業務実績

補償

【公共補償】墓地

概要

地区村落の共同墓地の移転に伴い「墓地、埋葬等に関する法律」(以下「墓埋法」という)および県条例の下に補償基準の検討、代替候補地の選定と移転計画を行ったものである。

移転計画と補償上の課題

墓地移転においては地域住民の慣習および宗教的感情を傷つけることなく先祖崇敬を尊重して、人心の安定するよう静寂な環境にその位置を選定し、周囲の環境と調和するような配慮が求められる。また墓地は、代替地への改葬が完了した後でなければ廃止出来ず、したがって事業の進捗に大きな影響を及ぼすものである。

墳墓敷地である墓地を公共用地として取得するにあたり、その特異性から業務の課題と方針を以下の如く認定した。

 

・墓地所有者の確定

・墓地使用者および墓石所有者が個別に移転先を求める事の可能性

・通常妥当と認められる距離・位置への墓地建設の可能性

・墓地所有者あるいは墓地使用者(墳墓所有者)による墓地造成の可能性と経済性

公共補償の適用

地区共同墓地が公共補償の対象となるか否かは、その施設が「公共補償基準2条」の「公共施設等」に該当するものであるか否かにより判断する。「公共施設等」とは、基準第3条第2項に規定されている。「公共施設および村落共同体その他の地縁的性格を有するものが設置し、または管理する施設で公共施設に類するもの」である。したがって、公共施設等に該当するものについては2つの形態がある。

 

1つは公共施設であり、もう1つは村落共同体その他の地縁的性格を有するものが設置し、または管理する施設で公共施設に類するものである。

 

公共補償の対象となるかの検討のため、既存の対象地区共同墓地の性格について明らかにしておくと、

 

・古来より当墓地は、地区民の墓地として使用してきた。

・その所有形態は、土地登記簿から解るように一部市の所有であり、その他の土地についても所有名義を個人から市へ移管しつつある。

・管理は村落の合意により村落民の手で行われてきた。

 

以上より、官が経営者と認定出来て、実態として「村落墓地」としての公共性を有している事から、地区共同墓地を公共補償の対象と認め機能を中断する事なく速やかに移転出来るように移転補償をする事が出来るものとする。

補償方法

機能回復を超える部分

 

代替墓地には植樹帯、排水施設、フェンス等の設置といった施設が必要となっている。新規経営する場合の墓地構造については「施行細則」に規定があり、境界の障壁又は植樹、地盤面の排水設備等を設けなければならない。これら施設は村落墓地機能を維持させるためには必要不可欠なものであり、当地での新設墓地という事情から社会通念上、代替地は必要最小限度の規模であると判断し、法的義務による改良に要する費用として、新設設置等の費用を負担する。

 

機能回復を超える部分の費用負担

 

代替墓地は、墓埋法等の規制に伴う構造を持つ事が義務付けられるが、これには既存墓地に比べて法令等に基づく義務的改良施設等が必要となってくる。本来公共補償は財産上の利益を取得させる事を目的とするものではないから機能回復を上回る補償は原則として行われない。しかし、公共補償等はその性格上、移転先が限定ないし、固定されてしまうので公共施設等の構造等を一定のものとしなければならないという法令の制限が否応なく適用されてしまうこと等から、経済的、技術的又は法律的理由によって従来の施設の再現を図るだけでは足りない場合がある。公共補償基準要綱は最小限度、機能回復を超える部分についても補償出来る事としている(要綱第12条1項運用申し合わせ第11条)。

 

機能回復を超える部分の一部とは、

 

・既存公共施設等の更新を早めた事によって生じた被補償者の資金調達に要する費用

・被補償者における財産増の実態

・被補償者の負担能力

・公共事業を円滑に遂行しなくてはならないこと

 

等を勘案して定めなくてはならない。以上の観点より本例において、機能回復を超える部分の補償の起業者と被補償者との負担割合を検討する。

 

補償先例参考

 

<その1>

 

S53年

一般国道197号改築日吉改良工事に伴う公共施設(火葬場)の移転

月刊用地’83.3  建設省四国地方建設局

 

既存施設

・敷地面積 80.52m2
・S23年築 木造瓦葺平屋建 1棟 (建面積35.30m2)
・火葬炉 1基

 

新施設

・敷地面積 155.23m2
・木造平屋建 1棟 (建面積79.51m2)
・火葬炉 1基

 


・公共補償

・金銭補償

・義務的改良負担割引

起業者100:被補償者0


 

<その2>

 

H6年

一般国道3号川尻バイパスに伴う村落共同体管理墓地の補償
用地ジャーナル ’94.9 建設省九州地方建設局 熊本工事事務所

既存施設

・敷地面積 1,462m2
・墓所面積 1,033m2
・墳墓数 284基
・墳墓所有者 132名
・土地所有者 富合町

 

新施設

・敷地面積 2,857m2
・1墓地面積 7.5m2
・修景 植樹、花壇
・施設 水道、駐車場

 


・公共補償

・金銭補償

・義務的改良負担割引

起業者50:被補償者50


 

 

<その3>

 

S62年

公共墓地移転
月刊用地 ’87.7  四国地方建設局松山工事事務所

 

既存施設

・敷地面積 522m2
・所有者 松山市
・有効墓所面積 320m2
・その他の施設面積 200m2
・区画 117区画
・墓石 162基
・施主 93名

 

新施設

・敷地面積 1,091m2
・有効墓所面積 331m2
・その他施設面積 760m2
・新たな施設 墓参道・休憩所・駐車場・緑地帯

 


・公共補償
・金銭補償
・義務的改良負担割引
起業者100:被補償者0


 

墓地に関する用語の定義

【墓地】

遺体の埋葬ないし、焼骨の埋葬という特定の利用目的に供し又は共し得る土地の範囲。道路、植樹帯、その他の管理施設用地を含む、まとまりのある土地についての概念。
墓地、埋葬等に関する法律第2条第5項の墓地(墳墓を設けるために墓地として都道府県知事の許可を受けた区域)を言う。

 

【墓所】

遺体を埋葬ないし、焼骨を埋蔵する施設である墓石等が設置されている範囲か、それらを設置する事が予定されている土地の範囲。又は造成の際それらを設置するものとして公的な許可を得ている土地の範囲

 

【墳墓】

遺体を埋葬ないし、焼骨を埋蔵しているところ。およびその施設。

 

【墓石等】

遺体を埋葬ないし、焼骨を埋蔵している所にある墓石、カロート、外柵等の物的施設。

 

【墓所率】

墓所面積の墓地面積に対する比率。=墓所面積/墓地面積
墓地内の墳墓の設置密度の指標であり、都市計画として造成される墓地の場合では1/3以下が標準とされている。

 

【墓地「更地」】

墳墓の最有効使用は墳墓ないし、その付帯施設であるという意味で墓地内においてこれらの敷地として有効利用されていない部分。

 

【墓所「空地」】

墓地「更地」から通路スペース等を合理的に除外した後の墓所としての使用が可能なスペース。

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