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ミニコミ 2024.05.20

第142号(2024年春号)『輪島市公費解体業務の支援』ほか

輪島市公費解体業務の支援

日本補償コンサルタント復興支援協会を通じ、弊社も微力ながら令和6年能登半島地震により被災した輪島市の公費解体業務に参加しています。第一陣として4月の中旬に1週間1班3人体制で現地調査を実施してきました。

道中、「のと里山海道」は上下線通行可能ですが、その先の「能越自動車道」徳田大津ICからのと里山空港ICの間は道路の損壊がひどく上り線を通行止めとし、う回路を建設し、何とか下り線を通行させている状況で、道路の段差が大きく制限速度は40㎞という状況でした。途中、NHK連続テレビ小説「まれ」の主題歌「希空~まれぞら~」のメロディーを奏でる「おとのみち」も損壊が激しく、途切れ途切れでメロディーを奏でる状況ではありませんでした。

市内に到着すると、何度もテレビで報道された被災した街並みが広がっていました。4月中旬の時点では、道の駅も水道、下水道が復旧途中であり、トイレは仮設、営業している飲食店も食器は使い捨てのものを使用し、飲料水はポリタンクから注ぐという状況でした。宿泊した民宿のある地区は比較的復旧が早く、水道、下水道はもとより、風呂も到着の2、3日前に使用可となっていました。港地区には自衛隊の入浴支援施設が設置され、コンビニは早い店で16時閉店、遅くて20時閉店、飲食店は数件営業している状況で、初日に行った飲食店の方に「わじま観光デジタルマップ」なるサイトを教えてもらい、開店している店を探して食事するという状況でした。未だ仮設住宅が建設中でしたので、昼食時には炊き出しに並ぶ被災者の方々の姿を見て、贅沢を言っている自分が恥ずかしくなりました。

現地の建物には被災度判定の色紙と、安否確認の日付と部隊名が書かれたガムテープが貼られ、そのうち被災度判定で全壊または半壊と判定され公費解体を申請し、必要書類が整い受理された建物から調査を進めていきました。ほとんどの所有者の方は避難されているため無人ですが、近隣の方から「ご苦労様」と声をかけられ、中には涙ぐみながら被災の状況を説明してくれる方も見えました。先日新聞でも報道されていましたが、被災した多くの建物が隣家に寄り掛かり、かろうじて倒壊を免れている状況であることから、1日でも早く解体工事に着手できるよう協力できればと思います。

地震発生から4カ月経た今も市内の各所に迷子の猫を探すビラが貼られ、復旧・復興はまだ始まったばかりです。まずは被災した建物等を撤去し、道路を復旧し、その後の1日も早い復興を祈るばかりです。

用途的地域について

公共事業に伴い、土地所有者へは公正な補償が求められます。土地の取得に対しては、基準第8条より「土地の正常な取引価格をもって補償するもの」と定められています。評価する上で不可欠な要素である用途的地域について説明します。

土地の評価は原則として「標準地比準評価法」により行います。その土地がどのような用途で利用されているか地域的特性に着目し同一状況地域に区分、その中から個別的要因が標準的な画地を選定し評価し、標準的な画地から買収に係る画地を比較して算定します。この第一段階で行うのが、前述通り評価に係る地域を土地の用途的観点から区分することです(土地評価事務処理要領第3条)。

用途的地域とは、都市計画法で定める地域地区の一つである用途地域とは異なります。土地の用途的な観点から区分される地域であり、具体的に地盤・地勢・地質などの自然的条件、河川・道路などの社会的、行政的条件などから総合的に判定を行います。「~の用途に供されることが自然的、社会的、経済的及び行政的観点から見て合理的に判断される」などの文言で明言されるのを見たことがある方もいらっしゃるかと思います。例えば、都市計画法での用途地域は商業地域であっても、実利用として大半が戸建住宅の場合は「『商業地として』供されることが自然的、社会的、経済的及び行政的観点から見て合理的に判断される」との判断は厳しいでしょう。法的に商業地域では大型店舗、飲食店、オフィスビルですら建設は可能ではありますが、件のように閑静な住宅地として利用されていた場合、例えばファミリーレストランのような路面店舗を建てることが「合理的に判断できる」とは言えません。用途地域が商業地域であっても、用途的地域は住宅地域と判断するでしょう。

このように用途的地域は限られた視点で判断するものでは無く、対象土地を含む地域を様々な観点により分析し判定を行います。

また、具体的な地域の区分に当たっては地域の現勢に合わせ、各般の事情に配意して区分するとされています。具体的には次の通りです(土地評価事務処理要領第6条)。

一 地勢及び地盤

二 道路・鉄道・河川・水路及び公園

三 街区及び集落

四 土地利用の状況

五 市町村・大字・字等の境界

六 都市計画法の地域地区等

七 駅勢圏・通学区域

 

但し、実務的な処理における一つの目安として個別的要因のうち画地条件(地積・間口等)の修正を行わない土地を想定した上で、価格が上下30%以内に収まらない場合は同一の地域と判断するのは厳しいでしょう。

建物移転料算定要領の改正に思うこと

建物移転料算定要領が改正され建物の区分が変更されました。

改正前は、木造建物でツーバイフォー工法やプレハブ工法等の軸組(在来)工法以外で建築された建物は全て木造建物Ⅲに区分され、木造建物調査積算要領では、推定再建築費の算定は統計値を用いず積上積算で求めるか、専門メーカー等の見積りにより行うこととされていました。しかし、改正により専用住宅で平屋建又は2階建の建物に限り木造建物Ⅰに区分されることとなり、改正された木造建物調査積算要領においても、従前の軸組工法のみに適用されていた要領とは別に新たにツーバイフォー工法又は木質系プレハブ工法に適用する要領が作成されたことにより、統計値を用いての算定が可能となりました。

また、非木造建物においても、プレハブ工法により建築された建物はすべて非木造建物Ⅱに区分され、推定再建築費の算定は、非木造建物調査積算要領により積上積算で求めるか、専門メーカー等の見積りにより算定することとされていたものが、鉄鋼系プレハブ工法(軽量鉄骨造)により建築されている専用住宅、若しくは共同住宅に限り非木造建物Ⅰに区分され、改正された非木造調査積算要領では積上積算や専門メーカーの見積りによる算定はなく、統計値を用いての算定が可能となりました。

これにより区分の変更対象となった建物の積算は簡略化され見積りを徴収する必要はなくなりましたが、区分の変更がなかった建物については従前のまま積上積算か専門メーカーの見積りによる算定が必要となります。

この積上による算定や専門メーカーからの見積徴収が業務を遂行する上で大きな課題となる場合があります。

まず積上による算定の場合、部材の数量を拾い上げる作業が必要となるため部材の形状、規格、寸法を記載した詳細な図面の作成が必要となります。またプレハブ工法による建物の多くは専門メーカーにより独自で開発、加工、製作された部材で建築されており、積上積算により部材を一つ一つ拾い上げて数量を算出したとしても、その部材の多くに対応する単価が公表されていないため、専門メーカーからの見積りによるか、公表されている一般的な資材単価から建築士等の資格取得者の意見を参考に準用できるものを選定して算定を行うこととなります。

専門メーカーからの見積りによる場合、見積の徴収は原則2社からとなっています。

ツーバイフォー工法やプレハブ工法は専門メーカー独自の部材や仕様により建築されている建物が多く、自社建築の建物に関しての見積りは作成可能であっても、他のメーカーの建物については仕様が不明等の理由により見積作成ができないとの回答をいただくことがほとんどです。

見積徴収が1社からの場合には、その金額の妥当性について、ネット等で公表されている該当する工法別の㎡当りの建築費との比較により検証を行いますが、在来工法とツーバイフォー工法又はプレハブ工法の建築費の差は皆無ではありませんが、それほど大きな差は見られないことから、木造建物に関しては在来工法で建築された建物の建築費と在来工法以外で建築された建物の建築費をそれぞれ統計値化し、工法別の差額を係数とすることができれば、在来工法以外で建築された建物を在来工法に置き換えて算定した建築費に工法別の係数を乗じる算定方法が可能になるのではと思うのは私だけでしょうか。

土地の引渡しについて

用地補償総合技術業務の業務内容のうち特に重要となる業務は、公共用地交渉(調書の説明及び確認、損失補償協議書の説明、補償契約書案の説明及び契約の承諾)です。

そのうち契約書の説明の中で「所有者は令和○年○月○日までに物件を移転し、かつ土地を引き渡すものとする」といった引渡し期限についての承諾も得なければなりません。期限については説明者と所有者の間に差異は少ないものの、物件の移転については少々差異が生じることがあります。

そこで説明者は分かり易くかつ明確に伝えるための準備として、まず算定書の内容を理解します。つまり移転対象物件は何か、その中で移動する物件は何か、解体撤去する物件は何か、またその範囲はGL(地盤面)上までかGL下を含めたものかを把握します。説明資料は移転方法や条件を誰が見ても分かり易い表現や文言で記載した図面が有効ですのでその一例を紹介します。

物件の配置図に記載してある対象物件を移転方法毎に色分けし、視覚的に分かり易くして、コメントは的確な表現で記載します。構外再築工法を認定しGL下まで補償した場合のコメント例としては①(最も強調した表現で)事業用地内にある物件は全て移転をお願いします。②(対象物件毎に旗揚げし)建物・附帯工作物は地上部分だけでなく地下部分の基礎も解体撤去をお願いします。掘った後は現場の土で凹凸を埋めて均しておいて下さい。③舗装は剥がした後に均しまでお願いします。④移動できる附帯工作物や動産は事業地外への移動をお願いします。⑤立竹木は移植又は伐採をお願いします。伐採する場合はノコギリの歯が傷つかない程度まで地面に近い高さで切って下さい。等々、口頭での説明で済ませることも可能ですが出来れば文書化して説明した方が伝わり易いと思います。

実際の移転作業は物件所有者から依頼された専門業者が行うことが多いため、いつまでに何をどこまで移転(解体・撤去、移動)しなければならないかを説明者は物件所有者に明確に伝えておかなくてはなりません。よって、前述の図面を物件所有者から専門業者に提供することにより適切かつスムーズに移転して頂くことも期待できます。時には説明者が所有者の代理となって直接専門業者に説明することもゼロではありません。

田の場合は、稲も物件に該当します。契約時期は種籾や苗の発注時期との兼ね合いもあり、発注した種籾等が無駄にならないことが重要で、土地の引渡し期限について土地所有者と耕作者の両者の調整が必要となります。種籾の受付期間は地域で異なることはもちろん、田植えが終わった直後に来季の発注をする方もいれば、締め切り近くに発注する方もいて様々です。この点についても用地交渉の早い段階で個別の事情を把握しておくと契約時期の策定にも役立ちます。例えば現在耕作中で来期の種籾が発注前の場合、「契約にご協力して頂くとなれば現在の田での耕作は今季までで、事業用地は稲刈り後に引渡して頂き、来期の耕作は残地のみになります。」と言った内容が基本でしょうが、種籾が発注済だった場合は発注先にキャンセルの可否を確認頂き、その結果を考慮しながら契約時期を検討することになるでしょう。

契約後の対応ではありますが土地の引き渡しに関する説明が疎かになっていると工事着手にも影響する恐れがあるため重要な説明の一つと感じています。

用地交渉業務に従事して

私は、令和3年12月に調査測量部から用地総合事業部に転籍し、以来大手電力会社の用地交渉業務を中心に、業務を行って参りました。約半年間、大手電力会社からの出向社員の方達と共に行動し、用地交渉業務の流れについて勉強させていただき、独り立ちの末、現在に至ります。

用地交渉業務の目的としては、用地の取得、地役権の設定(改廃)、工事用地の借地など様々です。工事の種別としても様々ではありますが、ⓐ新設送電線路の開設に伴う用地の取得及び地役権の設定(新設)、ⓑ既存送電線路の移設・改造に伴う用地の取得及び地役権の設定(新設・改廃)、ⓒ既存送電線路の維持・保安のための改修工事、ⓓ不要送電線路の撤去及び地役権の改廃、ⓔ地役権未設定地における追加設定などが考えられます。

私はこのうち、ⓒの工事借地にあたる「電線張替工事に伴う用地交渉業務」を主担当者として経験しました。地権者交渉の大まかな流れとしては、①事業内容の説明、②土地への測量立入依頼、③借地範囲の交渉、④補償金額の提示・契約内容説明、⑤契約の締結となります。契約締結後において、定期的な履行状況の確認、返地の確認まで担当するケースもあります。

電力会社によってはこのうち①と②の段階を省略して、③借地範囲の交渉から実施するケースもあります。しかしこの場合、地権者から「事前の説明や承諾がなかった」と苦言を呈される場合もあり、以後の交渉に悪影響が出ることがあります。またこの手法では、「直接電力会社の担当と話をしたい」と言われるケースが多いようにも思います。地権者訪問を実施するにあたり、登記簿に記載された住所地に本人が居住していないことも時折あり、転居先まで辿り着くのにかなりの時間と労力を費やすケースも存在します。③借地範囲の交渉から実施するケースでは、工事開始までの交渉期間が短い場合も多く、不在地権者であると判明した場合、予定通りの借地ができず、工事の見直しを行わざるを得なくなることも考えられます。

このようなことから①事業内容説明、②土地への測量立入依頼といった導入部において、地権者の情報を正確に把握した上で、事業内容についてきちんと説明しご理解いただき「私どもが担当させていただく」と面と向かってお話しし、かつ地権者に信頼いただけるような対応を行っておくことが、大変重要であると考えます。導入部にきちんとした対応を行い、地権者との関係づくりを行っておくことで、多少のご無理を聞いていただける場合もあれば、何らかのトラブル時にも折り合いをつけていただける可能性が高くなります。

これまで用地交渉を経験して感じたこととしては、きちんと地権者に向き合った対応をしていれば、困難な交渉事であっても妥結点を見出すことができるということと、妥結点を見出すにあたっては様々な知識や経験を要するということです。私は異業種からの転職組ですが、前職での知識・経験も無駄にはならず、用地交渉において役立っていると思います。

立竹木について思う

春はあらゆる動植物たちが目覚める季節で特に桜の開花を心待ちにしている方も多いのではないでしょうか。

家屋調査で庭木の調査はつきもので、冬の調査時は枝葉に特徴のある種類のものくらいしか特定が難しく、判断がつかない場合は所有者の方に直接お伺いするか、写真で葉を撮影し帰社してから植物辞典で調べるなど、調査に手間取る次第です。昨今は携帯をかざして検索できるアプリを活用するなど、以前より助かる事も増えましたが、本来なら枝葉を見て特定できる知識を身につけることができればと思っています。それ故、春の立竹木調査は植物名を覚えるチャンスです。「花木(かぼく)」は花を観賞するための庭木、「果樹」は食用になる果実を実らせる庭木のことを指します。どちらも庭木ですが目的が違います。また「花木」に対する言葉は、庭に植える草花や花束などに使う生花と、樹木に咲く花とを区別する時に使われる言葉になります。

損失補償基準算定書Ⅴ巻に掲載されている単価も「庭木」、「果樹」、「草花」と区別され、さらに木材の用に供するものとして予定されている立木の集合体で燃料用途以外のものとして植栽されている用材林、竹林と目的によって区別して単価が作成されています。この単価を元に算定していくため、算定の根拠となる樹種、数値を調査測定します。調査の際には単価表で見慣れた名前と実際の木々と照らし合わせることがどれだけできるかで、調査の速さに影響を及ぼすように思います。花木の名前や種類などは知らなくても生活に困るものではありませんが、ちょっとした知識を増やそうとするために花の咲く時期は名前を覚えやすく、それだけで世界が広がります。この機会に草原や公園・街路樹・花壇など、身近な自然環境に意識を向けて観察することは手軽で良いのではないかと思います。

この身近な植物ですが、日本の国土の約7割を占める森林には多種多様な動植物が豊かな生態系を形成しているため、森林を守っていくことは生物多様性を保全していくことに繋がります。2021年6月のG7サミットにおいて、「30by30」を各国は約束しました。これは2030年までに陸と海の30%以上を保全するという目標です。また、陸域と海域を守る目標を達成する手段として「保護地域以外で生物多様性保全に資する地域」が示されました。これを「OECM」と言い、管理している土地など法令による規制ではなく慣習や生業によって守られている場所を地球の生態系を守るための場所としてきちんとカウントしていくことができる仕組みです。日本では企業の管理する水源の森や地域が管理する里地里山などがOECMにあたると思われます。

日本の奥山には素晴らしい自然の風景を楽しめる国立公園などの保護地域がありますが、私たちの身の回りにも絶滅のおそれのある生き物が多く暮らす里地里山や、洪水防止や心身の癒しに繋がる都市の緑地など、大切な場所がたくさんあります。これらをOECMとして国際データベースに登録することで、その大切さを皆が共有し一緒に守っていき、そして保護地域とOECMが繋がることで森里川海が繋がり、私たちに恵みをもたらすという仕組みです。

微力ではありますが少しでも未来に貢献できるように、また活動に参加できればと公園の花木等を見ながら思う事となりました。

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