で決定されることが実情です。

また、⑤については買主の資金調達能力は借入に依存することが一般的で、金融の状況がマーケットに大きな影響を与えます。このところ、不動産価格の上昇が継続していますが、この現象はまさにこれを反映したもので、金融緩和により借入条件が緩和されていることを背景に取得可能な買主が増えている。それが「超過需要」を招き価格を押し上げている。ただ、今後条件が変わり金融が引き締められるようなら、打って変わって需要が減退し市場が収縮し、不動産価格が負の方向にふれる可能性が考えられます。

すでに、先行きを不安視する見方も表れてきています。

土壌汚染が及ぼす公共事業補の影響

公共事業遂行のためには様々な隘路(あいろ)があります。今回はその中から土壌汚染について取り上げたいと思います。

私が福島県でCM業務を担当している河川の一つに「東根川」という一級河川があります。東根川は福島県の伊達市から伊達郡国見町にかけて流れ、一級水系阿武隈川水系の一次支流となっています。この流域は以前から水害が頻発しており、国や県が数々の治水対策を進めていましたが、令和元年の東日本台風により支流の古川と合わせ氾濫が発生し、伊達市保原地区の住宅街が浸水する被害が発生しました。

私が担当する遊水地は事業用地が約19haで計画容量が約52万㎥と大規模な事業でしたが、過年度より用地の取得が進められていたことから、未買収の事業用地は残り約3haとなっていました。

しかし、ここで一つ目の問題が発生します。未買収地の内、約1haが土壌汚染対策法第14条における自主調査により「形質変更時要届出区域」に指定されてしまいました。

この土地にはかつて衛生処理場が稼働していた過去があり、施設の廃止に伴い所有する団体が自主調査を実施した結果、基準値以上の土壌汚染が検出されたというものでした。

形質変更時要届出区域は土壌汚染対策法で定める基準値以上の特定有害物質が検出された場合に指定される区域指定の一つで、掘削など土地の形質を変更する場合には都道府県知事へ届出が必要となります。残存する衛生処理施設の一部は地下に埋設されており、解体撤去工事において汚染物質の飛散や流出が懸念されることから、土壌汚染が大きな障壁となりました。所有する団体は汚染の除去を検討しましたが、その費用は概算で約30億円でした。

汚染土壌は通常の残土搬出と異なり搬出先が制限されるほか、薬剤による汚染の浄化などが必要となる場合があることから費用が高額になる傾向があります。区域指定を受けた土地が汚染の除去などの措置を講じられず年月が過ぎてしまう要因の一つはこの費用面の問題にあると思います。この所有する団体についても巨額な費用を支出することは容易ではなく、県と方針協議を重ねてきましたが、結果、事業用地からの除外、つまりは計画容量の見直しをせざるを得ませんでした。

そして、これと同時に二つ目の問題は区域指定を受けた土地の周辺における土壌汚染の可能性です。そこで県の担当部署や指定調査機関の提案を受けながら、調査範囲や方法を決め、ほかの事業用地についても14条の自主調査を実施しました。結果として未買収地の内、更に約0.3haの土地について基準値以上の土壌汚染が発覚し、こちらについても事業用地から除外をする事となりました。

幸いこれら二つの問題で除外された事業用地が担う計画容量は越流堤や掘削深度の設計変更で確保可能でしたが、最悪の場合、計画容量の縮小や事業用地の追加買収等も起こりかねません。また、土壌汚染が発覚した土地の位置次第では輪中堤のような構造物を施工する必要も出てくるかと思います。

土壌汚染というものは、土地の正常な取引価格の算定において減価要因の一つとなることから身近な問題として捉え、今後の業務に従事したいと思います。

事業損失業務について

事業損失とは、公共事業の施行により発生する不可避的な不利益、損失又は損害のことをいいます。その対象となるのは事業を施行する起業地内の損失(土地収用や建物の移転等)を除外したものとし、反射的な利益や直接的な身体障害等は含まないものとされています。また、内容に応じて分類されており①振動・騒音(重機等)、②水枯渇・汚濁(生活用水)、③地盤変動(掘削等)、④電波障害(TV受信)、⑤日照阻害(日陰)などがあります。

近年は各種インフラの整備や施設の建築・解体工事なども増えています。従って、その対象は非常に幅広く、都市部の建設工事では住宅地と隣り合わせになることも多くなります。官民問わず多くの建設現場で工事が増えるごとに事業損失の対象となる業務も増えている傾向にあり、近隣地域への環境対策は大きな課題となっています。

事業損失は昭和37年に閣議了解された文書において損失補償とは区別され、土地収用法が根拠とならず、予め損害等の発生が確実に予見される場合には事前賠償をすることは差し支えないとされています。そのため、運用上の措置としては損失の補償(賠償)ではなく、現状回復の費用負担を行うものと捉えられています。

負担額の内訳は損害が発生する以前の状態に戻すための復旧費用が計上されています。

費用負担には次のような認定要件が定められています。①当該工事と因果関係があること。②受忍すべき範囲を超えていること。③工事完了から1年以内の申出であること。

これは公共事業は皆の利益のために行っているもので、それが原因で発生した損失についてはある程度我慢すべきであるという考え方に基づいています。その一方で私有財産に不利益を与えたのであれば、社会連帯の見地から特定個人が被った犠牲を他の社会構成員と平等に負担するという考え方であると言えます。

また、収用損失であれば対象となる当事者や補償物件が明らかですが、事業損失の場合はその対象が起業地外(第三者)に存在することになり、事前に損失が発生するかどうかも分かりません。工事との因果関係も含めて、費用負担の認定には慎重さが求められます。

「損失補償」とは、国又は公共団体の適法な行政活動の結果、特定の個人に発生した財産的損失を補填するために、公平な負担という見地から、その補償を国又は公共団体に対して請求する制度のことをいいます。

「国家賠償」とは、国又は公共団体における公務員がその職務を行うにあたって、故意又は過失によって「違法」に他人に損害を与えたときに、国又は公共団体が責任を負うことをいいます。

国家賠償と損失補償では「違法」な行為を前提としているか、「適法」な行為を前提としているかという部分で大きな違いがあります。

違法行為による損害の賠償を求める制度である国家賠償には「国家賠償法」の第1条、第2条に「損害賠償責任」があります。第1条は公権力の行使について故意または過失により他人に損害を与えた場合(過失責任)。第2条は営造物の設置管理の瑕疵により他人に損害を与えた場合(無過失責任)となります。

現在行っている地盤変動の調査もこのような内容を理解し、事前の現場調査が完了したところです。調査報告書を作成した後、該当する対象者の方に報告書の内容説明を行い、確認書類に署名・押印を受領し、調査報告書の完成です。

昨今、習慣として行われている文書への押印ですが、ペーパーレス化等の動きがあるなかで、業務における押印の必要性が問われています。民事訴訟法裁判になった場合、署名にはどの程度の法的効力があるのかが重要となります。法的効力が強い順に並び替えると①署名捺印②署名③記名押印④記名とされています。

このことから、①と②を意識し誠意をもって対応していくことをこの機にさらに思うこととなりました。

補償と土木

私は、この春に当社の補償調査部に入社しました。補償業務について、入社後の4か月を全てまとめたとしても、この紙面で紹介することは難しいと思います。

私は、大学や大学院では土木工学を専攻していました。補償コンサルタントの仕事は、実際的な内容は建築に関連した内容が多いですが、公共事業を施行する土木に深く結び付いた仕事でもあります。そこで、自らの備忘録も兼ねて土木に関連したことを散文的に述べたいと思います。

まず、「土木」という言葉の由来から述べます。

「土木」という言葉の由来については諸説ありますが、『淮南子(えなんじ)』の一節に書かれている「築土構木」を省略したものが「土木」となった説が有名です。夏の暑さや冬の寒さに困る洞窟に住む民のために徳の高い人が土を盛り、木を組んで室屋を作ったところ、寒暑をしのげるようになったといったことが書かれています。

ここまで、もっともらしく淮南子の築土構木を由来とする説について述べましたが、淮南子が出版されるより3世紀前の文献ですでに「土木」という言葉が多く使われているそうです。また、淮南子が由来とする説の根拠となる文献で最も古いものでも20世紀に入ってからのものであり、それ以前に淮南子を由来とする文献がないそうです。

従って、淮南子の築土構木を略したものが「土木」の語源であるとする説は正しくないのかもわかりません。しかし、淮南子の築土構木の考え方が現在の「土木」の考え方にとても当てはまりがいいため、この説が「土木」という言葉の由来として定着したと考えられます。

「土木」という言葉の意味については、土木学会のHPでは「土木(Civil Engineering)とは『市民の為の工学』あるいは『市民の文明的な暮らしの為に人間らしい環境を整えていく仕事』を意味する言葉」と説明されています。

「土木」が担当する構造物は道路、ダム、港湾、鉄道、浄水場などの社会資本であり、まさに市民のための工学であるといえます。社会資本は公共財でもあります。経済学において公共財とは「非排除性」もしくは「非競合性」を有する財と定義付けされています。

「非排除性」とは、供給する際に特定の人を排除することができない性質をいいます。例えば、灯台を設置する時に灯台から放たれる灯火の利用を制限することはできません。このようなものは対価を徴収できないので国または地方公共団体等が供給するしかないものとなります。

「非競合性」とは、利用者の増加によって供給の費用が変わらない性質をいいます。例えば、灯台周辺の船舶航行量が増加しても、灯台の建設費は変わりません。このようなものは対価を支払えない人にも供給したほうがよいため、国または地方公共団体等が供給するのが望ましいとされます。

注意しなければならないのは「非競合性」を持つテレビ放送を民間企業も行っているように、公共財ならば国または地方公共団体等が供給しているという関係は成り立ちません。また、学校教育や介護サービスのような公共性が高いものであっても「非排除性」または「非競合性」を有しないことから公共財ではありません。

話が公共財となってしまいましたが補償業務が社会資本を整備するための一分野であることを自覚し業務に従事していく所存です。よろしくお願い致します。

地役権設定とは①

地役権設定と聞いて何を想像しますか?

地役権(民法280条)とは、特定の土地の便益のために、他人の土地を利用させていただく権利です。

当社が関わった業務は、高圧送電線下の安全確保のために地役権を設定する業務を行っています。送電線の場合、変電所等に電気を送るために送電線下の土地の空間を使用させていただく権利です。公道と自分の土地の間にある他人の土地を利用(通行)する場合や眺望や日照の確保のために設定されるのも地役権です。

送電線の線下については、電気設備の技術基準の定めにより「保安上必要な建造物との離隔距離」を確保しなければなりません。線下補償とは、設備の保安上一定の離隔距離を確保するために線下となる部分の土地について利用を一部制限させていただくことから、そのことに対し補償費をお支払いし「地役権」という権利を登記簿の乙区に登記させていただくことです。

地役権を設定していても送電線の維持に支障となる行為を除いては、地上面は今までと変わりなくご使用いただけます(高さ制限はあります)。

 

地役権に関わりがある用語は、

【要役地】便益を受ける地役権者の土地

【承役地】便益を与える他人の土地

ほとんどの場合隣り合った土地及び上下の位置関係になります。

送電線の要役地は発電所や変電所、鉄塔が建っている土地となります。

 

〈どのように設定されるのか?〉

【地役権の設定範囲】

承役地の一部を使用する場合(例:南側10㎡)と記載し地役権図面の添付が必要となります。

【地役権時効】

土地の所有者同士の取り決めで設定します。(高圧線の場合送電線の存続期間中と記載される)

【地役権は相続人、土地譲渡者はどうなる】

地役権は所有権に付随する権利で相続や売買を行っても新しい所有者に引き継がれます。そのため、第三者に対抗するために登記が必要です。

 

地役権が設定された土地の分筆登記は問題なく行えます。分筆後に各土地に存在する地役権がある土地の範囲が登記されます。地番が2筆に分かれるので地役権図面も2筆分必要になります。地役権が設定された土地の固定資産税は他者が使用していても固定資産税の納税義務はあります。

地役権に似た権利に地上権(民法265条)があります。他人の土地に工作物や竹林等を設置のために、土地を利用する権利です。地役権はあくまで土地を利用するのに対し、地上権は土地の上に設置したものを利用する権利であり、根本的に異なります。

本業務は個人情報を扱う業務であり、運搬時及び交渉時には格段の配慮を必要とし細心の注意を払い業務を行う必要があります。

次回は当社が請負っている業務を具体的に説明します。

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