業務実績

補償

【公共補償】溜池

概要

我が国の農業は水稲栽培が中心であり、水稲栽培に必要な水源の確保と取水方法は河川からの自然取水によるものが多い。

しかし、日本の地形は南北に細長く地勢が急峻で河川延長は短く、水の流出が速いため、降水量が少なく灌漑に必要な十分の水の確保が困難な地域では、用水の確保のため人為的に灌漑用溜池を造った経緯がある。また、溜池は農業用水確保の施設であるとともに、洪水調整、防火用水、地域の自然環境保全およびレクリエーション施設としても機能し得るものであるが、都市化の進行について水田の転用(宅地化)等とともに農業用水確保のための機能は低下しつつある。

溜池の態様は、溜池のおかれている地形的条件によって、

・雨水の流出する背後地(集水域)および河川からの水を貯水するもの

・周囲の堤防で囲った主に天水だけが水源の皿池と称するもの

・背後地(集水域)を持たず、溜池の池から取水して貯水するもの

がある。これらの溜池は、周辺の山土ないし平地の堆積土を築きあげて堤体としているものが多い。

補償の考え方

溜池に成立する水を利用する権利とは、溜池敷地とは別個に耕作者が所定の農地の灌漑目的を達成するために必要な分量の用水を溜池に貯水し、これを管理し、一定の時期にこの用水を自主的に利用する慣行に基づく財産的権利であって、この権利に支障をきたした場合の補償として、

財産権に対する経済価値に着目(機能回復を前提としない)

・減水補償

・作付転換補償

・水利権補償

機能回復を前提(機能回復補償)

・水源の確保

・溜池の新設

・溜池の拡張

・溜池床堀

・溜池の堤体嵩上げ(補強)

・漏水防止

財産に対する経済価値の補償

対象の溜池の特性として、市街化の影響から農地が減少したため容量が十分である場合、またはわずかな貯水量の減で受益農地の従前農地経営の維持が可能なものである場合、機能回復を前提とはせず、

・減水補償

・作付転換補償

・水利権補償

による方法が考えられるが、作付転換補償については従前の農業経営の継続が不可能となる場合は、妥当な補償方法にはあたらないものと考える。また、水利権補償については、水利権取得価格の市場価値の把握および決定は、水利権に関する取引が行われていない事から算出方法としては困難な場合が多い。

したがって、溜池の補償としては、減水補償の算定方法が中心となろう。

機能回復補償

機能回復補償を採用する場合、溜池の利用からすれば公共補償基準の適用の検討が必要となろう。

公共補償の対象となるか否かは、その施設が「公共補償基準2条」の「公共施設等」に該当するものであるか否かにより判断する。「公共施設等」とは、基準第3条第3項に規定されている。「公共施設および村落共同体その他の地縁的性格を有するものが設置し、または管理する施設で公共施設に類するもの」である。したがって、公共施設等に該当するものには2つの形態がある。1つは公共施設であり、もう1つは村落共同体その他の地縁的性格を有するものが設置し、または管理する施設で公共施設に類するものである。

公共補償基準における公共施設とは、公共事業の用に供する施設を言い、公共事業とは土地収用法その他の法律により土地等を収用し、または使用する事が出来る事業を言う。すなわち土地収用法第3条、各号に列記されている事業および土地を収用等出来る事業に供されている施設であるか否かという事になる。そこで、土地収用法第3条32項に「国または地方公共団体が設置する公園、緑地、広場、運動場、墓地、市場、その他公共の用に供する施設」という規定がある。

村落共同体等が設置管理する施設で公共施設に類するものに該当するか否かである。村落共同体その他の地縁的性格を有するものとは、農業共同体、水利組合、森林組合、水害予防組合、農業漁業協同組合、部落および町内会等を指し、公共施設に類するものとは公共施設に該当はしないが公共施設に類する公共的機能を有しているものを言う。具体的には有線放送等の放送設備、用排水路、部落有溜池、揚水機場、水防または消防の用に供されている施設、公民館、簡易水道、防犯灯、道路等の施設を言う。

CONTACT US

お問合わせ

建設、補償調査、土地区画整理、
市街地再開発、建築設計、測量、鑑定など
街づくりに関わることは
お気軽にお問い合わせください。