トピックス

ミニコミ 2025.11.19

第148号(2025年秋号)『多発するクマによる人身事故』ほか

多発するクマによる人身事故

最近、テレビ、新聞、SNS等で連日クマ被害について報道されています。中部地方においても、6月に長野県大町市で、7月に長野県大鹿村で、9月に岐阜県中津川市で、10月に岐阜県白川村と高山市で、人身事故が発生しています。

愛知県自然環境課のHPによると、「愛知県では、三河山間部を中心にツキノワグマ(以下「クマ」という。)の生息が確認されています。クマは、警戒心が強く慎重な動物で、基本的に森林の中で生活しています。本県では、ごくわずかに繁殖を伴う定住個体が存在するとされており、「レッドリストあいち2025」では絶滅の危険が最も大きい絶滅危惧IA類と評価されています。そのため、本県では、狩猟者に対してクマの狩猟の自粛をお願いしております。なお、ヒグマは、本県には生息していません。」と記載されています。

同HPの確認情報(6/11から10/29現在)によると、豊田市に設置された定点カメラで7回撮影され、住民等の目撃情報は、豊田市で2回、瀬戸市で2回、豊根村で2回、東栄町で1回となっています。また、10月29日に新城市内の山林で、有害鳥獣捕獲を目的としたニホンジカ・イノシシ用のわなにツキノワグマがかかっているのが確認され、このツキノワグマについて、放獣又は引渡しの検討を行ったが、安全確保を最優先に、殺処分されています。

同HPには過去の「堅果類の豊凶調査結果」も掲載されており、R6、R7の2年続けて、ミズナラ、コナラ共、地点によって凶作から豊作までばらつきはあるものの全県平均で凶作と発表されています。これらの他に、「クマと見間違えやすい動物」、「クマの痕跡」、「クマに対する注意事項」が掲載されています。

弊社でも、山間部での用材林調査がありますので、調査の際には、クマ鈴、クマスプレー、ラジオ等を携帯し、単独行動しないよう十分注意して調査を進めています。

もし出会ってしまったら、「目を合わせたまま、ゆっくり後ずさりして離れてください。子グマに遭遇した場合は、母グマがいないか周囲に目を配り、とにかく静かにその場を去ってください。」と周知されています

詳しくは愛知県のHPをご覧ください。

https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shizen/tsukinowaguma.html

図面に刻”暮らし”の記録

これまで私は、CADオペレーターとして住宅や工場などの設計業務に携わり、さまざまな図面を作成してきました。

設計図や構造図は、これから新しく形づくられる構造物を具体的に描くものであり、将来の姿を創造する仕事です。線一本、寸法一つに安全性や機能性が関わるため、常に設計者の意図を理解し、分かりやすく正確な図面に仕上げることを心がけてきました。

一方、新日で初めて補償調査業務に携わり、同じ「図面」を扱う仕事でも、求められる視点や責任の重さが大きく異なることを実感しています。

補償調査業務とは、公共事業に伴い移転や撤去の対象となる建物や工作物を調査し、正確な記録を残すことを目的とする業務です。

つまり、設計が「未来を形にする仕事」なら、補償調査は「現在を正確に残す仕事」だと感じます。

現地での実測や撮影を通じて、建物の構造・材質・築年数・設備などを一つ一つ確認し、図面や資料にまとめていきます。これらの情報は補償金算定の基礎資料となるため、わずかな誤りも許されません。同じブロック塀でも控え壁の有無で評価額が変わるように、正確な表記が不可欠です。一本の線の違いが、補償額や信頼関係に影響を与えることもあります。

また、補償調査の図面では「誰が見ても理解できること」が大切です。

行政担当者や土地所有者など、専門知識を持たない方が目にする場合も多いため、注記や凡例、写真との対応などを工夫し、見やすく整理された図面を意識しています。図面は、単なる記録ではなく「説明のための資料」でもあるからです。

業務に携わり約1年、特に印象的だったのは、“人の生活の痕跡”にまで目を向ける必要があるという点です。

設計図面では省略されがちな物置や庭の水道設備、古い塀なども、所有者の生活や思い出の一部として丁寧に記録します。そこには、単なる構造物以上の価値があり、それを正当に評価することが補償の公平性につながります。設計が「機能性と効率」を追求するのに対し、補償調査は「実態と公正さ」を追求する仕事だと強く感じました。

補償調査の成果は、行政と住民との信頼関係を支える基盤です。調査図面や記録が正確であることはもちろん、相手の立場に寄り添う姿勢も欠かせません。

設計で培った正確さと丁寧さを活かしながら、“人の暮らしに寄り添う調査”を意識して、これからも誠実に業務に取り組んでいきたいと思います。

補償業務管理士、試験を受験して

この文章を書くちょうど前日に補償業務管理士試験を受験しましたので、まだ試験に合格しているかどうか定かではありませんが、今回はその感想等について書かせていただきます。

なお、昨年、補償業務管理士試験と内容の一部が重なる宅地建物取引士試験を受験しましたので、両方の試験の違いについても併せて書ければと思います。

まず、昨年受けた宅地建物取引士試験についてです。宅地建物取引士試験は受験者数が非常に多く、資格としての知名度も高いため、学習環境が整っていると言えます。書店やオンラインには多くのテキストや問題集が揃っており、資格予備校や通信講座も豊富です。また、受験資格も特に無く、誰でも受験することができる資格です。そのため、初めて不動産関連の知識に触れる人でも、効率的に学習を進めやすいと感じました。しかし、私は実務で不動産業務を日常的に行っているわけではないため、民法や税務、宅建業法といった分野にはなじみが薄く、暗記中心の学習が求められる場面も多くありました。知識の定着には時間がかかり、理解の深さを求められる問題では手間取りました。

一方、補償業務管理士は、宅地建物取引士とは対照的にマイナー資格であり、市販のテキストや問題集は限られています。そのため学習環境は決して整っているとは言えず、勉強方法は過去問を解くことぐらいでした。しかしながら、私は、日常的に補償業務に携わっているため、用語や制度の理解においては宅地建物取引士試験よりも親しみやすく、実務経験が直接役立つ部分も多くありました。また、すべての試験範囲に関連する業務に関わったことがあるわけではないため、試験勉強を通じて新たな知識を吸収できる良い機会となりました。なお、今年、ようやく受験資格である実務経験4年を満たし、初めての受験であるため、共通科目と専門科目(物件)の二科目を受ける必要がありました。双方の科目で内容が重複する箇所もありますが、二科目の試験を受けるという点で範囲の広さには苦労しました。

例年の合格率や一般的に言われている難易度を見ると、やはり宅地建物取引士試験の方が難しい資格と言われ、合格するための勉強時間も必要だと思います。しかし、テキストの充実度、学習環境が整っている点など、補償業務管理士試験に比べて、宅地建物取引士試験の方が学習はしやすいように思えます。こういった背景並びに私の体感では、宅地建物取引士試験と補償業務管理士の難易度は意外にもそれほど変わらないように感じられました。

補償業務管理士試験や宅地建物取引士試験に限らず、資格試験を受けることは、単に資格を取得することだけが目的ではなく、日頃の業務で得た知識や経験を整理し、体系的に学び直す良い機会だと感じました。普段の実務では経験として身についていることも、試験勉強を通して理論的に理解することで、より確かな知識として定着するようになります。その意味で、資格試験の勉強は、自分の実務力を客観的に確認し、さらに高めるための機会であり、日常業務にも大いに役立つものだと思いました。

医療機関と調剤薬局の移転について

医療機関や調剤薬局が移転する場合に、どのような手続きが必要となるのかを豆知識として紹介したいと思います。

医療機関とは、医療行為を行う病院や診療所のことであり、調剤薬局とは、医師が発行した処方箋に基づき調剤を行う薬局のことです。

この医療機関や調剤薬局が移転する場合の手続きとして、医療機関の場合、移転先では「診療所開設許可申請」、「診療所開設届」。移転前の「診療所廃止届」。調剤薬局の場合、移転先では「薬局開設許可申請」。移転前の「薬局廃止届」の提出が必要となります。

また、労災保険指定医療機関、結核指定医療機関、被爆者一般疾病医療機関、生活保護法指定医療機関、指定小児慢性特定疾病医療機関、障がい者(更生・育成)自立支援医療機関等、特定の公的な医療助成制度の対象となる医療を行う特定医療機関に指定されている場合には、それぞれに新たに指定を受けるための指定申請書や廃止届、指定を継続するための変更届の提出等の手続きが必要となります。

さらに、診察費用や調剤費用に健康保険が適用されるよう厚生労働大臣から指定を受けた診療所や調剤薬局は保険医療機関としての手続きが必要です。

保険医療機関が移転する場合、保険医療機関廃止届を提出し、移転先で保険医療機関の指定を受ける必要がありますが、新たな指定申請は原則提出締切日の翌月1日に指定されることから、仮に廃止届と指定申請を同日に行ったとしても翌月の1日までの間、保険医療機関としての指定が途切れ保険診療、保険調剤を行うことができなくなる問題が生じ、医療機関のみならず利用者等にも不都合が生じることとなります。

その対応策として、移転先での保険医療機関としての指定日を従前の保険医療機関の廃止日まで遡ることを一定条件のもと認め、移転しても保険医療が継続できることを例外として認めています。

その条件の一つとして、東海北陸厚生局HPでは、「保険医療機関等が至近の距離に移転し、同日付で新旧医療機関等を開設・廃止した場合で、患者が引き続き診療を受けている場合」とあります。

至近距離の解釈として関東信越厚生局HPでは、「至近の距離の移転として認める場合は、当該保険医療機関等の移転先がこれまで受診していた患者の徒歩による日常生活圏域の範囲内にあるような場合で、いわゆる患者が引き続き診療を受けることが通常想定されるような場合とし、移転先が2㎞以内の場合が原則となります」となっています。

移転補償では移転先が未定の場合、移転先を4㎞程度と想定していることから、このような例外規定は考慮する必要はないと思われますが、移転先が決まっている場合には、移転先が2㎞以内か否かにより申請の手続が異なることが想定されます。

その他必要となる手続きとして、医療機関でレントゲン装置が設置してある場合には、移転先の「診療用エックス線診療装置設置届」、移転前の「診療用エックス線診療装置廃止届」が、調剤薬局では、取り扱う薬品や機器により「麻薬小売業者免許申請書」、「麻薬小売業者免許廃止届」、「高度医療機器等販売業許可申請書」、「高度医療機器等販売業許可廃止届出書」等がありますが、医療機関と調剤薬局の移転対象となった場合には、移転雑費において申請に要する手数料等の算定に必要となりますので、医療機関としてどのような指定や許可を受けているのかを聴収するとともに、根拠資料としての保険医療機関の指定通知書、特定医療機関指定通知書等の写しを徴収することは必要と思われます。

土地評価を正しく行うための数学力%とpp

世界は数字であふれている。日常生活において、数字は時間、お金、量などを表現する際に欠かせない存在だ。また、割合は数字の増加や減少を表現するのに非常に便利なツールである。

割合の変化を示す際には、「%(百分率)」表記と「pp(パーセントポイント)」表記の2種類を使用することが多い。例えば「タイムセールで商品が20%オフになった」、「内閣の支持率が先月から5pp増加した」など、これらの表記を日常生活でも頻繁に目にする。

ここで、ある例を考えてみよう。A社の利益率について、昨年度は20%であり、今年度は10%上昇した場合、今年度の利益率は何%になるだろうか?仮に「20%+10%=30%」だと答えたのであれば、割合の表現にもっと注意を払う必要がある。もしこれが「10ppの上昇」であれば、今年度の利益率は30%となるが、「10%の増加」と表記されている場合、正しい計算は以下の通りとなる。

20% × (100+10) ÷ 100 = 22%

この場合、「利益率10%の増加」と「2ppの増加」は同義となる。%による計算は「基準値に対する相対的な変化」を示すのに対し、ppによる計算は「基準値に依存しない絶対的な変化」を示すといえる。この違いを正しく理解することは極めて重要である。

割合の計算は土地評価においても無縁の話ではない。地域要因及び個別的要因の比較に際して、宅地の場合は「街路条件」「交通接近条件」「環境条件」「行政的条件」はppにより計算し、「画地条件」や格差率決定の相乗積は%により計算を行う。最終的な格差率の決定を除くとなぜ「画地条件」だけは%により計算されるのだろうか?この疑問をモデル化して考えてみよう。価格形成要因をAとBの2つに限定すると、AかつBが影響を与える場合、Aという影響、Bという影響、それに加えて「AかつBによる影響」も存在するということになる。例えば標準地に対して「地積が小さい土地(80%)」で「形状が悪い土地(80%)」とした場合、%による計算では格差率が64%となる一方、ppで計算すると格差率は60%となる。思うに、この4%の差異が意味することは最有効使用が制限されるという観点から両要因に共通する部分として二重に減価されている部分の緩和であると説明できないだろうか。

ところで、マーク・トウェインは「数字は嘘をつかないが嘘つきは数字を使う」と述べた。しかし、数字を活用するのは嘘つきだけではない。資料、特に統計データが示す数字の本質を正しく認識できるよう私たちは日頃から数字を考える訓練を行う必要がある。

プレハブ工法について

2×4工法とは、正式名称は「枠組壁工法」と言われています。2×4、2×6、2×8、2×10、2×12、4×4材等の主に6種類の規格化された枠組壁工法用構造用製材を用いられて組み立てられた「枠組」に構造用面材を接合し、一体化して6面体構造を形成した工法のことです。プレハブ建物は柱や壁、屋根の部材があらかじめ工場で量産され現場で組み立てられる建物で、く体材として木質系、鉄骨系、コンクリート系などがあり、木質系以外を非木造としています。ハウスメーカー等により施工されているメーカー独自の技法で造られている工法で「クローズド工法」と言われています。独自技術で企業秘密として一般に公開されておらず、建築したハウスメーカーしか把握していないため、リフォームもメンテナンスもハウスメーカーしか対応できません。対して木造軸組工法(在来工法)は「オープン工法」と言われ、家の造りの情報が一般的に公開されており、構造図、施工図等を見ればどこの建築会社に頼んでもリフォームやメンテナンスまで行うことができます。上記のことを踏まえると、従来までの木造建物の調査算定については、建物算定要領第2条において2×4工法、木質系プレハブ工法の建物については木造建物〔Ⅲ〕に区分され専門メーカー等の見積を取得することになっていましたが、令和6年度の改正に伴い木造建物〔Ⅰ〕に区分されることになり、新設された木造建物要領の第2章調査及び第3章積算に定めるところにより行うことになりました。基本的に全ての平家建または2階建の木造専用住宅は調査算定が可能になったということです。

非木造建物においてのプレハブ建物で、工事用等の仮設建物については、現場での仮設(一時的なもの)であり建物として補償するのではなく、仮設費と撤去費をもって移転補償額とするのが妥当と考えられるのではないでしょうか。鉄骨系プレハブ工法(軽量鉄骨造)の建物については非木造建物〔Ⅰ〕として算定することになりますが、鉄骨系プレハブ工法(重量鉄骨造)及びコンクリート系プレハブ工法により建築されている建物は、非木造建物要領における統計値数量表などの適用は難しいと考えられ、その時々で対応していく必要があるとされています。その時々で算定するといえば、木造建物の一部が非木造で建築されている場合もあります。この場合もそれぞれの統計数量の適用はできないため、調査時から積算に耐えうる調査精度を必要とし異種材料、数量統計値の補正などを行い算定する必要があります。住宅は、10人いれば10通り、100人いれば100通りと同じものはありません。調査算定は奥が深いと思わされます。

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