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ミニコミ 2024.08.20

第143号(2024年夏号)『3Dスキャナの導入』ほか

3Dスキャナの導入

地球温暖化の影響なのか毎日猛暑が続いていますが、皆様、体調管理はしっかりなされておりますでしょうか。弊社も、現場調査の際には塩分キャンディ、スポーツ飲料はもちろん、休憩を多めに取りながら調査を進めています。また、最近ではファンのついた空調服を導入し、さらに冷却効率を高めるために保冷剤が付いたベストの導入等も検討しています。

この猛暑の中、調査時間の短縮は喫緊の課題であり、従来の紙と鉛筆の調査方法では調査時間の短縮は経験によるしかありませんでした。ところが最近のデジタル化により建物調査も、画版とコンベックスからタブレット端末とレーザー計測器に、一眼レフカメラから360度カメラ等にと時代は日々進化をとげています。その昔、屋根の形状が複雑な建物や工損調査の屋根の現況写真は、近くの高い建物から撮影させていただいたりしていましたが、今ではドローンの登場により屋根の調査は一目瞭然となっています。ただし、このドローンは色々と規制が多くあり、たとえ軽量の機器であっても街中での使用はできないのが現状です。

そんな中、いまさらですが弊社も輪島市の公費解体調査を機にiPadProを購入し、3Dスキャナの使用を始めました。軽量のドローンも2基新たに購入し輪島市に持って行ったのですが、飛行禁止で使用できませんでした。3Dスキャナは、それなりに距離も計測でき、点群データ化をすれば立面図等も簡単に書ける可能性を強く感じました。

10年を超える熟練の調査員でなくても、3Dスキャナを上手に活用することで調査時間の短縮、内業(図化)時間の短縮が可能となります。

国交省を中心に補償業務にもDX化を進めているところではありますが、時代の波に乗り遅れないよう若手社員でも熟練調査員並みの時間で外業、内業が進められるよう少しずつDX化を進めていければと考えています。

所有者等の確認(その7)

前回(第136号)において、動産の所有者の確認方法について述べました。今回は、建物等の所有者の確認方法について述べたいと思います。

建物等の調査を実施するにあたり、事前に起業者から提供された資料等に基づき、当該建物等の占有者に対して聞き取り調査を行い、真の所有者の確認を行うことになります。

具体的には、先ず、用地実測図等により調査する土地の場所を特定します。次に、土地登記簿により土地所有者の確認を行い、調査対象である建物等が存する土地への立ち入りの了解を得ます。更に調査対象である建物等の所有者の同意を得て、当該建物の調査を実施することになります。その際、調査対象である建物等が複数の土地に跨る場合もあります。また、隣接地を借地して建物等を設置している場合もあります。そのような場合は調査対象である建物等が存する全ての土地の所有者から土地の立ち入りへの同意を得る必要があります。

また、名義人が既に死亡しているにも関わらず相続登記が完了していない場合は、土地登記簿から真の土地所有者を推認することはできません。そのような場合は、市町村役場の税務課などで課税台帳等を確認することにより管理人を特定することは可能ですが、第三者が個人情報を入手することは困難であることから、起業者の協力により必要な情報を収集すること等を踏まえて、真の土地所有者を特定します。

建物の場合は、基本的に建物登記簿により建物の所有者を確認します。

建物の登記簿謄本は建物の所在地・家屋番号を記載して法務局で申請することにより誰でも取得することができます。同登記簿の家屋番号は、名義人を同じとする複数の建物がある場合、主となる建物とその附属建物として登記されています。また、建物が複数ある場合には2棟目以降の家屋番号は枝番となっていますが、建物が取り壊されて新たな建物が登記される場合も、一度使用した家屋番号は使用せず新たな枝番を使用します。このような場合、調査前の確認では家屋番号が判らないこともあり、建物の占有者等からの聞き取りや市役所の税務課などの情報を収集する必要があります。

建物登記簿の登記名義人が亡くなっている場合であれば、相続人は誰か、また相続の手続きはどうなっているのかなど確認する必要があります。

長年、補償調査業務に携わっていますが、補償対象となる建物等の所有者の正確な把握は最も基本的なことです。今後も正確な建物等の所有者の確認には最大限の配慮を尽くしてまいります。

権利調査・相続人調査業務に従事して

○○県が施行する砂防整備事業に必要な公共用地を円滑に取得するために発注された権利調査・相続人調査業務を弊社が受注したことに際し、当該業務に従事したことを通じて得られた経験について述べたいと思います。

この業務の中で私が主に担当したのは、土地を取得する為に必要とされる基本的な情報である土地の所有者を特定するための権利調査を実施した後、土地の登記簿上の名義人が死亡していた場合に、相続人確定のための調査を行うものでした。

権利調査とは通称、土地登記簿、正式には登記事項証明書(全部事項証明書)に記載されている土地の現在の権利者(又はその法定代理人)の氏名又は名称及び住所又は所在地に関する調査をすることです。

また相続人調査とは土地登記簿上の名義人が死亡していた際に、当該名義人の相続人の調査を行うものです。一般的には家族、前妻の子、養子、認知した子(婚姻は無し)が対象となります。

具体的な業務内容として、まず始めに土地登記簿の「権利者その他の事項」に記載してある住所、氏名に該当する者の戸籍謄本、戸籍の附票、住民票を得るために、○○県が発行する公用交付の依頼(国又は地方公共団体の機関が法令で定める事務を遂行するために関係各市町村に請求できるもの)を関係各市区町村へ郵送し、順次返信された戸籍謄本等に基づき1地権者分の相続人を特定します。

しかし、中には相続人特定のために必要とする書類が返信されない場合があります。そのような場合は、返信された書類を確認しながら可能な限り相続関係説明図、戸籍簿等調査表等の書類を作成した上で、不足していると思われる書類について随時公用交付の依頼を行います。

また、戸籍謄本には家督相続と記載してある場合があります。家督相続とは、明治31年から昭和22年までの間に行われた旧民法に規定されている遺産相続方法で、戸籍謄本上の筆頭者である戸主が隠居や亡くなった場合にはその長男が財産等の全てを相続するというものです。

私が担当した業務の中で特に相続人の特定において難航した案件は、家督相続した長男が既に死亡しており、妻は存命であるが既に再婚しており、長男との間に子がないというものでした。

その場合、妻は相続人になれないため、長男の母親が相続人となりました。調査時点において、この母親も死亡していることから長男の兄弟が相続人になるため、相続関係説明図、戸籍簿等調査表を作成し、相続人を特定するため相続人の該当者に対し、相続権の確認のための依頼をしていくことになりました。相続が開始されてからかなりの期間を経ていることから、兄弟の中で死亡した者がいる場合はそのまた下の子が相続人になることに伴い、相続人確定のため多くの労力と時間が必要となりました。

その他、土地登記簿に記載されている名義人の住所、氏名に基づき公用交付依頼をしたにも関わらず、依頼先から該当者が存在しない旨の回答があった場合等においては、この先どうすればよいかと判断に迷うようなこともありましたが、経験豊富な先輩や同僚から適切なアドバイスを受けることにより何とか工期内に業務を完了することができました。

今回の経験を踏まえ、今後も同様な業務に対しても積極的に参加していきたいと考えています。

輪島市の現状と公費解体業務について

日本補償コンサルタント復興支援協会を通じて、弊社は令和6年能登半島地震により被災した輪島市の公費解体業務に参加しています。輪島市内の宿泊施設は、復興支援関連の業者や遠くに住んでいる被災者の家族などで連日満室だったため、弊社は少し離れた石川県七尾市の宿泊施設に泊まり、片道約2時間かけて現場へ向かいました。

公費解体制度とは、大規模な災害(地震、津波、水害、土砂災害等)が発生し、国が災害等廃棄物処理事業費の補助対象に決定することによって、被災自治体が公費によって被災家屋の解体・撤去を行う制度のことです。

公費解体の対象となるのは、損壊した建物等及び中小企業者の事業所等で、具体的には罹災証明書(住家用)で「全壊」、「大規模半壊」及び「半壊」の判定をされたものが対象となります。一方で対象とならないのは庭木、庭石や土間コンクリートです。(家屋周りの犬走りは公費解体の対象)

私は4月に1週間、6月と7月に3週間ほど輪島市で現場調査及び解体前の事前立ち合いを行いました。通常の物件調査では、建物の内部に入り、寸法や壁、床の仕上げや設備等を調査しますが、公費解体の現場調査では揺れによって倒壊する恐れもあるため、基本的には内部に入ることはなく、建物外部から長尺テープを用いて面積計測します。被災家屋の調査は建物所有者が市に必要書類を提出し、市で受理されたものから順次進めていきます。しかし、輪島市には比較的ご高齢の方が多く、必要書類を揃えるのに苦労されたり所有者が特定できない空き家なども多いようです。

解体前の事前立ち合いは、建物所有者、解体業者、調査会社の3者が立ち会い、解体の範囲や対象物を事前に確認する重要な打合せです。解体業者は重機の搬入経路等の確認、解体工事を行うにあたっての重要事項の説明を行い、弊社は、現況の写真撮影、所有者に対して公費解体で申請した建物の確認や建物内部の貴重品等の有無をヒアリングし、解体業者と情報共有するといった流れとなります。解体工事が始まるまでには、被災建物等に連結されている上下水道、ガスを止めてもらい、電気や電話の引き込み線などはあらかじめ切断してもらう必要があります。

能登半島地震発生から半年ほど経ちましたが、今もなお被災者にとって厳しい生活が続いているように感じました。被災者の方は思い入れのある住居から仮設住宅での生活を余儀なくされ、輪島から離れた場所で生活を送らざるを得ない方もおられます。また、店舗などは現在も時短営業のところが多く、通行止めや倒壊した家屋が道路を塞いでいる場所が多くありました。まずは被災した建物を早急に撤去し、被災者の方が1日でも早く元の生活に戻れるよう微力ではありますが公費解体業務を精一杯頑張りたいと感じさせられました。

不動産の種別について

不動産の種別とは、不動産の用途に関して区分される不動産の分類をいう。地域の種別は、宅地地域、農地地域、林地地域等に分けられる。特に宅地地域とは居住、商業活動、工業生産活動等の用に供される建物、構築物等の敷地の用に供されることが、自然的、社会的、経済的及び行政的観点からみて合理的と判断される地域をいい、住宅地域、商業地域、工業地域等に細分される。さらに住宅地域、商業地域、工業地域等についてはその規模、構成内容、機能等に応じた細分化が考えられる。土地の種別は地域の種別に応じて分類される土地の区分であり、宅地、農地、林地、見込地、移行地等に分けられ、さらに地域の種別の細分に応じて細分される。

種別の判定は、現況をそのまま採用することは妥当ではなく、巨視的、客観的にみて合理的か否かという観点から行うものとする。なぜなら、ある不動産についての現実の使用方法は必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために当該不動産が十分な効用を発揮していない可能性があるからである。また、種別は極力細分化した状態でとらえる必要がある。例えば、同じ商業地域においても近隣商業地域と郊外路線商業地域とでは価格形成要因が異なる。

具体的には種別の判定は、地域要因及び個別的要因の比較のための格差率の判断等に活用される。「七次改訂土地価格比準表」では価格形成要因のうち、街路条件「系統及び連続性」(地域要因)の格差率(優る/普通)は近隣商業地域では+2であるのに対し、郊外路線商業地域では+10となっている。両者はともに増価要因であるが、その影響の程度は細分化された地域によって異なる。商業地域は収益性に関する価格形成要因が重視される傾向があるが、近隣商業地域は主に近隣の居住者が商業背後地であるため、地域の街路系統によって顧客の量、すなわち収益性にさほど大きな影響を与えない。一方で、郊外路線商業地域は主に車の利用者が商業背後地であるため、周辺の幹線道路と連続している場合は交通量の増加に伴って顧客の量、すなわち収益性は大きく増加する。

このように不動産の種別によって、価格形成要因の影響の程度が異なるため、上述のとおり、極力細分化した種別を判定する必要がある。また、不動産の種別は不動産の価格を決定づける重要な要素となることから、その判定に際しては細心の注意を払わなければならない。

公共事業における井戸水への影響

国や公共団体の行政作用によって生じた損害又は損失の補填である「国家補償」には適法行為に基づく「損失補償」と不法行為に基づく「損害賠償」があります。実務上、公共事業の施行により発生が確実に予見される振動・騒音・日照阻害・水枯渇・地盤変動・電波障害等の通称「事業損失」と呼ばれるものは損害賠償の枠組みの中における一定の用件下での事前賠償により対応することができます。

私は現在、福島県でCM業務に従事しており河川事業を主体としています。河川事業には原形復旧を基本とした単災事業や災害の再発防止のため一連区間を改良する災害関連事業など複数の事業に分かれますが、いずれの事業においても河床や護岸の掘削工事、橋梁の架け替え工事といったように周囲へ影響を及ぼす可能性は少なからずあります。中でも河床・護岸の掘削を伴う河道拡幅工事が地下水へ及ぼす影響は大きく、私が担当している10数か所の河川の内、4河川で水枯渇が発生しました。幸い、各工区において水枯渇の発生リスクがあると考えられる井戸については事前調査として地下水調査を実施していたことから、この結果を基に事業損失調査を実施し、解決を図ることとなりました。

事業損失には認定要件として、①公共事業の施行に起因し公共事業の施行と発生した損害等の間に因果関係があること、②当該損害等が社会通念上、受忍すべき範囲を超えると認められるもの、③工事完了の日から1年を経過する日までに損害等の申し出がなされたものであること、とい う三原則があります。この認定要件において事前調査の実施有無はとても重要で、定期的な水位観測や降水量調査、水質調査などの結果から、自然的要因が大きいか、損害が受忍の限度を超えるものかといった点を判断していくことになります。

しかし、このような調査を実施していてもいざ損害が発生した際には迅速な対応が求められるケースが多く、特に地方の集落で上水道が配備されていない地域では、生活用水となる井戸水は最も重要なライフラインで人命にも関わる問題です。私の経験談として井戸の使用者は水枯渇の発生に直面した際、必ずしも起業者に連絡を入れるとは限りません。使用場所付近で工事が進行している場合は現場作業員に伝えることもあれば、我々のようなコンサルタント業者に伝えることもあります。こういった場合には速やかに起業者へ報告をし、給水車の配備や仮設水道の敷設といった適切な対応の判断が急務となります。このことから起業者への報告の重要性を強く感じました。

水枯渇における機能回復の方法は主に「既存の施設を改造する方法(井戸の掘り下げなど)と「代替施設を新設する方法(上水道の敷設や代替井戸の新設など)」があり、これらを技術的及び経済的に比較し、合理的と認められる方法が採用されます。いずれの方法においても、技術者確保、作業環境、取水の可能性、維持管理費など多方面の比較が必要となります。この内、維持管理費の増加分に対する費用負担年数は各種条件により異なりますが、おおむね30年が限度となり、以後は使用者負担となってしまいます。費用負担額の説明時にはこの不利益部分についても丁寧に説明し、理解いただく必要があります。

治水安全上、重要となる公共事業の円滑な遂行のためにも、今後は用地取得や移転補償だけでなく事業損失への適切な対応も、より一層注力して業務に臨みたいと感じました。

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