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トピック 2013.01.23

事務所照明のLED換装による節電効果の検証

事務所の使用状況

当社の社屋内での作業は、ほとんどがデスクワークであり、使用電力に機械等の動力系は無く、主に照明、エアコン、パソコンが中心となっている。

 

2階(補償調査部、調査測量部、建築設計部、鑑定評価室、新日土地家屋調査士法人)
面積等(A=475m²、蛍光灯2灯式96基(192灯)、エアコン8基、パソコン43台)

 

3階(技術部、シンニクス)
面積等(A=311m²、蛍光灯2灯式52基(104灯)、エアコン5基、パソコン27台)

 

7階(企画部、総務部)
面積等(A=172m²、蛍光灯2灯式22基(44灯)、エアコン3基、パソコン21台)

業務部門の全電力消費量に対する割合

日本の部門別エネルギー消費割合

 

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出展:エネルギー白書2011 第2部 第1章 第1節 1 <資源エネルギー庁>

 

 

部門別消費エネルギーの内の電力比率

 

エネルギー白書2011 第2部 第1章 第2節 部門別エネルギー消費動向によると、部門別消費エネルギーの内の電力比率は次のようになる。

 

・業務部門:44.0%

・家庭部門:51.0%

・産業部門(製造業):20.6%

・運輸部門:2.5%

 

※業務部門:事務所・ビル、デパート、卸小売業、飲食店、学校、ホテル・旅館、病院、劇場・娯楽場、その他サービス(福祉施設等)の9業種

 

 

部門別電力消費率

 

部門別電力消費割合:エネルギー消費割合×電力比率の比率となり、次の表にまとめる。

 

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当社の所属する業務部門の消費電力量は、全消費電力量に対して33%となる。

 

 

オフィスビルのエネルギー消費の特徴

 

(一財)省エネルギーセンターのHPによるとオフィスビルにおけるエネルギー消費の割合は次のようになる。

 

・照明:40%

・コンセント:32%

・空調:28%

LED照明への換装による節電効果

第1次節電行動

 

当社は、名古屋市認定エコ事業所の認定を受けるため、平成15年4月よりエコ委員会を立ち上げた。全社員参加で取り組み、同年9月に認定を受けることが出来た。その取り組みの1つである「省エネルギー・省資源の推進」として、不要照明等のスイッチOFF管理(特に昼休みの各フロアーの消灯)を実施している。

 

 

第2次節電行動

 

平成23年3月の東日本大震災の発生を契機に原発が停止となった。その年の6月から夏場の電力需要の高まる夏に向け全国的に節電協力が要請され、当社もそれまで以上に節電に取り組んだ。その具体的方法を各部署から節電行動計画として提出させ、国からの要請目標である15%カットを目指した。名古屋市認定エコ事業所として節電に取り組んでいる中で、更なる節電を進めるためエアコンの設定温度の厳密化に加え、商品名「エコエコファン」を全フロアに設置し、エアコンの効率的利用に取り組むとともに、出来得る限りの蛍光管を外し、スイッチをONにしても点灯しないようにした。間引いた本数は、全社で約18%となった。

 

一般的なオフィスビルの使用電力量における照明の割合は、平均約40%といわれているので、間引きによる節電は、全体の約7%となる。

 

 

40%×18%=7.2%(間引きによる節電率)

表-1 全社年間使用電力量

表-1 全社年間使用電力量

 

 

その結果「表-1」に示すように、平成22年6月から平成23年5月の1年間の使用電力量の132,100kwhに対して平成23年6月から平成24年5月の1年間の使用電力量は118,200kwhとなり、年間を通しての節電率は、約10%となった。これは、間引きによる節電と今まで以上の節電意識によるものと考えられる。

 

 

1-118,200/132,100=0.11(照明の間引き+エコファンによる年間効果)

なお、国からの節電要請期間の6月から9月までの対前年同月比は「表-2」に示すように、約12%の節電が出来て、ほぼ目標は達成出来たと判断する。

 

 

1-43,600/49,300=0.12(照明の間引き+エコファンによる夏期効果)

表-2 全社4ヵ月間使用電力量

表-2 全社4ヵ月間使用電力量

 

 

第3次節電行動

 

社員の意識による節電効果は、ソフト面によるものである。意識によるものは、長くなると形骸化し、薄れてくる可能性がある。節電効果を持続するためとこれ以上の効果を上げるには、ハード面による対策が不可欠となる。ここで行おうとするハード対策とは、照明のほとんどである、蛍光灯をLED直管に換装することである。

 

LED照明はまだ歴史が浅いため、換装となるといろいろな問題が発生する可能性はあるが、現在において効果的な対策には違いない。現時点で問題となっているのは、LED光の特性である点光源と多く含まれる青色成分の影響であろう。点光源に関しては、光源がポリカーボネートでカバーされており直管全体の光となっている。また、LED光の青色成分に関しては、光源を長時間見つめなければよいとされていることから、事務所の照明として使用可能と考える。

 

蛍光灯の寿命8,000時間(約2.6年)に対してLEDは、40,000時間(約12.8年)となっている。ただし、LEDは切れないので、当初に対して70%まで明るさが低下した時を寿命としている。

 

 

7階事務所の換装

 

第一段階として平成24年8月下旬に、7階事務所の蛍光灯(42本、間引き2本)をLED直管(44本)に換装した。

 

LED直管

LED直管

 

換装後の7階事務所

換装後の7階事務所

 

 

その結果「表-3」に示すように、平成23年9月から平成23年12月の使用電力量の5,948kwhに対してLEDに換装後の平成24年9月から平成24年12月の使用電力量の5,669kwhとなり、約5%の節電となった。

 

1-5,669/5,948=0.05(LED化の効果)

表-3 7階事務所4ヵ月間使用電力量

表-3 7階事務所4ヵ月間使用電力量

 

 

使用電力量は、エアコンの占める割合が大きく、その月の気温に左右されやすい。「表-4」は蛍光灯使用の3階技術部のデータであり、「表-5」はLEDに換装した7階事務所のデータである。どちらも平均気温に連動し、9月、10月では気温が高いと使用電力量が多く(冷房の使用)、11月12月では気温が低いと使用電力量が多く(暖房の使用)なっている。グラフから平成23年と平成24年を比較するとLEDへ換装した7階事務所の方が使用電力量の変化の度合いが低く出ていることから、LEDに換装した効果がうかがえる。また、平成23年より平成24年の方が夏場の気温が高く、冬場の気温が低い傾向にあるので、エアコンの使用頻度が多いと推測出来る。

 

LED換装した7階の節電率の算出には、エアコンによる使用電力量の誤差を減らすため、電灯以外の使用電力量を平成23年のものを使用し、比較する。

 

表-4 平均気温および3階技術部(LED化していない階)の使用電力量の4ヵ月間推移表

表-4 平均気温および3階技術部(LED化していない階)の使用電力量の4ヵ月間推移表

 

表-5 平均気温および7階事務所(LED化した階)の使用電力量の4ヵ月間推移表

表-5 平均気温および7階事務所(LED化した階)の使用電力量の4ヵ月間推移表

 

 

蛍光灯(40wタイプ)の消費電力は48w、LED(直管型)の消費電力は26wであり、各照明灯の4ヵ月間における消費電力は、以下のとおりとなる。

 

ただし、1日の点灯時間は13時間、出勤日数は20日間とする。

 

蛍光灯
48w×42灯×13h×20日×4ヵ月=2,097kwh

 

LED直管
26w×44灯×13h×20日×4ヵ月=1,190kwh

 

実質節電率
5,948kwh-2,097kwh=3,851kwh(H23の電灯以外の使用電力量)
3,851kwh+1,190kwh=5,041kwh(H23をベースとしたH24の換算使用電力量)
1-5,041kwh/5,948kwh=0.15

 

蛍光灯からLED直管に換装した結果、当社比で7階事務所の使用電力量が約15%節電出来たことになる。

 

このことから、一般の事務所の照明を蛍光灯からLEDに換装するだけで全消費電力量の約15%が節電出来ると考える。

 

 

蛍光管とLED直管の費用の比較

 

蛍光灯100本に対しての費用を比較する。

 

蛍光灯の条件
消費電力:48w、寿命:8,000h、単価:380円、100本

 

LED直管の条件
消費電力:26w、寿命:40,000h、単価:10,000円、118本(間引きを復活)

 

共通条件
1日当たりの点灯時間:13h、1ヵ月当たりの点灯日数:20日
電力単価:26円/kwh(変動するのでH24.12月分で計算する)

 

 

以上の条件で比較すると「表-6」となる。

 

表-6 蛍光灯とLED直管の費用比較表

表-6 蛍光灯とLED直管の費用比較表

 

 

費用の面で比較すると、初期費用の差額が約8.4年で解消される。しかし、器具の価格が今と同じであれば、12.8年後には再び118万円の費用が必要となる。これらを勘案すると完全にLEDの方が安価になるのには25.2年かかることになるが、これは、あくまで電気料金に変化がないと仮定した場合である。LED直管は、蛍光灯を使用し続けるより費用面でも有利となると考えられる。

 

LED照明はまだ歴史が浅いので、今後開発が進み製品価格が安価になれば、より一層LEDの方が有利になる。

LED化の輪を広げる

電力消費を無理なく抑える

 

日本の年間総使用電力量は、約10,000億kwhである。その内、当社の所属する業務部門の年間使用電力量は、3,300億kwhとなる。この消費電力量を減らすためとはいえ「我慢、無理」をするのでは一時的には行えても長続きしない。消費電力量の削減には、現在の作業環境を維持しつつ無理なく節電出来る蛍光灯のLED化が最適である。LED照明への換装による節電効果の結果により、LED化によって業務部門の年間使用電力量の15%である495億kwhの節電が出来る事になる。原発1基の年間発電量は約60億kwhであるので、あくまで単純計算であるが、原発8基分の節電となる。これがLED化によって無理なく実施出来る事になる。

 

 

官民の協力

 

LED照明は、歴史が浅くまだまだ高価である。このため、値段を抑えるには、製造メーカーの生産コストの削減、国、地方自治体からの製造メーカーへの補助金が不可欠である。それに加え、企業への負担を軽減しLED化を普及するため、国、地方自治体からの設備投資に対する補助金も必要である。現在の照明等の利便性は維持しつつ使用電力量を減らし、発電量を減らす方向に向けるには、節電=省エネ、環境保全であることを認識し、企業自ら積極的に協力していくことが必要である。

 

 

今後の課題

 

当社は、名古屋市認定エコ事業として地球環境保全と経費節減のため、今後、全蛍光灯をLEDに換装するが、LEDは初期投資費用が大きいことから、段階的に全フロアをLEDに換装していく予定である。

 

東日本大震災以来、我が国における電力供給方法の見直しが進められており、停止している原発の発電量を補うために、応急処置的なものとはいえ再び火力発電を稼働している。

 

これでは、我が国が掲げた2025年には1990年比でCO225%削減目標の達成が危ぶまれる。現に減ってきたCO2排出量が逆に増えつつある状態にある。また、各地でメガソーラー発電所の建設が進んでいるが、いずれも現在の発電量を維持することが前提となっているし、電力会社が太陽光発電の電力を購買するため、その費用負担が、再エネ発電促進賦課金および太陽光発電促進付加金として国民へ跳ね返ってきている。

 

LEDには、太陽光と色の特性が違うため、色彩を扱う業種には向かないかもしれない。しかし、当社のような建設コンサルタント事務所や一般事務所においてのLEDへの換装は節電には有効であり、地球環境保全につながるので、官を含め業界レベルで協力してLED化の輪を進めていくことが重要である。

資料

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