第144号(2024年秋号)『不正アクセスによる被害防止対策の徹底について』ほか
不正アクセスによる被害防止対策の徹底について
10月に愛知県建設局長から日本補償コンサルタント協会中部支部愛知県部会部会長宛に、表題の通知がありました。
「(前略)個人情報の漏えい等が発生した場合は、個人の権利利益を侵害することとなることを強く意識し、個人情報を取り扱っていることについて、その重要性を改めて認識していただく必要があります。(中略)
①自社の情報管理対策の再確認を行い、不正アクセス対策を徹底すること。また、現状の対策を過信せず、常に対策を見直しすること。
②全社員の情報セキュリティ意識の向上を図ること。
③不正アクセスがあった時には、速やかに発注者等の関係機関に報告すること。」
弊社は従来よりISO27000情報セキュリティマネジメントシステムの認証を受け、情報の取り扱いには細心の注意を払っているものの、この通知を受け再度、全社員に注意喚起を促すとともにWEBによる研修を実施したところです。
私のメールアドレスにも連日某大手小売店、クレジット会社、ポイントが当たる等様々な迷惑メールが届きます。ネットで調べたところ「サイバー攻撃でよく使われる手法に、フィッシング(Phishing)とエクスプロイト(Exploit)があり、目的や手法が異なる。」とありました。詳しくはネット検索して頂くとわかりますが、私には手口が複雑で巧妙となっているためよくわかりません。なので私の場合はとにかく迷惑メールかなと思われるものは「開かず即ゴミ箱へ」を日々徹底しています。
そんな迷惑メールの中でも先日届いたメールは巧妙で、地域の特産物を紹介し販売するような内容で思わず開きそうになりました。また、某大手配送会社の不在を装うメールもネットで買い物をした時とタイミングが合えば開きそうになることもありました。幸いにも今のところ大事に至ったケースはありません。
対策を講じているとはいえ一度感染してしまうと、社内すべてのPC及びサーバーに被害が及び、対応、復旧に要する時間及び費用も膨大で対処も大変と聞きます。弊社のような中小企業では会社の存続にも影響を及ぼしかねない程の大きなダメージがあるのではと考えています。
いくら対策を講じても日々更新され新たな脅威が迫りくる毎日、とにかく知らないメールは「開かず即ゴミ箱へ」を徹底するしかないと思います。
認可地縁団体の消費税に関する取扱いについて
町内会や行政区には、地方自治法の規定により市町村長の認可を受けた「地縁による団体」とそれ以外のものとがあります。
「地縁による団体」は、消費税に関する法令の規定では消費税法の「別表第三」に掲げる法人とみなされ、国や特別会計を設けて事業を行う地方公共団体に対する消費税法の特別規定の適用を受けることとなります。
「地縁による団体」以外の町内会であっても消費税法に規定する「人格のない社団等」に該当する場合、「法人とみなされ」町内会としての課税売上高が1,000万円以下等の要件を満たしていれば、消費税について免税事業者となります。
今回移転の対象となった地縁団体は、所有する土地を駐車場として貸していることが聞き取り調査で判明したため、これが税務署から収益事業と見なされれば課税の対象となり得ます。
また、収益事業を行う場合は所管の税務署への収益事業開始届が必要となります。
よって、次の項目について調査し資料収集を行いました。
・認可地縁団体台帳 ※登録の有無
・地縁団体用自治区規約
・地域集会所建設費補助金
・前年又は前々年度の消費税及び地方消費税確定申告書(控)
・決算報告書(収益事業損益計算書)等
調査の結果、認可地縁団体として登録されており、地域集会所建設費補助金の申請も予定しているとのことでした。また、決算報告書に不動産賃貸収入として建物賃貸収入、土地賃貸収入、駐車場収入が計上されており、そのうち土地賃貸収入に関しては非課税売上となることから、建物賃貸収入と駐車場収入の合算金額が課税売上の対象となることが分かりました。今回、合算金額が約700万円であり基準期間の課税売上が1,000万円以下に該当したため免税事業者となり消費税相当額の全部を補償することになりました。
詳細は、公共用地の取得等に伴う消費税等取扱いマニュアルに掲載の「消費税等相当額補償の要否判定フロー(国若しくは地方公共団体、消費税法別表第三に掲げる法人又は人格のない社団等の場合)」を確認してください。
全国には多くの「市町村内の一定の区域に住所を有する者により構成された地縁の団体」がありますが、土地収用の売買契約にあたり被補償者を自治会長等の個人でなく市町村長の認可を受け登録された認可地縁団体か否かを調査、確認し契約締結することが必要と考えます。
法廷外公共物の用地取得
用地取得業務の権利者の中には、個人や法人のほか、地方公共団体が含まれる場合も多くありますが、法定外公共物の取得については、用地買収される側、用地買収する側の双方が地方公共団体ということもあり、内部処理の傾向からCM業務で直接的に携わる事がありませんでした。今年度下期から管理河川が増える事もあり、業務内容を確認したところ、事業着手が迫っている区間の中に、公共用財産の境界確定は完了しているが、その後の資料作成等が手付かずの状態となっている箇所が確認できたため、用地取得までの問題点の整理を行ったところです。
まず、用地取得の手順に進む前に法定外公共物について確認したいと思います。法定外公共物は財産上の整理として、国有財産の中の行政財産(国が行政上の目的のために所有しているもの)であり、行政財産の中でもその性格から公共用財産(国道・河川・港湾など)へ分類されます。また、機能上の整理としては、道路法や河川法が適用されない公共物のため、法定外公共物として取り扱われます。この法定外公共物は公図上で地番の無い土地となっている事も多く、道路が赤色、水路が青色に着色されている事から、赤線や青線と呼ばれる事もあります。なお、平成12年4月1日に『地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律』の施行によって、これらの法定外公共物は無償で地方自治体へ譲与(譲与期間は平成17年3月31日までで、各市町村の申請による)されたものとなっています。
通常の土地所有者の確認は公図や土地登記簿の調査を行いますが、法定外公共物の場合、各市町村が譲与を受けた時の国有財産特定図面を収集する必要があります。法定外公共物は地番の無い土地の場合が多いですが、地番が付され用悪水路などの地目で登記されているなどの、登記簿上では判断できない場合もあるため、この国有財産特定図面(譲与図)を収集し、法定外公共物か否かを確認する必要があります。これにより地方公共団体の所有物と確認されれば、その後は境界確認のための立会の実施、境界確定と進めていく事になりますが、地番の付されていない法定外公共物については、境界確定を行ったとしても無地番地である事に変わりはないため、表題登記により地番を付す作業が必要となります。同じくして、これら登記申請を行う以前に、地方公共団体が行う公有財産(法定外公共物)の用途廃止手続きが必要となります。法定外公共物は、道路・水路などの特別な機能を有する土地のため、近隣等の利害関係人からその機能を廃止するための同意書を収集し、公有財産管理者が用途廃止を認定しなければ、法定外公共物を事業の用に供する事が出来なくなってしまうためです。利害関係人としては、事業用地の隣接土地所有者はもちろんのこと、地元住民代表や行政区長、水路の場合は水利組合や土地改良区の代表者なども含まれます。以上の資料の準備や手続きを踏まえ、市町村への表題登記申請の依頼や、県が委任状による表題登記申請の代行を行う事により、登記所への表題登記が完備され、用地取得の事務手続きへ移行する事になります。
今回の法定外公共物の用地取得の整理は、事前協議、用途廃止申請のための必要資料の収集、用途廃止申請及び申請の認定許可など、民地の用地取得の手順とは異なる手続き等の必要性の確認や、用地取得に至るおおよその日程の把握が出来た事から、非常に有意義であり、自己研鑽の良い機会であったと思います。
複合商業施設の移転工法について
複合商業施設にて、駐車場の使用実態調査を行い、残地内にて駐車必要台数の確保が可能と判断し、直接支障となった建物及び駐車場機能を残地内工法とした事例について記述します。
対象となった施設は全体敷地約2.5万㎡で南北に少し長い四角形の敷地であり、スーパーマーケットを中心として、家電量販店、衣料品店、飲食店、病院等の施設が複数の建物に入った複合商業施設でした。対象の敷地は、北側敷地約1.8万㎡と南側敷地約0.7万㎡に分かれて区画されており、駐車可能台数も、全体の3分の2程度が北区画、残りが南区画となっています。区画が分かれているのは、過去に南北敷地で使用形態が異なっていたためでした。現状は、全体を一体的に同一施設として使用しており、敷地の東側を南北に通る道路が駅へと続く主要道路であったため、歩道・車道整備により拡幅することとなりました。
この事業により道路に沿って約8mの約0.1万㎡、全体敷地の4%程度が収用範囲となり敷地割合としては僅かでありますが、同施設への影響は全駐車可能台数の10%程度と飲食店の建物が直接支障となりました。
建物については、残地に十分な広さがあるため残地内への構内再築工法となりますが、他の店舗や駐車場への影響によって工法を考慮する必要があり、駐車場が直接支障となっていることから、まず駐車場の使用実態調査を行い、その結果に基づいて同施設の移転工法を検討することとしました。
使用実態調査を行うにあたり、同施設の一時点での最多利用駐車台数を確認するため、調査曜日は利用者が多い土・日曜日とスーパーマーケットの特売曜日とし、調査時間は全店舗内で最も早い開店時間である9時から最も遅い閉店時間である23時迄の15分間隔としました。駐車区画は南北で行き来ができないことから、使用客層として北側はスーパーマーケット、南側は飲食店となっています。
調査結果として、北側区画は10時頃から16時頃迄を通じて50~60%の使用率、南側は昼食時と夕食時に80~90%で最大96%の使用率と南側は満車といえる時間帯がありました。収用後の駐車区画数で考慮すると北側は使用率の最大値73%と十分な駐車区画が残ると言えますが、南側は使用率100%を超える時間帯があり必要駐車区画を確保することができない結果となりました。
しかし、同施設は南北区画を一体的に複合商業施設として使用している実態があり、北側区画に駐車して南側区画の店を利用しているのは調査中も確認できた事から、南北を分けず駐車区画全体の使用率の検討を行うと最大75%となりました。そこで、収用後の再配置案で南北を繋げた形にして検討すると、一般的に駐車率80%以上で入場を躊躇すると考えられていますが、80%以上となったのは全調査回数で1回のみとなりました。
よって、南北の駐車場を繋げることにより残地内で必要台数を確保することが可能であることが判明しました。この再配置案は、直接支障となる店舗建物の配置についても検討し、現況と重ならない位置に再築する工法とすれば支障店舗の休業期間は短く経済的に安価となりますが、多数の駐車マスが使用不可能となり、直接支障とならない複数店舗への通路を塞いでしまう位置となることから、複数店舗の営業休止が発生することとなりました。
よって、直接支障する店舗の休業期間は長くなりますが、建物を現状と重なった位置に再配置する再築工法の方が、同施設全体として合理的な移転工法であると判断し、移転工法を決定しました。
災害復旧工事に伴う事業損失
私は2年前まで、東北で用地のCM業務に携わっておりました。様々な経験をさせて頂きましたが、特に印象に残っていることがあります。
私が勤めていた県の事務所に、突然、地元地権者から苦情が入りました。河川沿いに居住されている住民の方で、自分の敷地の川に面した箇所のコンクリート叩きがかなり損傷を受けている状況とのことでした。現地で私も確認しましたが、なぜこのようなことが起きているのか理解できませんでした。
後から事務所で聞いたのは、この川は災害復旧事業の対象となっており、地震で沈下した堤防の嵩上げ工事を行っていました。その工事箇所は河口から数㎞上流であるため、被害が甚大な河口(協議設計箇所)に対して比較的微小な損傷でしたが、堤防天端が1m程沈下していました。(単災事業箇所)
このため、河口付近では堤防の強靭化を図る造り直しを行っていましたが、当該箇所においては沈下した堤防の天端に1m程盛り土し、従前の堤防天端の高さを回復させました。いわゆる原形復旧工事です。
ところが、この河川沿いは大半が農地で工事による影響は出にくいはずでしたが、苦情があった箇所は昔から民家が連坦している地域でした。そのため、設計段階で家屋側の土地買収を避けるよう堤防の線形を一部変更しました。(法線変更)河川幅に余裕があるため、従来の堤防位置から川側に堤防を移したのです。これで、家屋の用地買収がなくなり工事をスムーズに行うことが可能となりました。
しかし、ここに思わぬ落とし穴がありました。堤防天端に1m程嵩上げするだけなら、その分の荷重で済みましたが、川側に法線変更を行ったため、川底から盛り土する形になりました。川底から堤防天端までは高さが6m余りになります。軟弱な地盤にかなりの荷重がかかるため、地盤の沈下は必至です。現に堤防は盛り土後、設計高よりも30㎝程度沈下しております。
これでは、堤防のすぐ近くの地盤に影響が出るのは当然です。被害があった家屋は5件でしたが、どれも敷地の川側が堤防に引き込まれるように不同沈下を起こしていました。
案の定、家屋の川側も沈下を起こしており家屋の傾きの許容範囲である3/1000を超えて最大で10/1000以上になっておりました。
工損調査と費用負担額算定を行い、各家屋の所有者に会い説明をしましたが、承諾して頂けたのは5件中4件でした。残り1件は築1年の新築であったため、建物所有者が建物曳家等の専門業者に問い合わせ、現地を確認し実際に必要な工事費を出してもらい、それと提示された費用負担額が見合えば、承諾して頂けるものでした。費用負担額算定にあたっては、用対連の標準書に掲載されている沈下矯正工事の単価を適用し算定しました。結果的にはこちらから提示した費用負担額と実際の工事費総額が見合うものとなり、建物所有者から了解を得ました。私も実際の工事現場を見させて頂き非常に参考になりました。
印象的だったのが、傾いていた建物を建て起こし水平に近づいた時点で、家の中の建具が動くようになったとその家の奥様が喜んでいたことでした。
事業の時間がかなり限られているとはいえなぜ設計段階からCM内で工事担当と協議し適切な指摘が県にできなかったのか残念でした。しかし、標準書の沈下矯正工事費がある程度適正であることが確認できたのは今後に生かせるのではと思います。
いずれにしても、貴重な体験をさせて頂きました。
標準地の選定
標準地は同一状況地域において個別的要因がおおむね標準的と認められる一の画地とするものとする。(土地評価事務処理要領第7条)これに拠り標準地の選定は、近隣地域又は類似地域において、その地域を代表する画地で個別的要因がその地域の最有効使用からみて最も標準的な一画地を選定することになります。
つまり、長方形のような整形な土地が必ずしも標準地として適切であるわけではなく、農家集落地域のように最有効使用が農家住宅であって、当該農家住宅の敷地の画地規模が比較的大きく、形状がやや不整形な土地が代表的である場合には、そのような土地を標準地として選定することが妥当です。標準地比準評価法では、標準地の評価を行った後に標準地の評価格から比準して取得の対象となる各画地の評価格を求めるわけですが、農家集落地域内にたまたま一般住宅の敷地で画地規模が大きくなく、かつ整形な土地が存在した場合に、当該土地を標準地として選定してしまうと取得対象となる大半の土地に減価が生じるという不合理な結果を招くことを考慮すればわかりやすいと思います。
また、混在住宅地域のように住宅のみでなく、店舗、事務所、小工場等多様な用途が混在する地域の場合、それぞれの用途ごとに適した画地規模があり、敷地の有効利用の観点から要求される形状も異なるため、標準地の選定に悩むところもありますが、地域の最有効使用が戸建住宅と判断されるならば、当該戸建住宅の敷地のなかから代表的と認められる土地を標準地として選定すべきでしょう。
ただし、標準地の評価格から比準して各画地の評価格を求める際には、多様な用途が混在することを前提に地域が成り立っている性格を踏まえ、地積、形状、奥行等の画地条件について、機械的に土地価格比準表の備考欄を当てはめるのではなく、不合理な減価が生じないよう適切な格差認定基準を定める必要があります。
最後に、取得区域のなかに例えば公共公益施設や社会福祉施設、相対的に規模の大きい商業施設や工場等、地域の最有効使用から逸脱し、上記格差認定基準の修正では対応しきれないような画地が存在する場合、そのような土地はそもそも標準地比準評価法になじまない土地とみなし、別途不動産鑑定評価の対象とするなど、土地評価業務から除外することが合理的と考えられます。